プリンは、なぜ最後に食べなければいけないのだろう……
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:江原英男(ライティング・ゼミ平日コース)
「やった! 今日の給食はヤヨイのプリンだ」
給食が大のお楽しみだったボクは、
プリンがデザートの日を
とっても、とっても、楽しみにしていた(笑
ヤヨイとは、きっと会社名だったのだろう。
パッケージに「ヤヨイのプリン」と表示されていた。
今でも、「ヤヨイのプリン」がどこかに売ってないか
探してしまうほど好きだった。
日によっては、少し半凍りの時もあった。
茶色のカラメルが少し凍っていて、
サクサクした微妙な食感が楽しめた。
家で、プリンを食べることも少なかった頃で、
月に何度かのプリンの出会いはとても貴重だった。
プリンは、皆さんもご存じのとおりデザートである。
だから、給食の最後に食べるのが一般的とされている。
というより、小一の時デザートは最後に食べるものと教えられた。
それに従って、みんなも給食の最後に食べていた。
でも、お腹が一番空いている最初に
プリンを食べた方がもっとおいしいだろう。
食べたい時に、食べたいものを
食べるのが一番幸せ度が高いに決まっている。
先生は、なんて余計なことを教えてくれたのだろう。
他にも、
記憶に残っているのが、牛乳は、噛んで飲みなさいとか、
容器を持たないで食べていると犬食いだと言われたり、
それに、給食中に喋るとつばが飛ぶから喋らずに食べなさい、などなどいろいろ教えられた。
教えられたけど、今では実際にやっていないことばかり。
でも、不思議なことにプリンは最後に食べるルールは、今でも続けている。
自分の子供にもデザートは、最後に食べるものとして教えてしまった。
これは、ボクの中で当たり前のことになってしまっているのだ。
でも、よくよく考えると
なぜ、プリンは最後に食べなければいけないのか……わからない
「デザートだから……?」そんな答えしか言えない。
小一のとき、ボクらは先生の言うことに疑いもしなかったし、
そうしなけばいけないと思っていた。
理由は、
「だって、先生がおっしゃていた」から。
あの頃先生は、絶対的な存在だったと思う。
プリンはわかりやすい例だと思うが、
なんでかわからないけど、そうするべきだと
思い込んでいる当たり前って
あなたにもありませんか。
ボクは、そのひとつに
「男は、強い者」
であるべきだという当たり前があった。
「親がそう言っていた……?」
「先生がそう言っていた……?」
「仮面ライダーでそう聞いた……?」
その当たり前は、もうどこから来たのかもわからないし、
なぜ、そう思っているのかすらわからない。
でも、ボクはずっとそう思い込んでいた。
そのせいか、小二の頃から柔道を習い始め、「強い男」を目指した。
ケンカに負けるのは「強い男」ではないし、
弱い者をいじめるのは、「強い男」のすることではないと思っていた。
なぜだか、女子に偉そうにしてみせるのも「強い男」がすることだと思っていた。
「強い男」が、長い時間を掛けてボクの当たり前になっていた。
「強い男」は偉い!
やがて、そんな勘違いも混同していった。
結婚して奥さんに偉そうに怒り、汚い言葉を吐く、自分がしたいことを優先する
そんな関係のないことも「強い男」の要素として含まれていた。
ほんとうの「強い男」とは?
ボクには、その答えがなかった。
勘違いの「強い男」は、家庭でよく怒っていた。
弁解するようだが、「怒る」を無意識でやっていた。
「怒る」ことは、「強い男」の一部分であり、
正しさを伝えていると思っていた。
でも……、その当たり前は、間違いだった。
自分のやりたいこと。言いたいことがうまく伝わらないと、いつも怒って伝えた。
ボクが怒れば怒るほど、奥さんとの距離は遠くなり、子供との距離も遠くなった。
それはどんどん遠くなった。それにボクはいつも気づかなかった。
奥さんと子供との手が届かなる寸前のところで、
はじめて気づかされた。家族との距離が遠く離れていく……。
「怒ると全然いいことがないやん」
「怒る」と何もいいことがなかった。
というより、良くないことしか起こっていないことに改めて気づいた。
「怒る」のを止めようと思った。
ボクがやっていたことは、「弱い男」の自分を
強く見せようとしているだけの行為だった。
ボクの「強い男」は、誰にも必要なかった。
そんなものは、誰も求めていなかった。
自分の中の当たり前にとらわれて、全てを失うところだった。
今、ボクの子供は、バイキングに行くとデザートを先にとってくる。
そして、プリンを好きな時に食べる。
プリンはいつ食べてもいい。
自分が食べたいと思う時に食べればいいのだ。
自分の当たり前は、自分で気づけないことが多い。
あなたは、なぜ最後にプリンを食べるのですか?
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