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ワークライフバランスなんて言葉、なくなってしまえばいい《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:松下広美(プロフェショナル・ゼミ)

「残業がなんで多いか、思いつくことある?」
「あ……はい。そもそも、残業ありきのシフトを組んでしまっているので……」

他にも思いつくことはいろいろあり、見える原因を挙げていく。
あれもこれも、残業の原因なら目をつぶっていてもわかる。
でも、本当は……。

課長との面談があった。
定期的な評価面談だ。会社の方針に従って目標を立てて、それに対する評価を受けて昇給がある。
サラリーマンとして20年近く過ごしていると、目標を立てることや評価面談は運動会や学芸会みたいなイベントだ。無難な目標の中にちょっとだけやる気を混ぜ込んで、評価面談では当り障りのないことを話す。そこそこの評価をもらえることはわかっているから、余計なことは話さない。

そんな無難な目標の中に、残業の抑制、という項目があった。
確かに残業は多い。毎月30時間くらい。三六協定に引っかからない、ギリギリのラインで残業が発生している。
そりゃ、減らせるものなら減らしたい。
でも、常に一定の業務量じゃないし、想定外の業務もある。それに加えて、次から次へと書類仕事。減らせる要素が見つからない。
毎年のように置かれる目標なので、減らすのはそこそこで、減らせない要因を探しておけばいいかな、と思っていた。

そんな中、うちの会社でも『働き方改革』ということが言われるようになった。
残業をゼロにしてください。
今までのやり方を見直して、効率のいい働き方をしてください。
いや、急にそんなことを言われても、困る。残業をしたくてしているわけじゃないし、できることなら早く帰りたい。

「残業、減らせると思う?」
「いや、無理じゃないですか」

即答された。
部下に、減らせるかと相談しようとしたのだが、バサッと切られてしまった。
そうだよね。
残業をしてもいいよっていう人と、残業せずに帰れるなら帰りたいって人と、残業しなきゃ仕事終わらないよって人と、思いがみんな違っている。

突然、働き方改革だとトレンドを入れられても……。

結局、課長の前では、
「すいません。今のところ、減らすのはムリです」
と答えるしかなかった。
それでも、上司からの「減らせ」という言葉と、部下の「無理じゃない」かという言葉の板挟みになる。

どうしようか……。

「ワークライフバランスって言葉、嫌いなんだよね」
なんだかなー、と悶々としているとき、そう言われた。
「だって、ライフの中にワークがあるやん」

その人が言うには、ワークとライフ、仕事と生活、人生はバランスをとるものではないという。
生活や人生の中に、仕事があるものだと。

働き方改革とワークライフバランスとは、セットにされている。
ワークライフバランスを向上させるために、働き方改革をするのだ、と。
外の世界の言葉だと思って、ニュースでその言葉を目にしても自分には関係のないことだと思っていた。特にワークライフバランスという言葉には、モヤモヤした違和感があった。

バランスを取ろうとするから、歪みが出てくる。
そもそも、仕事と生活のバランスっていっても、独身と既婚者、男と女、子持ちと子無しでも、仕事以外の生活の過ごし方が全然違う。
私みたいな独身者は、仕事以外の時間は全部自分の時間になるけれど、小さなお子さんがいる方はお子さん中心の生活になる。
いろいろな人たちがいる会社の中で、同じようにバランスを取りなさいって、難しい。バランスを取ろうとして、どれだけ重りをつけたりしなくちゃいけないのか、負担を強いられてしまうのかわからない。
働き方改革だ、ワークライフバランスだと、強引に勧めていくと、結局負担を負う人たちが増えてしまう。
実際、会社を強制的に出されても、終わらないからと家に仕事を持ち帰る人だっている。生活の中に仕事が蝕んでいってしまうんじゃないだろうか。

ライフの中にワークがある。
なるほど、と感じながらも自分の働き方を考えるとどうなんだろうと思ってしまう。どう働いていくべきか、考えてしまう。

「850連勤目、あるいは850連休目」

好きなことを仕事にすると、毎日が楽しいという。
しかし、それをも上回っている人がいる。
休みがない働き方というのは、どういうものなんだろう。
はたまた、ずっと休みのような日々とはどのようなものなんだろう。

仕事であって、休みでもある毎日。
そんな生き方を目にしているからこそ、残業を……、などということなんかは、正直どうでもよくなってしまう。働き方改革だとかワークライフバランスだとか、本当にどうでもいい。

そんな言葉がなくなるくらい……いや、そんな言葉が気にならなくなるくらいの生き方をしたいと、今、思っている。
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2018-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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