学部選択という罠
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記事:高野いづみ(ライティング・ゼミ日曜コース)
留年した。
しかも、2回目である。
3月頭、卒業旅行のつもりで行っていたパリで確認した卒業判定は「否」だった。
留学したとか、休学したとか、まぁ単位が足りなかったのも含めて在学が1年延びた学生にはそこそこの頻度で出会う。
あの京都大学だって留年率は2割だそうだ。
理由があれば、留年していたってバカにされるどころかむしろ行動力がすごいと褒められる。
そんなやりとりを何回もしてきた。1回目の時は。
確かに1回目の時はやりたいことがあったから、留年した上で休学をした。企業で半年間働いて、夢の実現に少しずつでも近づいた。貴重な経験をたくさんさせてもらった。「その選択肢はぜんぜんアリだと思うよ!」との言葉をたくさんもらった。
しかしさすがに、2回目の留年をして6回生だなんて、しかも女子でだなんて。
ほとんど聞いたことがない。
自分が選んだわけではなく「単位足りないから卒業させられませ〜ん」と大学に言われたのである。
情けないし恥ずかしいし申し訳ないしで、あまり人には言えずにもうすぐ2ヶ月が経とうとしている。
直接聞かれたらもちろん正直に答えるのだが、お世話になっている方々にこちらから情けない報告をするのは気が進まず、おろそかになってしまっている……。
そもそも。
私が留年した原因は、学部選択の罠に引っかかってしまったからだ。
5月にさしかかろうというこの時期、新入生諸君の大半はそろそろ思っているだろう。
「あれ? 学べる内容が思ってたのと違う……。授業が面白くない……」
大学に通ったことのある方は身に覚えがあるはずだ。
大学受験の際に受験する学部を選び、合格したことが嬉しくて大学生活にワクワクして入学式を終え、サークル選びに頭を悩ませながら先輩たちに手伝ってもらってやっとのことで受講登録を終える。
途中で優しい先輩たちの声に小さな違和感を覚える。「この授業は楽単だから!」「授業出なくたって先生ちょろいよ」「その授業はやめとけ、地雷だぞ」
(※楽単……楽して単位が取れる授業のこと)
先輩たちの助言は正しくて、大学生活を送るうちに「労力をかけずに単位を取ること」の重要性はいやというほど知ることになる。サークルは本気でやらないと中心メンバーになれないし、思いっきり遊ぶにはアルバイトが必要不可欠だ。大学生は忙しい。
だけど、その分野の勉強がしたくてこの学部に入ったはずなのに。大学で勉強した先になりたい職業があるのに。
そう心の中で小さく先輩の助言に抵抗して、授業を選ぶ。
そして実際に授業が始まり……
後悔するのである。
先輩の助言は正しかった、と。もっと楽な授業を取っておけばよかった、と。
1年生の授業は大半が基礎的な内容で、学問の紹介を兼ねて広く浅い領域の授業を強制的に取らされることが多い。対して学生は学部を選ぶ時に学問的な捉え方などしておらず、興味がある領域はピンポイントなのである。
例えば私は経営学部だが、大きく「商品の作り方・売り方(マーケティング)」「人や組織の動かし方(マネジメント)」「お金の管理や動かし方(ファイナンス)」に分かれる。これらのすべてに興味があって経営学部を選ぶ学生なんて存在しないに等しい。大抵は「人の動かし方に興味がある」とか「お金が好きだから」とか「マーケティングってなんか面白そう」という選び方をしているだろう。
ちなみに私は「起業する方法が知りたい」と思って経営学部に入った。見事にどれにも当てはまらない。厳密には全てに当てはまるのだが、授業で扱うのはそれぞれの立ち上げ段階の話ではなく、歴史や理論である。私が描いていた内容ではなかった。
実践的ではない内容はなんのために授業を受けているのかわからなくなりがちで、面白くなかった。
そこで私が思いついたのは、「実践的に学べる場を大学の外に見つけること」「自分の苦手を克服すること」の2点だった。
「実践的に学べる場」を求めて、たくさんのインターンシップに参加した。学生団体にも所属した。
「自分の苦手を克服すること」を求めて、どうにも苦手だった法律や数字を扱う授業を取った。
「なんだよ、意識高い学生の頑張った自慢かよ」と思った方は冒頭を思い出してほしい。
この組み合わせは、最悪だった。
受講登録の段階では毎年やる気に満ち溢れている。自分が弱い領域を克服するため同系統の授業ばかり登録した年も幾度もある。
しかし授業期間中は学外の活動にのめり込み、どうしたって単位が犠牲になってしまった。しかも登録しているのは苦手教科ばかり。あー面白くない。
今思い返すと、ただただアホである。
そんな、大学生としてはアホでしかない選択を取り続けて4年経った私だから、
大学生を続けて6年目の私だから、新入生のみんなに言えることがある。
大学では、自分の好きなことを学べばいい。
基礎的な授業は、学部にもよるがきっと低学年の間だけだ。
もちろん、選択肢を広げるためにその学問をかじってみることは有効だが、どのみち専門を選んで勉強していくのだから、得意でない領域は無理して克服しようと思わなくたって大丈夫。
好きな領域の授業は楽しくって仕方ないから安心してほしい。
だから無理をしないで、好きな授業と楽な授業でさっさと単位を揃えておくことをおすすめする。
それよりも。
大学生という肩書きは最強だ。
どんな時間の過ごし方だってできる。
今の時代、どんな業界だって勉強させてもらうことができる。
やりたいことを口にするだけで手を差し伸べてくれる大人がたくさんいる。
私はそれを、身をもって強く体験してきた。
いま、大学生6年目でありながらこの書店にたどり着いた。
6年目だからこそ、と言った方が正しいかもしれない。
実は昔から本が好きで、本屋さんに憧れながらもタイミングがなかったので小さく夢が叶ったのはここだけの話だけれど、本屋さんを探して天狼院のスタッフになったわけではない。
自分の今の目標を叶えるために。そこにつながるプロジェクトを天狼院書店の中で確立するために。
私は自分の生き方を持った上で、楽しいステージの上にいる。
それはきっと大学生という肩書きをフル活用していろんなところに顔を出し、学部で経営学の面白さに目覚めたから。
みなさま。これからの私の活躍に乞うご期待。
2回も留年してるけど、私の未来は明るいのだ。
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