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メディアグランプリ

うどん屋で頭を冷やせとサプライズされた日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:本多俊一(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
信じがたい事件に遭遇したときあなたはどのように対処するだろうか。
 
つい先日のお昼にそれは突然起きた。
水を汲もうとしたら氷しか出てこなかったのである。
自販機でジュースを千円札で買った時にお釣りが全部10円玉で落ちてきたような量と重みでジャララララっと固形物だけがコップに落ちてきた。
 
もう少し詳しく状況をお伝えすると、チェーン店系のさぬきうどん屋での出来事だった。
ひとりで昼食の場合はさっさと済ませたいので利用することが多い。今日は蕎麦かうどんかで迷ったところ、関東ふうの黒くて辛い汁より今日は関西方面の白くて透明な汁の方が優しくて良いなと思って今日はそっちに行った。
慣れた感じでサクサクと会計して席につき、コップに水を汲みに給水エリアにおもむく。コップを給水器のレバーにあてる。この店にはもう何回も通っている。なにも戸惑うことはなかった。
 
そこにジャララララっである。
 
驚きすぎてレバーから離すのを忘れてしまい、コップの容量ギリギリまであっという間に氷で埋め尽くされていった。危うく溢れ出させてしまう前に我に返り手を離す。
目の前に氷が盛られたコップがあり、一瞬目の前にあるのものが理解できなかった。いや、どこかで見たことある気がする。そうだコンビニでアイスコーヒー買う時氷だけが入ったカップを買ってこれに後からコーヒーを注ぐアレみたいだ。
でもここはうどん屋である。
 
思わず「フッ(笑)」と声が出た。
 
人間不思議なもので自分の予想を超える出来事があると驚きも通り越して笑えてくるのである。怒ったり悲しんだりする選択肢が脳内に起きなければあとは笑うしかない。
 
いろいろリアクションをしたいところだが、ここはスピード感重視のチェーン店系のうどん屋、昼時でもあるので後ろも並び始めている。冷静さをキープしてそのまま席に戻った。
 
これはなかなかの事件だ。むしろすぐに店員にツッコむべきだろうか。
席に戻りがてらいろいろこの事象に関しての対応を考えたがあえてそのままにすることにした。
なにせこれで誰かが怪我をしたりするリスクはない、むしろ笑えるんだからこれはできるだけ多くの皆様におすそ分けするのが良いのではないか。
 
また背後でジャララララっとけたたましく音がした。ほらまた。
 
きっとその内に気の短い客が訴えるだろう。ああ、もったいない。
 
さて、この氷はうどんの近くにでも置いておけばちょっとは溶けて飲めるようになるだろう。いっそ半分くらい食べてから汁を先に飲み干して、この氷を入れて冷やしてみれば二度美味しいのではないか、などと「氷の有効活用」について思いを巡らせていく。
いや待てよ、この氷になにか運命的な意図があるのだとしたら、これは自分に対してどのようなメッセージなのだろうか。思考は具現化するというテーマの本も思い出す。これは自分が望んだことなのか。
 
もしこれがあなただったらあなたはどのような解釈をするだろうか。
 
ジワジワと溶けていく氷を揺らしながら他愛もない想像をふくらませる。
とは言え混み合う昼時に遊んでいるのも申し訳ないので無難にうどんを食べ進める。
 
食べ終わりに差しかかるあたりで、ふと状況の異変に再び気がついた。
そういえば誰も文句を言ったり騒いだりしていない、むしろあれから静かだ。普通に水が流れている音がする。
知らない間に直ったのだろうか……それにしては店員が特に動いた気配はしなかった。
 
なにかがおかしい。なぜみんなそんな冷静でいられるのだろう。
 
もしかしてこれはドッキリなのか……どこかでカメラが回っているのではないか? 未だに氷90%のコップを手元に置いてクルクル観察している自分を観察している誰かがいる……
まさか芸能人でもないのでそんなことあるはずはないが、不思議なことが起きた上に不思議な状況になると人間とはさらに不思議な可能性まで創造する。とりあえず面白い方に向かえばいいと思っている。
 
いずれにしてもこれは……自らの手で白黒ハッキリさせねばならない。
 
ちょうど客足も途切れた今しかない。
おそるおそる給水器に向かう。極限まで「普通にお水の追加いただきに来ましたふう」を装い、給水器の前に立つ。
 
ふと普段考えることなく押しているレバーのもう少し上部に「水だけ・水と氷・氷だけ」という表示とさりげないボタンらしきものが目に入ってきた。今まで気がつかなかったが、もしや。
こいつ……押せるのか。
 
切り替わった。
まさかそんな……彼にそんな能力があったなんて。
 
日頃、先入観を棄て常に新鮮な気持ちで観察して世にクリエイティブを提供する職業の自分にとって晴天のヘキレキ。
 
まさかうどん屋でこのような戒めをいただくことになろうとは。〆切間際で煮詰まってきた頭をうどんの神様が少し冷やせとくれたきっかけにちがいない。
ありがたく今度は水だけを汲んで、最初の氷だけのコップに入れ、できるだけ溶かした上で冷やされた氷水をクイっと飲み干し、脳に喝を入れ店を後にした。
 
明日のお昼は蕎麦屋にしようかなと思う。
 
 
***

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2018-04-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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