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がんになったら肩こりが治った


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:なつき(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
万年肩こりだった。頭痛がするほどの肩こりだった。何をやっても治すことができなかった。それがピタッとおさまった。がんがきっかけだった。
 
「切らなきゃだめだね」
 
やっぱりね、だいたいわかってた。よく言う頭が真っ白になることはなかった。何度か検査をしていたし、自分の身体の異変にも薄々感づいていた。この治療をすることがどんなことなのかも、治療した方に接したことがあるのでわかっていた。
 
手術か。頭では理解できたんだけど、自分にそれが降りかかって来るとはやっぱり思ってなくて。半分自分を遠くから見ているような不思議な状態がしばらく続いていた。そのおかげで、静かに受け止めることができたのかもしれない。がんだった。逃げることはできない。ここで逃げたら全身に広がるだけのこと。今取れば命に別状はない。
 
一か月後に手術をすることになった。それでも他人事の様な不思議な状態が続いていた。
 
手術当日は寝たきりだった。身体を動かすことすら重たく億劫だった。2日目の朝、看護士さんの手を借りながら立って歩いた。よろよろしながらも歩ける自分に驚いていた。
 
入院病棟では、毎朝11時からリハビリ体操が行われる。これだけ歩けるなら、とリハビリ体操に参加した。廊下の一か所にパソコンを設置し、そのパソコンから動画を流し、それを皆で見ながら体操を一緒に行う。その日は立って自分を支えることができず、椅子に座って体操をした。とてもゆっくり行われている動画だったが、その時の私にはとても速く全く追いつけない。腕を横にゆっくり上げ下げするなど、一セット五回同じ動作を繰り返し、似たような体操が六種類あるだけなのだが、一セットあたり一回がやっとだった。手術前日まではあんなにスタスタ歩いていたのに。手だってぶんぶん動かしていたのに。一か所切るだけでこんなにも人は行動できなくなるものなのか。
 
そしてまた次の日、「11時になるよー」の声がかかる。特に強制ではなく、出られる人だけ参加すればいいものだったが、早く動かせるようになりたい。更には看護士さんから「できるだけ動かすようにしないと、徐々に筋肉が固まって曲げ伸ばしが一生出来なくなるからね」との話も聞いていた。腕の曲げ伸ばしができないのは正直想像がつかないが、今のこの鉛の様な腕の重さを思うととても怖くなる。よってこの日も参加。嬉しいことにこの日は座らずに参加することができた。相変わらず一セット一回が限度だったが時間中立てただけで持久力がアップしたと嬉しかった。
 
4日目、5日目、6日目、一セット二回、三回と動かせるようになった。日々、腕の動かす範囲が広がることが嬉しい。リハビリ体操は出来るなら一日三回位した方が良いとの話があったので、頑張って動かすようにしていた。朝起きた時、同室の患者さんと話しながら一緒に、夕ご飯の前に少しなど。身体を動かすことで温まってほぐれるためかとても快適だった。
 
二週間ほどで退院。20年ほど前に同じ内容で手術した方の話を聞くと、もっと長く入院していたとのこと、医術の進歩は目覚ましいと思った。退院後もリハビリ体操は継続が必要となる。退院する頃にはまだ一セット三回が無理せずに行える状況だった。
 
退院後も毎日リハビリ体操を行った。すぐに仕事に復帰したので一日三回は難しく、一日二回だったが継続して行っていた。リハビリ体操をしているととても身体が軽くなる。一か月後には一セット五回行えるようになり、三か月後には腕を大きく回すことも、曲げ伸ばしも容易にできるようになった。
 
この頃から転移防止のために抗がん剤が始まった。薬の影響で全身が痛む。リハビリ体操が億劫になる。少しずつさぼるようになっていった。すると、忘れていた肩こりが戻ってきた。手術前までずっと悩まされていた肩こり。不思議と入院中と退院してからしばらくは肩こりが無かった。無かったから忘れていた。ただでさえ全身が痛いのに、さらに頭痛も引き起こす肩こりが再発してはたまらない。
 
この時はまだ、肩こりが再発した原因が何か気づけなかった。気づけなかったが、更に身体が痛くて動けない事で全身が動かしづらくなった。ふとある時、最近リハビリ体操をやっていないことに気づく。身体が痛いながらも頑張って動かしてみる。凝り固まって身体が思うように伸ばせない。これは大変だ。その日からリハビリ体操を再開する。数日後、曲げ伸ばしがスムーズになった。と同時に嘘のように肩こりが消えた。
 
今まで何十年も悩まされていた肩こり。良いと言われる筋トレなどもやってみたが一時の効果のみだった。それが、こんな簡単な動作なのに、ゆっくり行うことでこれほどの効果を発揮するとは。がんにならなければ、手術しなければ、入院しなければ知ることができなかった。
がんに感謝。
 
 
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2018-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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