回り続けるコンパスを手に進もう
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:珈琲一杯!(ライティング・ゼミ日曜コース)
先日、上司に呼ばれて話を聞きに行くと、
同じ課の竹田君が熱を出して2、3日出社できなさそうであるとのこと、
ついては近日出荷の特注品の装置を代わりに調整して出荷してほしいとのことだった。
竹田君が担当している装置は、お客さんの製品を評価するための装置で、
製品をセットすると評価したい位置に自動的に移動して何点か評価し、その結果をデータファイルに書き込むというものである。
上司はもうほとんど出来上がっていて問題ないか確認するくらいだと言っていたので安心していたが、
実際に動かしてみると逆の動作をする部分があるは、動かすと互いにぶつかる部品があることが分かるは、データファイルに正しい形式で書き込まれないはで、修正の対応に右往左往することになった。
こうした場合、動作の制御についてはソフトウェアの担当者と、機械部品については設計担当者と相談して修正を進めるのだが、たいていの場合、そこにも一苦労がある。
ソフトウェアを修正した場合、なぜか今まで何の問題もなく動いていた部分に不具合が発生することがあり、修正するたびに一から評価しなおす必要があるのだ。
また、人によっては、せっかく使いやすさを考えて作った制御の手順を、
コーディングのしやすさという観点から多少組み替えて作ってしまう場合もあるので、
そこにも注意して変わっているところがあれば担当者との交渉が必要である。
不思議な話だが、交渉なのである。
相手も技術者としてプライドを持っていたり、こちらの方が絶対不具合が発生しない制御方法になるなどの理由を主張するので、
何とか説得するかお互いに折り合いがつくところを探してそこに話を落ち着けるということになる。
機械部品についても、部品を加工しなおして済むのか設計し直して発注するのかを考えて、手はずを整えるために走りまわることになる。
場合によっては、そんな短納期では作れないという話になって、
お客さんに納期を遅らせることができないか相談しなくてはいけない話になってくる心配もある。
幸い、この装置の場合は、2、3回の修正でソフトウェアも完成したし、不具合があった部品も追加工と再処理したものへの交換が納期までに間に合った。
2日後に病み上がりと心配とで青い顔をして出社した竹田君と一緒に最終確認をして出荷した次第である。
仕事をする上で、ソフトウェアや機械設計など担当部門の持っている文化というか癖のようなものを受け入れて、その中から仕事がどう見えるかも考慮する必要がある。
自分でこういう方向で進めるぞと思って仕事を持って行っても、担当者の考えや使えるリソース、材料費や納期などの要素の影響を受けて、少し違う方向に持っていく必要が出てきたりする。
極端な場合は、自分でもこれはやった方がよいと思うし、客観的にみてもマイナスになることはないと考えて提案した改善策を部門の方針と合わないといった理由で却下されてしまうこともある。
自分で進む方向の指針を立てても、周囲の人や事情に引っ張られて方向を変えられたり、場合によっては逆方向を向かされたりしてしまうのが常なのである。
働くこと、生きることは、コンパスを手に進むかのようである。
自分で進む方向を定めて、そちらへと進んでいくのだ。
けれども、周囲の人の影響、自分の置かれた環境の影響を受けて、針は少しずつ曲がってしまう。
仕事で不具合の修正で走り回っているときなどは、まずすることを決めて針をその方向に向けて進み、
それによって発生した事件や担当者の反応によって針の向きを少し変えて進み、
それが終わったら次のことに針を向けて進む、といったことを繰り返していく。
これが何ステップか続けば針は狂ったかのようにぐるぐる回るし、
周囲の力が自分より強くてぐるぐる回らざるを得ない時だってある。
これをしないで周りをも巻き込んで1つの方向に進める人は、よほど強い磁力を持っているのだろうと思う。
自分の手にあるのは、すぐ方向が変わり、時にはぐるぐる回るコンパスだが、よしとしよう。
人生にテストの問題のような正解はなく、どの方向に進んでもその先に道が続いているのだ。
自分でその時その時に進む方向を考える上では十分に役立つ。
それに、すぐ方向が変わることは、適応力や対応力、変化への反応スピードの速さなどの点で役に立つはずだ。このコンパスだって、仕事でも人生でも先に進む役に立ってくれるのだ。
みな、迷いながら生きている。これからも、このコンパスを頼りに、生きていこうと思う。
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