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【R18+】勇気を出してはじめての告白「あなたは何フェチですか?」《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小山 眞司(プロフェショナル・ゼミ)

「何フェチ?」

僕の周囲で男同士の飲み会にて盛り上がる話題の上位にランキングされるトピックである。
簡単に言うと、「女性のどこが好き?」という話題である。
誰にでも1つくらいは「フェチ」と呼ばれるものがあるそうだが、実は僕自身にはこれと言ってピンとくるものがない。
メジャーなところで言うと、脚フェチ、おっぱいフェチ、くびれフェチといったところだろうか。
まぁ、言われて見ればわからなくもないが、フェチと言い切るには、

「他の欠点をカバーするくらいでなければならない」

と言われると自信がない。いくらキレイな脚の持ち主であってもあまりにも性格に難があったりすると確実に二の足を踏む。
要するに僕はフェチに関してはあまり理解出来ないということだ。
ただ、この話題が毎回盛り上がるので、聞き役に徹していつも議論を楽しんできた。
しかし、この「フェチ」の世界、実は奥の深い世界であるようだ。先日ある出来事をきっかけにそのことを知ることとなった。僕が今までいかに「フェチ談義」を浅瀬でしていたのかがわかる。僕達が話していたレベルはまるで他校の卒業アルバムを見ながら「この娘可愛くね?」と言い合っているレベルのものと変わりなかった。
あまりに衝撃を受けたので、この場で是非共有しておこうと思う。
不快に思われそうな方はここで読むことを止めることをおすすめする。だが、少しでも未知の世界に興味があり、覗いてみたいと思われるなら是非読み進めて欲しい。ひょっとすると新たな扉を開けることができるかもしれない。

先日、インターネット上で動画を誰でも自由に販売できるシステムを運営している企業の社長から相談を受けた。僕は彼の起業時から手伝ってきたので相談される事自体はよくあることだ。
彼のシステムを使って、セミナー動画やHow To動画など様々な映像コンテンツが販売されているが、誰にでも販売できるシステムであるからには、中にはセクシーなコンテンツを販売されている方もおられる。相談されたのは販売されているセクシーなコンテンツの一つについてだった。そのコンテンツが、いわゆるAVと呼ばれるものであれば彼も相談してこなかっただろう。しかし、事態はそんなに単純なものではなかった。
相談の内容は「最近売れている作品が理解できない」ということだった。その映像はいわゆる「フェチの世界」と呼ばれるもので、社長はもちろんのこと、僕自信も全く理解できないモノだった。

聞くと、どうやらここ最近「フェチ」と呼ばれるジャンルの作品が売れているらしい。最初は「ま、世の中にはマニアックな嗜好の持ち主がいるから良いんじゃない?」とアドバイスするつもりで彼の言う作品を見てみることにした。
「フェチ動画」と聞いて、どうせ脚やお尻ばかりが映っている類の映像作品であろうと思っていたが、初めて目にした世界はそんな次元のものではなかった。
目に飛び込んできた内容は「ジオラマで作られた町並みを女性が踏み潰していく」だけのものだった。映っているのは壊れていく町並みと踏み潰す女性の足元だけで、女性の顔や体など一切映っていない。見終わった僕は思わず「えっ? どういうこと?」と聞いた。社長曰く、このコンテンツが日本だけでなく海外からも注文が入っているらしい。ますますわからなくなってきた。

「えーっと、これは、特撮好きな人に売れてるんじゃないの?」
「俺も最初はそう思ったけど、違うみたい。れっきとした成人コンテンツらしい」

いよいよもって複雑になってきた。どういう嗜好なのかさっぱりわからない。
性的な描写は全くない。僕からすれば、ウルトラマンの戦闘シーンを見ているのと同じ感覚だ。
とにかくこのコンテンツが売れだしたことをきっかけに、他にも理解できないジャンルの動画が増えてきて、それらが軒並み売上を伸ばしている。
僕からすれば、もはやアート作品や特撮作品に思えるが、制作者たちはこれらを「成人コンテンツ」として扱って欲しいと言っているのでどうすれば良いか、という相談だった。わからないことを考えていてもしかたないので、真相を理解するために制作者を集めて一度話を聞いてみようということになった。

僕からすれば全て前衛的なアートに思える作品の制作者が一同に集まったその場で聞かされた話は、耳を疑うような別次元の話ばかりだった。
僕が着いたテーブルにいた映像監督が一枚の写真を見せてきた。
プールの水底で体育座りをしている「OLらしき制服」を着た女性が映っていた。
その画像を見た僕はわけがわからず、
「……、はい……」
というしかなかった。すると監督が
「どうです? 良いでしょ?」と分かって当然のようなノリで聞いてきた。
いやね、監督、良いも悪いも、それ以前に意味がわからないです。
僕は思い切って
「あのぉ、これはアートとして撮影されてます? それとも……」
と聞いてみると、
「もちろん後者ですね」
1ミリも理解できなかった。単に服を着た女性がプールに潜っているだけで、そこには裸が映っているわけでもなければ、その女性がお世辞にもデザイン性が高いというわけでもなかった。なのに???
とまどう僕に監督は考えを整理する時間も与えてくれず、続けて
「この写真とこの写真、どっちが良いと思います?」
と2枚の写真を見せてきた。そこには先程と同じ女性が同じくスーツ姿で、今度はプールサイドにずぶ濡れで座っていた。見せられた2枚の写真はほとんど同じポーズで、どっちが良いかという監督の問いは、もはや間違い探しクイズだった。それほどその2枚は同じ写真に見えた。厳密に言えば、指先の形とか脚の組具合とかが微妙に違うようには見えるが、どちらが良いかの判断できるほどの違いではない。
せめて表情が違うのかと思ったが、僕には大差ないように思えた。僕は思わず
「これって何が違うんですか?」
と聞いた。すると監督は笑いながら
「もう、やだなぁ。ここですよ、ここ」
と写真の女性の襟元を指差した。1枚は上着からワイシャツの右衿が出ていて、もう一枚は左側の衿が出ていた。言われてみて違うところはわかったが、僕はもう一度聞いた。
「これって何が違うんですか?」
すると監督は
「これね、右の衿が出てる方が断然売れるんですよ」
はい、もう無理です。ついていけません。正直言いますよ。右の衿がでてようが、左の衿がでてようが、誤差の範囲です。ぼくは、せめて下着が透けてるとかくらいはないと、全く性的な魅力を見いだせません。
さらに衝撃的だったのは、
「透けたり脱がれた時点で魅力がなくなるんだよ」
と監督が自信満々に言ったことだ。
はい、さらにわかりません。普通はそこからがスタートなはずです。
僕が途方に暮れて隣のテーブルに目をやると、
遠い目をしながら「腹パンチフェチ」の話を聞いている社長がいた。
彼の気持ちが手に取るようにわかった。そして理解できないのは僕一人じゃないんだ、と思えて安心した。

嗜好は全く理解できなかったが、どうしてこの性癖に至ったのかに興味が湧いたので、聞いてみた。
小さい頃から雨の日とかにずぶ濡れで歩いている人を見ると、何故か胸がドキドキしていたらしい。ただ、その時はそのドキドキが何かは理解していなかったと監督は言った。そして時は流れ、思春期になると、他の男子と同じように、いわゆるAVを見たりはしてみたらしいが、全く興味がわかなかった。
自分はおかしいのではないか、と誰にも言えず悩む日々が続いたらしい。
そして悩んだ結果たどり着いたのがびしょ濡れのシーンだという。
なるほど。ただ僕の疑問は「そんな映像あったんですか?」ということ。尋ねてみると監督が当時の苦労を話してくれた。
「テレビドラマとかで雨のシーンあるでしょ? そういうシーンばかりを集めて自分で編集してたんだ」

なるほどと思った僕は、最後の核心をつくつもりで質問した。

「どうやってカミングアウトしたんですか?」

監督曰く、最初はやはり誰にも言えず隠していたらしい。ところがある日、ネット上で自分の撮影した画像をアップしてみると、アクセスが来るわ来るわ。監督は、これによって世の中に自分と同じ嗜好の人がいると知り、胸を張って生きられるようになったらしい。情報交換のためのオフ会などを開催するごとにメンバーがどんどん増えていった。ただ、彼らの求める映像はまだあまり存在しなかった。そこで、監督が自分と同じ組合の人たちを救うために、自ら制作するようになったらしい。彼は人助けのつもりでいるようだ。
成人コーナーで販売されてはいるが、彼のコンテンツにはモザイク処理や裸など性的な描写は一切ない。
「普通のコーナーで販売されたほうがより多くの人の目について売れるんじゃないですか?」
と提案してみると、
「いや、買う方は性的欲求を満たすために探しているので、成人コーナーから探すんですよ」
そうだった。僕のような平凡な嗜好の持ち主の価値観で判断してはいけなかった。何度も言うが、ぼくには単なる「アート作品」にしか見えない彼の作品は組合の人たちにとってはれっきとしたAVのようだ。見る角度を少し変えるだけでこんなにも受け取り方が違うのだと改めて知った。アートとエロスは紙一重なんだと知った。

他にも色んな嗜好の監督たちが集まって話している内容はことごとく理解できないものばかりだった。
わかったのは、今や嗜好は細分化されているということだ。そしてインターネットによって細分化されたコンテンツが入手できるようになり、一点突破の尖ったコンテンツの需要が高まっているらしい。一昔前と違い、好きな情報だけを入手できるようになってきたからだろう。
もう一つわかったことは、僕が理解できないものが売れる時代だということだった。つくづく自分の平凡さに愛想が尽きた。

では、このフェチの世界、果たして男性だけのものだろうか?
男性がパーツにこだわりだして「フェチ」という言葉が市民権を得たのはごく最近の話である。ところが思い返せば「フェチ」という言葉が普及するはるか前から女性は好みのこだわりについて話していなかっただろうか?
「お尻の形が好き」とか、
「太い二の腕が好き」とか
「広い背中が好き」とか
男が言い出す前から女性たちはすでに言っていたように思う。
しぐさについても女性はこだわりが強かった。

「車をバックさせる時のシートに手をかけて後ろを振り返るしぐさにキュンとしてしまう」
「仕事終わりにふとネクタイを緩める仕草が好き」
「壁ドンされてキュンキュンする」
「頭ポンポンってされたらキュン死にしちゃう」

わかってますよ。福士蒼汰がこれらをするから女性の心を撃ち抜けるのであって、僕がやったところで逆効果なことくらい。
このように、男性が騒ぎ出す遥か以前から女性はもう気づいていたのである。
「フェチ」の世界の存在に。
ところが、である。女性向けのフェチ映像はほぼ存在していない。近いのはせいぜい宅配便のドライバー達のカレンダーくらいである。
女性をターゲットにしたフェチ映像を売り出せばヒットの可能性がある気がする。
あまり人には言ってないけど、実は自分だけと思っている「フェチ」はお持ちじゃないだろうか? 同じ趣味の方は必ず世界中に大勢いる。広大なマーケットがそこにある。
あぁ、僕がこんなに平凡な感覚しかもたない人間じゃなかったら、必ず作るのに。アートとして。
***

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2018-05-09 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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