ライティングはひょっとして猫?
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:木戸 古音(ライティング・ゼミ平日コース)
「ねー、猫を飼ってみないですか」
突然の話に僕は「キョトン」としていた。
「あんなケダモノ、においもきついやろ」
僕はまったく乗り気でない。
なにせペット自体大嫌いで飼った経験も無い。
さらに僕は答えた。
「マンションはペット禁止やで」
とそっけない。
「殺処分寸前の猫ちゃんを預かっているん」とミカさん。
ミカさんも本気らしいのか
「認知症になるの遅らせられるよ」
僕は「う? なに、それ」
と隙をみせたのだろうか、ミカさんはここぞとばかり一揆果敢につっこんでくる。
「実はね、名前もう決まってんねんや」
その言葉に僕はのけぞって
「なんだそれ」「なんだって」「まるで出来レースやん」
とあきれ返る。
ミカさんは涼しげに続ける。
「マルセル・モイーズ・わたなべ」
とのたまうではないか。
僕はまったくもって奇襲作戦に打ちのめされたて、ぽつりと言う。
「それって、僕の尊敬してやまないフルートの神さんの名前やないか」
僕はテクニカル・ノックアウトの完敗だ。反論の余地もない。
その名を使われたら僕が有無をいわず低頭平伏、
「へへー、恐れ入りました、お代官様」状態だ。
猫が我が家に嫁入りしてきた日のことを忘れない。
4年前の正月5日、気が変わらないうちをねらったのか、早くもやってきた。
若い男女の保護団体メンバーが籠を抱えてやってきた。
籠の中の姫は推定1歳半。
籠から飛び出すや、狭いわが部屋の隅っこにすばしっこく隠れこんだ。
団体の人が何とか捕まえて「新しい餌係」となる僕の腕に乗せてくれた。
しかし僕の胸や腕を何度もかきむしったあげく、再び遁走した。
主人公の猫ちゃんの姿が見えない中で、互いに挨拶自己紹介を交わした。
茶菓子には客人が用意してくれたピンクの肉球マシュマロを食べた。
「あーあ、先がおもいやられる」
彼らが帰宅した後僕は急に不安にさいなまれた。
「夜が来るのが怖い」
このけだものが布団に入ってきたら
「うー、ギャー、ごー」って僕はわめく事になるかも。
ともかくこんな初夜ははじめてだった。
一番恐れたのは眠っている間に顔面を掻きむしられないかということ。
さらに困ったことに、花粉症チェックで猫アレルギーのあることも判明したばかり。
だからベットではマスクをかけて頭から毛布を被り完全防衛体制をとった。
それでも怖くて、びくついて寝付かれない。
三日間のトライアル期間を経てこの人ならと太鼓判を押されて始めて
正式に飼い主と認定される。特にひとり住まいの男性は慎重にチェックされる。
人間性、住まい方、部屋の構造、猫にかける経済的余裕の有無全ての面で
判断されると聞かされて、冷汗をかいた。
さてライティングと猫の関連性って何?
ライティング・ゼミに申し込んだら伊達や酔狂では続かない。
猫を飼う決断と同様相当な覚悟が必要だった。
それでも決めたのはなぜ?
文章を書くのは、かなりストレスになる、なのにやはり好きなのだ。
それに僕の生き方として「迷ったらゴー、やってみなけりゃわかんないよ」
立ち止まって後悔するなら「いざすすめやも」を通してきた。
それにミカさんから言われた認知症の件も気になる。
どちらも脳の鍛錬、ボケ防止に寄与するではないか。
ところで、いざゼミに参加してみると壁の分厚いこと。突破口が見当たらない。
自信があったはずの文章が、どうしてもうまくいかない。
しかも、いざ机に向かうとテーマがどんどん逃げ去っていく。
なのにトイレでふとアイデアが浮かんだり、寝床に入った途端に、「ぽー」と沸いてきたり。
猫も同様、何となくほったらかしていると
「かまってよニャン」と膝にのって来る、トイレの前で三つ指ついて尻尾でその前足をかくして、礼儀正しく待ち伏せているとか。
これって文章を書くことと同じ状況ではないか。
猫は思い通りに動いてくれない。それが特徴でもあるのだ。
相手は生き物。トイレの世話から水、猫草、朝夕の餌、
餌係が「行って来ます」「ただいま」の時には決まって餌のおねだり。これが毎日のこと。
文章もコツコツと地道な日々の繰り返しが必要。
文章を書くのは適度のストレスを伴う、猫を飼うのも同じこと。
両者は生活のハリになっている。
ときに上手く筆が進み評価されることがある。
こんなときの僕は一週間実に機嫌がいい。
猫が機嫌よく喉を「ゴロゴロ」と鳴らしているときは餌係にもアドレナリンが溢れてくる。
ところが少し調子に乗って文がつっぱしたら最後、不評をかう。
僕は、猫に時々気分転換に、衣装や帽子を着せては悦に入っている。
「ぼく、シアワセ」
「ねこ、シワヨセ」
猫は目をひんむいて、いかにも迷惑千万のありさま。
ある時親友から
「絵描きは絵を描いていたらいいんや。文章書いてどうするねん」
と言われても、僕は動じなかった。
それほど僕は文章を書く事に執着している。一週間ごとの生活のメリハリとしても
今や「月曜23時59分」のあとは「よし、この一週間もがんばった」
と清々し、毎週末の判定を心待ちにする。
さて猫姫は僕のことをどう思っているのだろう。
どうも何年飼おうが猫にとっては単なる「餌係」らしい。
せめて「執事」には、なりたいものだ。
「ねこをかうのは、たのしみ」
「ぶんをかくのは、たのしみ」
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