習う事
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:きくち ともこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「それで、タブレットを買ったら一体どんなメリットがあるんですか?」
シニア向けにタブレットの操作を教える体験講座に参加した男性からの質問だ。
タブレットの使い方を覚えたい人が参加するものだと思い込んでいた私は、その質問に面食らってしまった。メリット、って。
リンゴのマークがあまりに有名なそのタブレットは、所有できるだけでちょっと誇らしい、心躍る道具だと思う。今やスマホに加えてタブレットで動画や画像を撮る姿も珍しくない。年齢が進むにつれ、スマホの小さい画面で苦労する操作も、タブレットなら楽勝だ。
写真もビデオも撮れる。そのままタブレットの画面で見ることができる。
メールができる。SNSもできる。ネットもできる。
文章も書ける。絵も描ける。アプリを入れればなんだってできる。
しかも持ち運びに便利。
私個人でいえば何台あってもうれしい!
けれど男性は、パソコンやビデオがあればどれもできることばかりなのに、わざわざタブレットを購入するメリットはなんなのか、と疑問なようだ。
「どうしてもメリットを感じないなら、買う必要はないかもしれません」
少しだけ意地悪な気持ちがわいてきて、男性にそう言ってみたかった。
でも私はそのタブレット体験講座のインストラクターだ。
その自分の気持ちをぶつけるわけにもいかず、一台で全部できるのはやはり便利ですよ、とか、カメラの性能が、とか当たり障りのない答えを返した。
「講座に入って、実際にタブレットを試されてはいかがでしょうか。良さがわかるかもしれません。買うのはそれからでもいいと思いますよ!」
そう言って、体験講座を締めくくった。
メリットなんて言うくらいだ。男性はタブレットを買わないだろうし受講もないだろう。
そうでなくても体験講座には色々な人が来る。
最初から冷やかしの場合も多いので、しつこく受講を勧めたりはしていなかった。
ところがその男性、短期講座を受講するという。驚いた。
しかも個別レッスンをご希望だ。
楽しくレッスンできるよう色々内容を考えた。
ところが。
ゴルフをする、というのでスイングの様子を撮影するのもいいですね、と言ってみると
「そんな大きなタブレットをゴルフ場に持ち込んで撮影するなんて、おかしい。できない」
という。
受講中、ずっとそんな感じだった。
まるで「タブレットなんて所有する意味がない」ことを確認するためのレッスンみたいで気が重く、予定の期間が終了すると私は正直ほっとした。
タブレットの魅力を伝えることはできず、結局タブレットを買うことはなかった。
インストラクターとしては残念なはずだけど終わってとにかくほっとした。
しばらくしてから、その男性がタブレットを購入したと聞いた。
また驚かされた。
講座は終わっていたのに「買いました」と教室に連絡があったのだそうだ。
どうやらレッスンは無駄じゃなかったらしい。
そう思うとなんだか気が抜けた。
こういうケースは少し特別で、家族に頼らず自力でネットショッピングをしたいとか、タブレットの大きな画面で写真やビデオを楽しみたいとか、受講する動機がはっきりしている方がほとんどだ。
やりたいことがはっきりしている方は習得スピードも速く、どんどん自力でできるようになっていく。
タブレットに魅力されて、という方もいる。
とにかく画面がきれいで惹かれた。どんな使い方ができるか知りたい、と受講を決めた方がいた。
受講を申し込むのと同時に「どうすれば買えるか」聞いて帰った。
初回のレッスンには購入したタブレットをもって現れる。
基本操作を覚えると、メール、ネットショッピング、LINE、と、どんどん進む。
離れて暮らす娘さんや息子さんとやり取りしたいと、特にLINEには熱心だった。
「息子はメールだと返事が来ないのに、LINEなら必ず返事が来るのよ」とか、スタンプや画像を送って「娘に褒められた」と、嬉しそうに顔を輝かせている。
娘さんとテーマパークへ行く、というので「写真はフィルムと違って無駄になることはありません。失敗を気にせず、とにかくバンバン撮ってきてくださいね!」と送り出した。
実際たくさんの画像を撮ってこられて、一枚一枚見せていただいた。
タブレットの画面で見る画像は非常にきれいだ。
改めて、買ってよかったと満足そうにしている。
そして、まだ消していない失敗したという画像を見せてくれた。
「パレードの写真、これしかないのに逆光で顔が黒くなっちゃって。消すときは教室で確認しながらにしようと思って」という。
確かに逆光で顔が見えない。
撮影の仕方、画像の見方は教えたけれど、補正のやり方はまだたったな。
「消さなくても大丈夫ですよ、ちょっと補正してみましょうか」
と明るさを調整してみると、難なく見えなかった顔が現れた。
よかったですね、とタブレットから顔を上げると今まで見たことがないような表情をしていた。
「こんなことができるんですね!」
本当に驚いていた。撮影した画像をすぐに補正ができるなんて知らなかったらしい。
そのパレードで撮った写真はとても大切な一枚だったのだと、申し訳ないほど何度も何度も感謝と驚きの言葉をいただいた。
このささやかな出来事が、実は私が改めて「習う」意味を考えることになるきっかけになった。
できると知らなければ調べようもないし、やりようがない。
誰かに何かを習うというのはそういうことなんだ。
ちょっとネットを調べると色々な情報を得ることができる。
情報を得ては知ったつもりになっていることも沢山ある。
だけど識者に教えてもらわないと気が付かない、分からない大切なことだってあるはずだ。
あの男性受講生だってそうだ。疑問に思いながらも教室にやってきた。
そして何かを得たではないか。
私も何を習ってみたい
顔を輝かせてみたい
あれから、ずっとそう思っていた。
だから天狼院のライティング・ゼミを見かけたときには即断した。
きっと、これからの私にとって大きな学びになる。
だから
どんなに行き詰っても必ず課題は提出する。
没でもいい。絶対書く。
提出課題に「拝見します」のコメントがついた後は、ずっとドキドキしている。
どう評されるのだろう。そして
「面白かったです!」
とコメントが続くのを見ると飛び上がるくらい嬉しくなった。
自分のことでこんなに嬉しいなんていつぶりだろう?
私の顔は、輝いているだろうか。
輝いていると思いたい!
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