メディアグランプリ

リーダーの創造性、現場の創造性


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田裕嗣(ライティング・ゼミ 平日コース)

 
 
「本当はここのホテルのラウンジ、あんまり使いたくないんだよね」
 
先日、ある経営者の方と、打ち合わせの時間をいただいた。
その方は、自らの会社をバリバリと経営しながら、美術、食、音楽など、多彩な趣味を持たれている。尊敬できる、かっこいい大人の一人。
当然、とても忙しい。
 
空いている時間を調整していただき、指定された場所が、東京駅の近くにある高級なホテルのラウンジ。
高層階にあり、快晴だったその日は、羽田空港を飛び立った飛行機がよく見えた。天井も高く、インテリアも凝っている。とても心地よい空間だった。
 
「今日は時間がなかったから仕方がないんだけど、ここ、あんまり人におすすめできないんだよね」
席につくなり、周りには聞こえないくらいの小さな声で、そう言われた。少し申しけなさそうに。
 
「え、そうなんですか?」
落ち着いた居心地の良さそうな空間だな、と思っていた私には、意外な一言だった。
 
「ダメなわけではないんだけどね。個人的にはあんまり好きじゃないんだ。まあ今日は時間がないから、早く本題を進めようか」
そう言われたことをきっかけに、急いで打ち合わせの中身に入っていった。
その日は本当に時間がなかったので、とにかく決めるべき議題を終わらせることに精一杯になった。
 
ようやく打ち合わせの終わりが見えてきて、一息つけるようになると、さきほどの「おすすめできない」発言が妙に気になってくる。
そういえば、二人ともコーヒーもお冷もグラスが空になったままだ。
そういえば、少しだけ、肌寒く感じるかもしれない。
そういえば、最初に席に案内されるまで、受付で2人で立ち話する時間があった。
そういえば、そういえば……。
 
もちろん、お相手の経営者ご自身は、そんな批判は何一つしていない。
ただ、色んな分野の「一流」を知っている人の目線は、そういうところに向けられるのかもな、と勝手に納得した。
 
これを、お店の立場から考えると、彼を満足させるために色んな観点から改善の余地があった。
空間やインテリアが洗練されていても、サービスに満足できなければ、その良さは活かしきれない。
逆にどれほどサービスが素晴らしくても、寒い日の暖房の効きが悪かったら、台無しになってしまう。
言い換えれば、お店に関わっている一人一人がお客さんのために考えられてこそ、心地よいサービスが成り立つ、とも言える。
 
最近、企業のマネジメントで重視されていることも、根底にある考え方は全く同じだ。
「1人のリーダーが考え、組織でそれを実行する」というスタイルではなく、「全員が考えながら動く」スタイルが求められている。
 
企業を取り巻く環境は日々変わっているし、お客さんが求めることも多様化している。
あらかじめ決まったことを実行するだけではなく、一人一人が考えて、状況に応じて振る舞うことが期待される。
経営者や管理職の立場では、いかに「全員が考える」ことを促し、支援できるのかが重視されるようになっている。
 
では、「全員が考える」とは、どういうことなのか?
 
例えば、「星野リゾートの事件簿」(日経BP)の中には、新入社員の女性と、社長の星野佳路さんのこんなエピソードが載っている。
福島県にあるアルツ磐梯というリゾート施設で働いているその新入社員は、一緒に働く同僚の中に、どうしても納得できない出来事を目にする。それがお客さんの満足を考えている振る舞いだと思えなかった。
そこで、迷いに迷った末に、全スタッフに対して「こんな出来事を目にして、この振る舞い方は良くないと感じた」というメールを送る。
どんな反応がくるのかドキドキしていると、最初に来た返信は、「負けるな。頑張れ、新人!」という、社長の星野さんからのメッセージだった。
彼女と、彼女の相談相手、その2人だけに宛てて。
 
このエピソードの中で、新人の彼女と、社長の星野さんは、それぞれの立場で「考えて」いる。
現場のスタッフとして、「目の前のお客さんに本当に喜んでもらうには?」を考え抜いた結果が、不安な気持ちを抱えながらも、全スタッフへのメールを送ることだった。
社長としては、「一人一人が考えることを促すには?」を考えた上で、自分の意見が議論を左右しないように気を配りながら、勇気を出して意見を表明した新人を激励することだった。
 
現場のスタッフと社長では、担っている役割が違う。見ている範囲も、起こす行動の内容も、達成したいことも。
先ほどのホテルのラウンジでも同じことだ。インテリアを選定する人、コーヒーを淹れる人、お客さんに接する人、色んな立場の人が関わっている。
現場でも経営者でも、それぞれの立場で、より良いサービスを提供するために、考えられることがある。
 
「全員が主体的に考えられる組織を作ろう」
企業がこういった方向に変わっていくのは大賛成だし、これからの世の中を考えればその必要性も強く感じる。
そのときに、スタート地点になるのは、それぞれが任されている役割を通じて、目一杯に考えることだ。
リーダーにはリーダーの、現場には現場の、創造性の発揮の仕方がある。
 
 
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2018-03-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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