“冊”と“本”でこんなに差が有るとは思ってもみなかった《プロフェッショナル・ゼミ》
*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
記事:山田THX将治(プロフェッショナル・ゼミ)
今年の4月24日、天狼院の三浦店主が肝いりで開店したのが、東京の池袋駅に直結した“天狼院STYLE for Biz”だ。
アイコンとなるポスターの写真も格好良いが、その店内の格好良さといったら、他の書店は勿論、既存の天狼院各店にも見ることが出来ないものだ。
特にレジカウンター脇の一角が、通称で“ゴッド・ファーザーズ・ルーム”と名付けられている。三浦店主が、事有る毎に例えるフランシス・F・コッポラ監督のアカデミー賞作品に由来するものだ。こちらは、従来の天狼院には見られない‘重厚’なソファが備え付けてある。本を選ぶ間なら、読書をしても構わないそうだ。
店のコンセプトとしては、ビジネス書に特化した店舗だ。
そんな“天狼院STYLE for Biz”に出向いてみて、改めて‘そだった、天狼院は書店だったんだなぁ’等と妙な感心をしてしまった。失礼極まりない事だが。
三浦店主を始めスタッフの皆さんは、天狼院を紹介するとき必ず
「天狼院は‘READING LIFE’の提供をしています」
と言われる。本の先にある世界を、本と共に我々ユーザーに届けてくれるのだ。
誠に有り難いとしか言い様がない。
そんな‘READING LIFE’の主な活動と言えば、数々打ち出される‘ゼミ’や‘イベント’だ。私も、時間が許す限り出席する様にしている。
時には、開催の場所が京都だったり福岡だったりして、物理的に行くことが出来ない‘イベント’が有る。また、4拠点も有する東京では、同日同時に複数の‘イベント’が開催されたりするので、ヤキモキすることもまま有ったりする。
しかし、こうした天狼院の‘READING LIFE’の提供によって、充実した時間を過ごさせて頂けるので、私にとっては感謝の念に絶えない。事実こうして、苦も無く‘記事’を書くことが出来る様になったのも、“天狼院 ライティング・ゼミ”のお蔭だからだ。書いたものの、良・劣は別として。
開店した“天狼院STYLE for Biz”では、“ゴッド・ファーザーズ・ルーム”を利用した、ビジネス書に特化した読書会が開催されている。他店舗で行われる“ファナティック読書会”とは一線を画していて、“流石”と言える企画だと思う。 その上、“天狼院STYLE for Biz”に於いては、やはりビジネスに特化したイベントも行われる。そう聞いた時私は、書店らしく店内中に設置された‘書棚’を見て‘どうやって、イベントを開催するのだろう?’といぶかしく思った。 店長を勤める木村さんによると、‘書棚’は全てキャスター付きで可動式に成っていて、移動すれば2・30人は座ることが出来る空間が現れるという。実際、店内の天井には、プロジェクターが常設されていた。ここも、他の店舗の様にポータブルタイプをいちいち設置するよりも格好が良い。 “天狼院STYLE for Biz”でのイベントが楽しみになった。
先日のこと、“天狼院STYLE for Biz”で初の興行として、‘定年後不安を解消する’と題するイベントが有った。いかにもビジネス書に特化した、この店らしい店長肝いりの企画と思って早速参加してみた。
イベントの内容としては、‘人生100年時代’をどう生き抜くかが主題だった。副業解禁や定年延長といった、この時代ならではのキーワードが頻繁に出て来る、時流に添った熱のこもったものだった。
特に私の様な、定年退職に縁が無い生活をしている者(自営業なので)にも、この先何歳まで稼ぎ、老後に備えるべきかが手に取る様に理解出来る講義だった。
少々ショックだったのは、講師の男性が私と同級生の同い年だったことだ。これまで天狼院のイベントで登壇する講師の経歴等、気にしたことは無かった。何故なら、講師の殆どが私より数段若い方が多かったからだ。これは、新機軸を打ち出すことを得意とする天狼院ならではのことで、新しい発想なら私の様な年齢の者ではなく、若い方々の得意分野だからだ。
勿論、中には吉祥寺“小ざさ”の稲垣さんの様に、功成り名を遂げた高齢の方もいらっしゃったが、これは例外中の例外だ。
年齢の離れた方なら、その経歴など気にはならない。生きてきた時代が違うし、価値観も違うからだ。ところがひとたび、講師が同級生となれば話は違ってくる。同じ時代を、私と同じ目線で生きてきた筈だからだ。当然、似たような価値観を持っていると思われる方が、‘何を考え’‘何をして’今こうして私の前に登壇しているのかは、気にするなと云う方が無理というものだろう。
この日の講師の男性は大学を卒業した後、大手長期信用銀行に職を得たそうだ。私達が大学を卒業した頃は、こうした金融関係の職に就く為には、一部の国立大学、当時存在した‘国立一期校’(東京大学・京都大学・一橋大学等)を卒業するか、私大なら‘主席クラス’の成績を修めないと就職することが出来なかった。当時は現代よりずっと、“学歴社会”だったからだ。ということは、私大卒のこの講師は、相当優秀な成績を修めた筈だ。私の様な、遊んでばかりでほとんど授業にも出ず‘モラトリアム生活’を送って来た者にとっては、尊敬に値する存在の筈だ。
当人からは
「銀行員の常ですが‘出向’でいくつかの会社で従事しました」
「55歳で早期退職したのも、銀行に勤める者としてよくあることです」
と、手短に自分の経歴を語ってくれた。
今では、定年後のビジネスマン人生を見据えた書籍を出版する迄に為っていらっしゃる。学生さんや若い方も、御手本にして頂きたい経歴である。
講義の後、短い時間であったがディスカッションと質疑応答が有った。私は、講義の中で御聞きした‘年間300冊、これまでのビジネスマン人生で10,000冊’を超えるビジネス書を読んだという講師の、読書術について質問した。
「どうやったら、一日あたり一冊もの本が読めるのですか?」
純粋な疑問だった。
私も本を読むのは決して遅い方ではない。むしろ早い方だ。特にビジネス書の様なノンフィクション物は、小説に比べて格段に速く読む自信が有る。しかし、それでも一冊読み切るまでに、3・4日は掛かってしまう。一週間でせいぜい2冊が限度だ。
先日も、感想文を書く為に550頁超のビジネス書を読むのに、4日掛かってしまい、感想文を書く時間を絞り出すのに苦労した位だ。
また、大変読み易かった三浦店主の著作『殺し屋のマーケティング』も、2日では読み切ることが出来なかった。
「一日の中で、空いた時間は全てビジネス世を読む様にしています」
「細切れでも構わないので、兎に角、本を読む習慣が大切です」
「ビジネス書は知識(内容)が蓄積するので、1,000冊を超えると、かなりの加速が付きます」
「読書にストレスを感じないことが肝心です」
多分、私と同じ質問をよく受けるのだろう、講師は‘立て板に水’の如く、滑らかに答えてくれた。
「御丁寧に有難う御座います」
私は応えて着席したが、腹の中では違うことを思っていた。
一つには、以前、三浦店主から受けた“リーディング・ゼミ”の中で、
‘本は徹底的に熟読し読みつぶせ’
‘本の内容を信じ込め’
‘読書に集中せよ’
と教えられたからだ。講師の教えは、三浦店主のそれとは真逆に感じられた。私は天狼院の常連として、やはり三浦店主の教えに従うことにする。これから先に、長いビジネスマン人生が有る訳では無いので、これから10,000冊も読む必要も無いとも感じられたからだ。
もう一つは、同い年の男に出来たことが、私に出来ないのが少々悔しかったからでもある。自分の‘怠惰’を棚に上げるが、年に300冊・今までに10,000冊、本を読んだ講師に対抗出来ることが何か無いかと考えていたのだ。
読書にストレスを感じてしまう私にも、強いて云えば他人(ひと)より‘ノンストレス’で行うことが出来たものが有る。
私は無類の映画フリークなので、映画観賞に殆どストレスを感じたことは無い。たまに忙しくしていて、観賞券を買って置いた映画が危うく終映しそうになり、急いで映画館に駆け付ける時は、少しだけストレスが掛かるが、普段は全くストレスを感じない。むしろ映画を観ることによって、ストレスを解消していると胸を張って言い切ることが出来る。しかも、年間に200~300本は映画を観る私は、今迄に楽に10,000本を超す映画を観て来ただろう。
少しは心に余裕が出てきた感じがした。
そうなると、同級生で同い年の講師と私の現在に於ける立場の違いは、‘本10,000冊’と‘映画10,000本’の差ではないのかと思えてきた。
これは、“冊”と“本”にこれ程の差が生じるということだ。
“冊”と“本”の差が、‘講師’と‘観衆’・‘著者’と‘読者’といった違いになって表れているとしたら、もう取り返せないとは知りつつ、若い頃にもっと勉強しておけばよかったと後悔してしまうのだった。
イベントの中で講師も言っていたが、日本人はこれから‘人生100年時代’になるという。私も講師も、まだ40年以上の人生が残っている。
改めて本を読み、学び続けようと決心した。
そうすればもしかして、私もいつかこの講師の様に、いくつかの著作を出すことが出来るかも知れない。
そこまで粘ろう。粘るのは得意だ。
勝負が決まるのは、ゴールテープを切る時だ。
まだまだ、粘るには時間が十分に有る。
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