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「東京レインボープライド」のパレードに参加してみた。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:近藤頌(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
ああ、なんだか憂鬱だな。
 
朝5時。目が覚めての正直な感想だった。
不安でうまく眠ることもできず、ぼんやりした中で身支度を整える。
 
本当に行って大丈夫なんだろうか。
しかも一人で。
 
今回行こうとしているのは毎年ゴールデンウィークに東京で開催されるセクシャルマイノリティー(性的少数者)の祭典。
『東京レインボープライド』である。
そしてその祭典の中心となる行事が「プライドパレード」と呼ばれる、いわゆる行列を作って街中をただただ歩くというものであった。
 
開催地は代々木公園イベント広場。
歩くコースは、代々木公園から渋谷、原宿という街のど真ん中の車道を一車線を貸し切ってのものだった。
距離にして2.5キロメートル。
 
どうしてぼくは、参加したいと思ったんだっけかな。
なんて若干後悔じみた思念が湧いてくるのを必死に抑えながら、家を後にした。
 
事は1週間前。
Facebookを見ていたらとある投稿が流れてきた。
【ボランティアを今年も募集します】
読むと、パレードの先頭を走るフロート(軽トラックの荷台にステージを仮設したもの)の装飾を手伝って欲しいとの内容が、以前セクシャルマイノリティーの勉強会で知り合った人から、通達されてきたのだった。
 
実は、ぼくはセクシャルマイノリティーの当事者である。
一年前。セクシャルマイノリティーの勉強会に参加して、こういった祭典、催し物、パレードがあることも意識はしていた。
いいなあ、参加できたら。
とは思っていた。
去年もこのパレードは開催されていて、参加しようと思えばできる環境にぼくはあった。それなのに参加しなかった理由は身元がバレる心配がひとつにはあった。当事者であるにはあるが、それを表立ってオープンにしているわけではないので、なんだか参加することに気が引けていたのだ。
これに出ると、自分が当事者だとバレてしまうのではないか、と。
だれにバレるのを恐れているのかさっぱりわかってはいないのだが、そういう漠然とした恐怖、圧力を感じていたのである。
 
そしてこの他にももうひとつの理由が。
それは、ぼくには一緒に行けるパートナーがいないということであった。
こういうお祭りは、やっぱり一人で行くのにはハードルが高い。
ただの花火大会ですらぼくは家族や友人と行くから行くのに、一人でなんてとんでもなかった。
きっと行けば行ったで楽しいは楽しいだろう。
けれどふと周りを見渡した時の孤独に、ぼくは耐えられる気がしなかった。
周りでは、ここぞとばかりに自分をオープンにし、その人にとって大切なだれかと共に笑いあっている。当事者も当事者に理解を示してくれている人も一人ではなく、だれかと共に満足げな表情を浮かべている。
 
羨ましい。羨ましすぎる。
 
この感情はちょっと危ないと思った。
ほんのちょっと想像しただけで身が裂かれそうだ。
こんな感情を抱えたまま現場に行ったら、いつしかぼくは泣きべそをかいて迷子になった子のようにうろうろさまように違いない。
そんなことを直感したため、去年は参加しなかったのだった。
 
しかし、今年。
このボランティア募集の投稿が目に入って、反射的にチャンスだと思った。
ボランティアという名目を手に入れられれば、「一人」ということを気にしなくてよくなる。さらにボランティアとして参加すれば新たな出会いが生まれることも容易に想像できた。しかも装飾した流れでパレードにも参加できて、そしてその後もそのメンバーと屋台やら展示やらを回れるのではないか、と。
 
いいこと尽くめではないか!
 
唯一気がかりだったのは朝が早いということ。
朝に弱いんだな、ぼくは。
しかしそこはどうとでもなると思い切り、身元がバレる心配もこの頃には友人や家族にもう打ち明けていたため特になく、バレるならバレちまえとさえ思っていたので、ボランティアに参加したいとの意思表明を遂げたのだった。
 
なのに。なのに、前日あたりからなぜだか不安がよぎり始めたのだった。
仲良くなりたいのにうまく話せるだろうか、とか。
ハブられたりしないだろうか、とか。
パレードで変な人に絡まれないだろうか、とか。
生卵とかゴミとか投げつけられたりしないだろうか、とか。
 
パレードを歩き終えた今となってみると、これらの憂鬱要素は皆無であった。
 
ボランティア人員の朝からの参加者は、ぼくを含め5人だったが、時間が経つにつれ増えていった。みなさん優しい人たちばかりで、ぼくと同じく今回初めて参加するという人も3人いて和気あいあいとしたムードで過ごせた。
肝心のパレードも何事もなく歩き通せた。
むしろ、コース沿いにある企業、各種店舗の応援メッセージはもちろんのこと、沿道にいるたくさんの人たちの眼差しの、まあなんと暖かいこと。
 
これは、この感激はなんといっていいのかわからない。
あえていうなれば、誕生日で味わう以上の祝福感。
生まれてきてよかったんだと、当事者だろうが、当事者じゃなかろうが、だれもが生まれてきたことを肯定してもらえる。今まで味わうことのなかった、あふれ出ている喜びの波間に飛び込んだ感覚。
ただ歩くだけなのに、とても特別な感情をもらえた気がした。
 
パレードは当事者であるないに関わらず、歩きたい人は歩けることになっている。
今回ぼくはボランティアとして参加したために、パレードを歩くための本来踏むべき手続きをすっ飛ばしていたようだった。
本来であれば、前日または当日の指定された時間までに、パレード受付ブースで直接チケットをもらう必要があるとのこと。
パレードには色々な企業や団体が参加しており、今年は37グループだった。
それらどこかの企業団体の列に加わるもよし。特にグループに所属しないという列もあるのでそこに加わってみるもよし。とのこと。
グループの列には定員があるようなので、もし調べて賛同したいグループがあれば早めに受付を済ますように心がけたい。
歩いてみれば、当事者だろうがなかろうが、きっと、喜びを分かち合うことの喜びを体験できるはずである。
 
ぼくは、ただ歩くだけだと思っていた。ただ歩くだけの自己満足。
けれども“ただ歩く”ことがこんなにも素晴らしく思えてくる不思議に打ちのめされた。
また、こんな雰囲気になるまでに一体どれだけの人が地道な努力を続けてきたのだろうかとも思う。
そんな人たちにも感謝して、おこがましくも、守っていきたい行事とも思うようになった。
この祭典。実は東京だけではなく、札幌、大阪、名古屋、福岡、青森、熊本でも時期をずらして開催されているとのこと。
歩かずとも沿道であえて見てみるというのもいいと思う。
そうして手を振るだけでも何かしらの気持ちが共有されるはずだ。
 
「私には関係ない」「俺は近寄りたくない」
そう思うのは仕方のないことだ。
しかしながら“生まれてきてよかったんだ”と感じられる機会というのは生きているなかで本当に少ないと思うし、その機会を否定することは、だれであろうと、あってはならないのではないか、とさえ思うようになった。
大げさに聞こえるが、ぼくはそう感じた。
 
来年、ぼくはまた歩きたいと思っている。
もしよかったら、是非ご一緒に。

 
 
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2018-05-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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