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姉は、社会不適合者か、それとも天才か。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田隆太(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
僕の姉は変わっている。はっきり言って変わっている。姉そのものも、姉の人生も、すべてがロックだ。
 
まず、時間が守れない。そして、人の名前が覚えられない。それにも関わらず、会社に勤めたことがなく19歳からずっと自営業だ。(一体、どうやって顧客と信頼関係を築いているんだ)ノートをとることもしない。そちらの方が逆にわからなくなるらしい。
 
たぶんだけど、姉の頭の中には常識という概念が存在していない。本人は自分が変わっていると思ったことがないそうだし、変わっていると言われる意味も本当にわからないらしい。びっくりだ。
 
そんな姉なので、究極の社会不適合者なのかと思いきや、これがまた何をやらせてもすぐにマスターする。
 
勉強していないのにテストの点はいつも100点だったし、ピアノも練習していないのにコンクールに出たり、先生のそのまた先生のところにわざわざ遠くまでレッスンに行かされたりしていた。書道だって練習しているところを見たことがないのに4段だし、突然、女優か歌手になると言い出して東京まで劇団に通い始めたと思ったら、すぐにレッスン中に主役をやりだして劇団からオーディションをどんどん勧められていた。
 
自分の興味があることだと超人的な集中力と理解力と応用力を発揮するけど、興味がないことは努力しても普通以下だ。
 
ちなみに、人の名前を覚えられないのは、その人自身に興味がないのではなく、名前でその人を記憶せずに、言動や本質的なことで記憶しているから名前が抜けてしまうということらしい。時間が守れないのは、本当に守らないと全てが終わるような時はちゃんと守るからそれでいいそうだ。意味がわかったようでわからないような釈然としない感じだが、一応、付け加えておく。
そんな姉に両親や親類も期待しているようだった。一度、中学は私立に行かせた方が良いのではないかという親類と、公立に行かせるという両親とで話し合いが持たれたこともあった。
 
ところがだ。
 
姉は普通じゃないのだ。
 
なんと、中学を卒業してしばらくして家を飛び出してしまった。つまり家出だ……!!
 
我が両親は褒めるということをしない。そして、礼儀作法などの躾に異常に厳しい。普通しか当てはまらない両親と、これだけ普通が当てはまらない姉が親子なのだ。油と水どころではなかったのだろう。中学に入学した時点で、姉はすでにはみ出しものの頭角を現し、卒業後に家を出た。
 
それから19歳までの姉の人生はドラマよりもドラマチックだ。いわゆる不良を極めたのである。なんでも極める姉なのである。
 
そして、19歳になり、きっぱり足を洗うと決めたらしい。そんな時にたまたま出会った女性社長が姉を全面的にバックアップしてくれて、サービス業で独立した。女性社長には姉がどう見ても曰く付きに見えたそうだが、最後に見せた満面の笑みで何かを感じ、全面的にバックアップしようと決めたそうだ。なんだ、その作り話みたいな話は。
 
そこでもまた姉はメキメキと頭角を現した。業界で新年に売り上げを表彰する会があるらしく、約230社集まる中で最初の年から5位になって表彰された。
 
ここからがまた姉らしく、嫉妬で嫌がらせを受けていたこともあり、その時の先輩方の悔しそうな顔を見届けたことでやる気が一気に失せたそうだ。
 
そして2年で事業をやめ、29歳になるまでは悠々自適な暮らしをしていた。この期間の話も最高にロックなので、別の機会に紹介したい。
 
そして、29歳になり姉はまた起業した。このまま悠々自適の生活をして50歳になった時の自分を想像したら、学歴も職歴もない、何の強みもないおばさんになって、若い子を妬んでいる自分がものすごくリアルに想像できてしまったそうだ。それで、このままでは人生終われないと奮起したらしい。
 
今度は女性の人生をサポートして自分らしさを発揮してもらうためのコーチングのようなコンサルティングのような仕事だ。姉には「自分には為すべきことがあるはず」と確信のような信念のようなものと「カウンセラーのような仕事をするに違いない」という思いが13歳頃からすでにあったそうだから、一つは予言通りになったわけだ。
 
本当に為すべきことがあって生まれたのか、単に決めたことは何年かかっても実現する執念深い人というだけなのかは、30年後くらいにわかるのかもしれない。
 
「私は社長になるだろうから、きっと自伝みたいなものを書くことになると思う。多分、色々なことを忘れちゃうから、覚えておいてね」という予言じみたことを友人に託し、その友人は本当に姉の人生を細かく記憶してくれているという逸話もある。ちなみに、姉自身はこの話はまったく覚えていない。
 
さて、起業してからも、もちろん姉は頭角を現した。休む間がないくらい顧客がついて、あっという間に売れっ子になった。
 
ところがだ。忘れないでほしい。姉は普通では終わらない。
 
1年もするとトラブルが起き始めて、不安になった姉はなんと霊能者にのめり込み、仏像まで買ってしまった。被害総額は数百万円になるらしい。まったくどこまでドラマチックなんだ。
 
そんな時、あの東日本大震災が起きた。
 
姉は自分にできる支援がないかと模索している中、現地で活動する人たちに出会った。
 
そして、その出会いによって悟ったのだった。
 
トラブルが起きたのも、自分がいつまで経っても幸せにならないのも、成果を出せば出すほど疲弊して虚しくなるのも、これまでの人生で起きた全てのことは、自分のためにしていたからだったと。
誰かのために一生懸命時間も労力も注いで心も尽くしているつもりだったけど、つもりになっているだけで、全部自分のためだったことが全ての原因だったとわかり、雷に打たれたような衝撃を受けたそうだ。
 
そこからの姉は、頭角を表すというよりも、為すべきことに向かうために迷宮入りしているように見える。でも、姉のことだから、きっとまた何か突拍子もないことをしでかすに違いない。今度はもっともっと人や社会の役に立つことで。
 
ここまで書いてみて改めて思う。姉は、社会不適合者なのか、天才なのか。
 
未だ、僕にもわからない。天才かと思う時もあれば、本当にダメ人間だなと呆れる時もある。(呆れる時の方が多いかもしれない)
 
ふとテレビに目をやると、先日、将棋界を引退されたひふみんこと加藤一二三名人が出ている。
 
僕は耳を疑った。
 
なんと、ひふみんもノートはとらないと言っているではないか。ノートをとるとかえって記憶に残らないという理由も姉とまったく同じだ……!
 
良かった。僕は心底ホッとした。姉のようなおかしな人は他にも存在するのだ。しかも、神武天皇以来の天才と言われる将棋の名人だ。本当に良かった。
 
「ノートをとる人は頭がいいんです。天才」とひふみん。
 
そして、ひふみんは続けた。
 
今度は耳を疑うどころか、僕は一時停止した。
 
「あのね、ノートをとると忘れる私は、天才のちょっと上」
 
姉よ、悪かった。
 
そうか、天才のちょっと上だったのか。
 
今後の姉の動向は、天才のちょっと上という視点で見守りたいと思う。常識に縛られない姉のことが、本当のところは羨ましいわけだし。
 
 
***

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2018-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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