「ありがとう」はオセロみたいだ
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:岩本 敏昌(ライティング・ゼミ日曜コース)
ミーンミンミンミー、ミーンミンミンミー
昨年夏、今日も暑くなりそうなそんな朝。ひんやりとした空気が気持ちいい。ただ私は今日も悩んでいる。その悩みの種は今から向かう心理学の学校だ。
その1週間前、私はもっと自分の内面を探りたい、人の行動心理を知りたいと思い、前々から興味を持っていた心理学の扉をたたいた。
そこには色々な年代、職種、普段なら出会わないような人たち。
笑顔が素敵、綺麗、カッコいい、本当に色んな人たち。
心理学といえば、ネガティブなイメージがあったが、幻想だった。とても新鮮だ。
そんな中、次の週に向けてある宿題が出された。
それは店員さんに、「ありがとう。と言ってください」ということ。
宿題を聞いて、簡単だ、出来る、と思った。
なぜなら「どうも」といつも言っていたから。
「ありがとう」と言い換えればいいだけだよね。
そんなことを考えていた。
私はいつも決まって、「どうも」と言っていた。
無言はなんだか嫌なやつみたいだし、ありがとうはなんか照れるし、結局は「どうも」になっていた。
いざ「ありがとう」と言おうとすると、言えない。
年配の人に向かっては、「ありがとう」かな、「ありがとうございます」かな、そんなことを考えながら、いつもと同じように「どうも」になる。
いつものコンビニのお姉さんにいきなり「ありがとう」と言ったらびっくりするよな、そんなことを思いながら、いつもと同じように「どうも」となる。
若い人だったら、「ありがとう」と言えるかな、と思うけど「どうも」となる。
会社や身の回りの人には、「ありがとう」を使うけど、見ず知らずの人に「ありがとう」は中々言えない。
そんなことを思いながら、夏が終わり、秋となり、冬も終わり、春になろうとしていたそんなある日。
ずっと私の中で燻っていた何かが目覚めた。
あ、この「ありがとう」の感じだ。
ついにこの宿題の意味を肚落ちすることが出来た。
それは、私の中の「ありがとう」は二種類があったということ。
そうか、先生はこれが言いたかったのだ。
私の言葉で書くとこうだ。
喉のでる「ありがとう」
肚からでる「ありがとう」
喉からでる「ありがとう」は、相手に言っていそうだが結局は自分の為。進撃の巨人の街みたいに、高い壁に覆われていて、そこに住む人たちはここの街が世界の全てだ、ここにいると平和だ、そんな世界観。
でも実は塀は巨人で出来ていて、ある人たちが中に住んでいる人たちを都合の良いように欺こうとしているそんな世界観。
そして、肚からでる「ありがとう」
ものすごく単純に全てを認める、今この瞬間に、存在にありがとう、そこに欲はない、そんな澄んだ感じの世界観。声に出しても良いし、声に出さなくても良い。
流行りの言葉でいうとマインドフルネスだ。この世界観は「どうも」からは生まれない。
同じ「ありがとう」だけど、黒と白のオセロみたいに表と裏、表裏一体の関係だ。
自分なりの世界観でそんなことに気付く。
今までは、ずっと黒いオセロが盤上に並んできた。もう空いているスペースが無い位に。
ある意味、黒の数が多くて、勝っているように見える。でも、その盤上の上には私が求めている答えはない。
では白を置いていくには、白に変えていくにはどうすれば良いか?
一回、ゲームをリセットする。でもこれは、今までの私を否定することになるからやりたくない。ではどうする? そうだ、盤上を広げたらいい。
反則かな。
一回り広い視野を持つと自然と盤上が広がってくる。
見えていなかったら盤上が見えてくる。
そこに白いオセロを並べていく。
黒いオセロが段々と裏返しになり、白くなっていく。
「ありがとう」
この言葉は強烈だ。
言葉一つで何もかもが変わると良く言われる。
でも実際は言葉一つでは変わらない。
どこから声を出すかだ。
正しい言葉、正しい声の出し方で世界観が変わっていく。
そんなことに気付かされた。
興味本位で飛び込んだ心理学の世界。
日常でのリアルな体験の学びが私をもっと大きくしてくれる。
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