「おたく」と「ヲタ」の違いから読み解く小さなお店必勝法
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:足立明弘(ライティング・ゼミ日曜コース)
「私アニヲタなんです」
「えっ君がアニヲタ?」
20代前半の彼女の容姿は一般的には美人と言われる部類で学年でも上位に入るレベルである。学校ではさぞかしモテたことだろう。表現がポリティカルにインコレクトなのは許して欲しい。しかし、こんなきれいな女性が「おたく」だって?
我々30代も後半に差し掛かった私のような人間にとっての「おたく」は、チェックのシャツをズボンにインし、頭にはバンダナ、穴開きグローブにリュックサック。
前述したようなきれい目の女性とは対極にある存在である。
彼女は確かにアニヲタというだけあって、なかなかの知識量であった。しかし、よくよく聞いてみると、私が知っている「おたく」からすれば「病的な執念深さ」が無いようにも感じられる。
私にとっての「おたく」といえば対象に極めて執念深く、周辺知識をあまねく詰め込み、それを聞いてもいないのにマシンガンのようにまくしたてるという存在だ。
私もミリタリー方面には多少心得があるが、本職のミリヲタに捕まれば瞬殺されてしまうレベルなのでとてもじゃないが「おたく」を自称できない。
しかし彼女は楽しそうに自分の好きなアニメについて語っている。しかしその語り口はいたってソフトだ。私から見たら「おたく」というより多少熱心なカジュアルファンと言ってもいい。
つまりこういうことだ。最近の若者はある対象に多少熱心に取り組むカジュアルなファンまでもを「ヲタ」と称しているのだ。こういう「ヲタ」は自分の観測範囲だけでもかなり増えてると思う。
もちろん熱心さの度合いは人によって違う。こういうカジュアルなファンから、かつての「おたく」を彷彿とさせる狂信的なのもいるだろう。しかし、それをすべて包みこむ言葉が「ヲタ」なのだ。
なぜ「ヲタ」が増えたのか。それはやはりスマホ社会を抜きに語ることは出来ないだろう。スマートフォンの普及により人はカジュアルに情報に接することができるようになった。
スマホユーザーはちょっとでも気になったものがあればすぐにググったり、Twitterでタイムラインを検索したりする。私もそうしてる。
カジュアルに情報を仕入れることができるようになれば、その対象に対してただ消費するだけではない、より深い関わりを持った感じがする。それが繰り返されれば対象が愛着のあるものに変わり、熱心なファンになる。そしていずれはそれを伝道しはじめるのだ。モノが溢れかえった現代社会に出現した新しい消費の形である。
さらに言えばかつての「おたく」が対象の知識を貯め込む、増やすことで対象を「愛でる」ことを重視していた事に対し、「ヲタ」は対象を「体験」するということを重視している様に思える。
ドルヲタであればライブに熱心に通い、アニヲタであればアニメの舞台となった地方を訪れる「聖地巡礼」に行く。
サンプル数が少なくて恐縮だが、私がここ数年会った若者の多くがこういう「ヲタ」気質を持っていた。対象を消費するだけではない、もっと深く知りたい、もっと関わり合いたいという欲求である。熱心に取り組むべき対象だと思えば、驚くようなお金の使い方をする。
「なんでもいいから少しでも安く、多く」という消費行動を取る中高年層とは大きく違うのだ。
こういう消費行動の変化を我々中小企業経営者はどう捉えるべきだろうか。
当社は地元では名産の「いきなり団子」というお菓子を扱っているのだが、当社だけの独占販売ではない。誰が作ってもいいお菓子だ。もちろん競合も多い。
もっと言えば、「甘い物」というカテゴリであればケーキから上生菓子、コンビニで売ってるスナックだって我々の競合である。
我々菓子製造業者が忘れてはいけないことは、そのお菓子は食べる人にとって「代替不可能」な「唯一無二」の価値があるものでなければならないということだ。
ちなみにここで「技術的に最高に美味しい」というのはその価値の一部でしか無いことをあらかじめ言っておきたい。
私の好きなあるラーメンマンガに「客はラーメンを食ってるのではない、情報を食っているのだ」という一節がある。
これはそのマンガの敵役から発せられた言葉だが、Twitterでもたまにバズるように、人々の琴線に触れる含蓄のある言葉だと思う。
人々はそのお菓子を食べてるのではない、そのお菓子が持つ「歴史」や「エピソード」、「売ってくれた人の接客」や「お店の雰囲気」という「情報」を食べているのだ。美味しさは大前提とはいえ、その情報の一部に過ぎない。
その商品にまつわる「唯一無二で代替不可能な」情報こそが消費者にとって最大の価値であり、その商品を買う理由になるのだ。
これからの中小企業経営者はこういう新世代の消費者に寄り添うような情報発信を行う必要がある。
Twitterでもいい、Instagramでもいい。Facebookを利用するのいいだろう。
「今日は柏餅をつくります。柏餅って僕らの地元ではこしあんなんですが、関東では味噌餡とかも使うんですよね!びっくり!」
「今日は元スタッフさんが差し入れ持って遊びに来てくれました!仕事忙しそうですが、こうやってたまに帰ってきてもらえると嬉しいですね」
こんな他愛もない日常風景の投稿をみると、商品や作り手が身近に感じられるのではないだろうか?
積極的に情報を発信し、情報を受け取ってくれた消費者とお店のスタッフが交流する。消費者はもっとそのお店のことを知りたくなる、知れば愛着が深まり応援したくなる、誰かに伝えたくなる。
無理にマスメディアに広告を打たなくても、毎日地道に情報を発信し続ければいつの間にかそのお店の「ヲタ」と化した消費者がどんどん宣伝してくれるようになる。
その「ヲタ」たちはあなたのお店の最大の資産になる。
モノが溢れた時代にいかにモノを売るか。それは積極的な情報発信にかかっているのだ。
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