電車で思う、最新の文化
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:珈琲一杯! (ライティング・ゼミ日曜コース)
発車を知らせるベルが鳴り、慌てて階段を駆け下りて、もうすぐ閉まるであろうドアから車内に飛び込む。
そのまま空いている席を探して、立っている人の横をすり抜けて座り込む。
はあ、何とか間に合ったと乱れた息を整えながら、周囲の状況を確認する。
今日は土曜日、都内に出て海外の美術館から有名画家の絵を取り寄せた展示会を見たり、都内でおいしいレストランを探したりして楽しむ予定だ。
たまにこうして羽を伸ばす時間って、いいものだと思いながら周りの人を見ると、みな思い思いのスタイルで休日を楽しんでいるようである。
あっちの家族連れは動物園かどこかに行くのだろう、子供さんが元気にはしゃいでいるし、
その隣のおばあさんは娘さんと一緒にお出かけのようで、はしゃいでいる子供の様子をほほえみながら見ている。
せっかくの休日に仕事があるのだろうスーツを着た社会人も、慣れた様子で、心なしかゆったりした様子で座っている。
斜め前の男子大学生は、なかなか気が抜けたおしゃれなシャツを着てノリノリで音楽を聴いているし、
目の前に座っている女の子は、もはや自分にはどこに売っているのかも分からないデザインの服を、
都会的なセンスで組み合わせておしゃれに決めている。
う~ん、こんなに色々な人がいるものなんだなあと思うが、あれ、待てよ、これだけ世代も立場も文化もこれからしようとしていることもばらばらな人が集まる場所って、電車以外になくないか? と気づく。
そう思うと、電車は不思議な場所だ。これだけ、多種多様、違う目的を持った人が一同に向かい合って集まる場所なんて、おそらく他にはないんじゃないだろうか。
中には、おそらく電車でなければ出会わなかっただろうと思う人もいる。
全く違う生き方をしている人生をちょっと垣間見ることができる楽しみがそこにはあるのだ。
そして、それだけ色々な人が、電車が走っている間、
待ちくたびれるでもなく一定の緊張感を持って本を読んだりスマホをいじったり友達と話したりするというすごし方が自然に発生しているのだ。
普通、見知らぬ人と向かい合って座るというのは気恥ずかしかったりするものだが、電車ではそれを全くといっていいほど感じない。自分が好きなことをして過ごしていられる安心感がある。
なぜこううまくバランスが取れているのだろう。不思議だ。
う~ん、この距離感、バランス、混ざり具合は、もしかすると電車は世の中にいるありとあらゆる人が一同に介する、最先端の文化の発信基地なのではないか?
そういえば、子供のころは電車で乗り合わせたどこかのおばちゃんと話して色々教えてもらった。
高校生のころは、乗り合わせる他校の子の様子が気になったし、
お互いちょっとプライドをかけてお前はどこの学校のどういうやつなんだと探りあったりもした。
東京に出てからは、色んな会社の社会人、色々な学校の学生、色々な地域のマダム、色んな服装をした若者などと乗り合わせて、毎回違った雰囲気を楽しんだり、いまを感じたりしている。
今でもちょっと田舎の方の電車に乗れば、おじさん、おばさん世代の文化と中高生のきゃっきゃとした文化が一緒に乗り合わせてお互いにちょっとした驚きをともなう出会いをしていたりするし、
その地方独特の文化が電車の中の空間にあふれているように感じることもある。
都内の、特に渋谷に向かう山の手線では、それぞれ最先端のおしゃれをした人たちが自分を主張していて、とくに現代を感じてしまう。そのうち電車の中向けのスタイルなど生まれたりするのだろうか。
窓を流れる景色は、もうすぐ目的地だと告げている。
ついさっき乗り込んできたあの若者は、電車の中の雰囲気にちょっと戸惑っていたみたいだけど、もう溶け込んでいる。溶け込んでいるけれど、自分と違う未来を目指しているような若々しさを放っているように感じてしまう。
そろそろ降りる準備をしなくては。心なしか、降りることに寂しさを感じる。
今日は、休日気分を盛り上げてくれるようななかなかいい時間だった。
今度、もう少し自分らしいスタイルで電車に乗ってみようかと思う。きっと、自分のいまのレベルを感じられるだろうし、周りの人も刺激になるような反応を返してくれるだろう。
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