時間がないって言うと損する
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:吉村心音(ライティング・ゼミ 平日コース)
「ママ、テレビの中の人ってなんでみんな早口なんだろうね」
7歳の娘の言葉に笑った。
全てのチャンネルを、3週間分撮り貯めしてくれる機能付きのテレビを使用している為、リアルタイムで番組を観るということはまずない。
どんな番組も1.3倍速で観ている。
オリンピックも倍速で観ているので、羽生君の回転の何と速かったことか。
恋愛ドラマも、倍速で観ているが、男女の恋がゆっくりと芽生えていく甘酸っぱい瞬間も、間がないので、情緒に欠けるとは思っている。
CMはスキップ機能ですっ飛ばす。
時は金なり、だ。
人生は短い。
ついこの間まで、青春真っ盛りで金髪メッシュにへそ出して歩いていたが、気付けば真面目に仕事をして育児家事に追われる毎日になっている。
私が夫に愚痴ることベスト3は、
「何で私ばっかりやらないといけないの」
「時間がない」
「男は時間が自由になっていいわよね」
やりたい仕事が明確になってから、日々勉強したいテーマが増えて、買い込んだ本がどんどん山になっていくので、やる気と時間のバランスに手を焼いている。
日々、何とか時間を作り出そうと、移動時間はほぼ走っている。
信号待ちは絶好の調べ物時間だ。
電車の中では、どんなに満員電車でもどんな体制でも本を読む。
ご飯を食べるのもめっぽう早い。家ではキッチンで立ったまま食べるのも得意。
頭の中は、常に次の行動の段取りを考えているし、思いついたことをノートに書ける体制はお風呂でもベッドでも余念がない。
化粧する時間が勿体ないので、近所ではマスクに帽子を深くかぶる。
眠りに落ちる瞬間まで有効に使いたいから、読書灯はタイマー設定だ。
ボーっとお茶をするという習慣は持ったことがない。
頭の中は常に段取りでいっぱいだ。
そんな現代人っぽい時間に追われた(というか自分で追い込んだ)生活を長いこと続けているが、ふと、私は時間を得しているのだろうかと思い始めた。
長年、こりと頭痛とは嫌な付き合いを続けているが、最近、カイロプラクティックの先生に
「頭痛起きている場所が、いつも扁桃体の反射ポイントなんだよね」
と言われたからだ。
気になって調べてみたところ、最先端のアメリカ精神医学会では“扁桃体ハイジャック”がアツいのだ。
脳みそをマルチタスクで酷使しまくっていると、疲労する。
人間の歴史で、ここまで情報が溢れて便利になったことは初めてだ。
いつでもどこでもスマホさえあれば、色んな情報に触れることが可能になったし、外国にいる友人とも会話ができる。
人間の脳は本来、働くことと休めることが必要なのだと、原始人も本能的にわかっていたのだと思う。
扁桃体が疲れて痛むのは、身体からのメッセージと受け取り、頭痛軽減のため、試してみることにした。
マインドフルネスという精神療法は、Google社やスティーブ・ジョブスなど実益重視に見える名だたる経営者なども行っている脳の休息法として知られている。
マインドフルネスを和訳すると「心がいっぱい」と意味がつかみづらいが、本来は「今ここに生きる」方法のことだ。その為に呼吸に意識を向けていく。
数年前、マインドフルネスを知った時には、時間が勿体ないと思った。
呼吸ならいつもしているから、敢えて意識することに価値が見いだせなかったので、スルーしていた。
7歳4歳の娘と桃を食べている時に、
「ねぇ、今、何を考えていた?」
と聞いてみた。
7歳の答えは
「桃、甘くて美味しいなーって思ってた」
との答え。
4歳娘は
「桃食べているなーって思ってた」
との答え。
「子供って教わったわけでもないのに本能でマインドフルネスな生き方なんだ」
と思った。
私は、桃を味わっていなかった。
リビングにいながら、色んな所に行っていたし、過去にも未来にも行っていた。
「この桃、こないだ買ったのより安いのに美味しいわ。産地によるのか、時期によるのかなぁ。品種メモっておこう。食べ終わったら、片付けて、8時までにお風呂入り終わって、明日早いから9時にはお布団入らないと……」
目の前の桃にも人にも向き合っていなかったということに気付いた。
それって、実は時間を有効に使っているどころか損しているのではないかと思った。
パンをかじりながら仕事をしている人や二野宮金次郎のように常に情報をキャッチしようとしている人が、時間を有効活用している人だと思っていた。
が、その生き方は、扁桃体が興奮状態で頭痛にもなるしイライラしやすくなる。
何より今ここに生きていないのだと気付いた。
走っていると、見失っているものもあるのかもしれない。
ちゃんと食べ物に向き合って味わって食べたら、味覚も体も周りの人も心地いだろう。
1.3倍速の会話に慣れてしまった子供たちは、恋人にもかぶせ気味の返事をするようになるかもしれない。
脳を酷使していると、脳の老化も早まる。
しばらくは、今ここに生きてみよう。
限りある時間をちゃんと大事に味わってみよう。
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