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メディアグランプリ

秘めフォトは恋愛である


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:SHIZUKA (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「あ。やられたっ」
天狼院の経営者、三浦さんからその話を聞いた時、私は心の中でそう叫んだ。
「先日秘めフォトに最高齢で参加された方、63歳です」
 
秘めフォトとは天狼院書店で開催されているイベントの名称。
プロカメラマンでもある三浦さんと、素人の女の子が写真撮影をする会の呼び名。
『自分史上最高にSEXYな写真を撮る、女性限定の新しいフォトサービス』
というコンセプトに私は心を躍らせた。
 
 
実は密かに、このイベントに参加したいと思っていた。
秘めフォトの記事を見た時ドキッとした。
美しくポージングをする人やそんな自分をイメージした。
 
写真に撮られることは恋愛と似ている。
誰かにみつめられ、その人に少しでも綺麗にみられたい思う。
デートの日を心待ちにして、少しでも美しくありたいと思い、肌を磨く。
髪は艶やかでありたい、隅々まで清潔でありたいといつもよりも念入りにお手入れをする。
心臓の鼓動は早まり、高揚し少し潤んだ様な瞳。
恋をするとモチベーションが違うのだ。
 
是非このイベントに参加したいと思った。
お金も大丈夫。時間も作れる。ただ問題が一つある。
私は54歳。そう、さすがにこの年ではダメだろう。
 
 
ダメな理由はいくらでもあげる事が出来た。
だって「秘めフォト」だよ。きっと「姫フォト」と掛けてるんだ。カメラマンだって若くてきれいな女性を写したいと思ってるに決まってる。
だって私50過ぎてるんだよ? 電話をしてもきっと断られるに決まっている。
「すみませんが、場違いです」と言われるかもしれない。いや言われるだろう。
もし万が一撮影してくれるとしよう。
ピチピチの女性の中におばさんが混じるんだから痛々しいと思われるだろう。
私は鏡をみながら、自分の丸くなった肩に手あてて、自問自答を繰り返した。
 
結局、問い合わせることはしなかったし、それ以上調べもしなかった。
 
やられたというのは、先を越されたという感情ではない。
そのマダムは行動して秘めフォトに参加するという現実を引き寄せた。
私は何も行動を起こさずに「きっとダメだろう」と考えていた。
年上のその女性の行動力に負けた気がして「やられた」と口にしてしまったのだ。
 
 
63歳のその方は出来る理由を並べて実現されたのだ。
その方は、秘めフォトに参加出来ることなんて当たり前だったのかもしれない。
夢を形にする人はそんなものだ。
 
私もスタッフさんに尋ねればよかっただけだ。
せめて「20代限定です」と言われたら、あきらめればよかっただけのことなのだ。
いや、昔の自分ならあきらめたりはしない。
なんなら、50代以上限定の秘めフォトマダム部を作ろうと提案したかもしれない。
やりたいことは叶える事が当たり前で、叶えるように努力することが当たり前だった。
 
いつからこんな風に考えるようになったんだろう。
いつからこんな風にあきらめるようになったんだろう。
 
自分に自信がなくなってからだろうか。
 
仕事をやめた頃から、人の目を気にしなくなった。
着る服はもちろんの事、歩き方や仕草も変わった。
そういえば、数年前までは「そろそろ薄着になるからダイエットしよう」とか、「この服が着れるように頑張ろう」とか思っていた。シルエットが崩れれば、戻そうと努力していた。
それが、いつのまにかどうでもよくなっていたのである。ワンピースを着てお腹ポッコリが恥ずかしいと思えるのはまだマシで、そのうちお腹ポッコリさえ気にならなってきた。
「え、お腹が出てる? それがどうした」と、恥ずかしくもなくなる。
 
今でもジムにも行くし、気功やヨガもする。でも、それは美しさの為ではなく、健康の為。最近の私はそんな風に変わっていっていた。
もう今更容姿をきにすることはないと単に開き直っていたのだけれど、本質は自信はなくなっていたことにも気が付いた。
 
生き方は変わっていく。考え方も変わっていく。
それは悪いことではないけれど、心の変化は体型の変化にも表れる。
外見は内面の一番外側と言うように、どこかあきらめてしまうような、緩くなった心が体型に反映されている今の私。
 
ああ、そういえば、最近色気もなくなっている。
気功で言えば、気はエネルギー。色気は色づいたエネルギー。色気のある人はまるでオーラのように、その人その人の色づいた気が発せられる様子。「SEXY」は悪い表現ではなく、とても生なパワーだと思う。その大切な色気、色味もなくなってきていた。
 
少しだけでいい。まずは一歩を踏み出すことで、人生に色味が加わり豊かになれるだろう。
年齢は関係ないのだ。
新しく「SEXY」な自分を見つけることで、未来に自信がもてるようになるかもしれない。
 
今度募集があったら、応募してみるつもり。
それまでに、弛んだお尻を少しでも引き上げておこう。
手入れをしなくなった指先や足先も磨いておこう。
そう。大好きな人に会うために、少しでも努力していたあの頃のように。
 
 

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2018-03-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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