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万年一回戦負けの自分が目標を達成出来たわけ。


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記事:石毛大蔵(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
中学から始めた柔道に私は、はまってしまった。
なぜ、柔道を始めたかというと、先輩が面白かった。
ただ、それだけ。
 
「クッシーン! シンキャーク!」
と準備体操が終わってから
中学校の校舎の1周1キロほどだろうか、そのくらいある外周を3周し
そのあとは延々と受け身とエビ、逆エビ、腹ばいという
柔道の基礎運動、これだけを3ヶ月ほど繰り返した。
 
最初は本当につまらなかった。
 
三カ月を過ぎたあたりから柔道の体サバキや技を教えてもらえるようになった。
 
「右手は相手の鎖骨当たりを握り、左手は肘のここね。左足を大きく踏み出し、右足を大きく上げて相手の右足を刈って投げる。これが大外刈」
 
私が最初に教えもらった技は大外刈。
相手を初めて投げた時は自分のバランスが、崩れてしまって不格好だったが
とても感動したのを覚えている。
 
「1、2、3、4、5、~」と受け手が声を出して
その場で相手に技を掛け合う「打ち込み」練習もはじまり
4ヶ月当たりを過ぎると、とても柔道の練習が楽しくなってきた。
 
入部したての時は
「カッコイイーー」と先輩の投げ技を見ていつも思っていた。
特に「内股」
相手の中に飛び込み、足で相手を跳ね上げる技で、金メダリストの井上康生選手が得意だった技だ。
柔道も格闘技の一つだが、技が決まった時って美しいし、本当にカッコイイ!
「自分もあんな技をかけたい!」って思うようになると、早く技を覚えたい! その技で相手を投げたいって思うと毎日の練習が楽しくなってしまった。
そのうち、技を覚えたいから、目標が「試合で勝ちたい!」に変わっていった。
 
「ヤーーーー!!!!」
と相手を得意の大外刈で投げて地区大会を何度も優勝した。
しかし千葉県大会に行くと毎回、一回戦負けだった。
意を決して臨んだ3年生最後の県大会。
最後の大会は団体戦、個人戦ともに県大会に進んだので千葉市の武道館の近くのホテルにメンバーと一緒に宿泊した。
 
気合を入れて臨んだ県大会の一回戦。
その年の入賞者とあたり、ポイントを先に取られて、そのまま何も出来ずに負けてしまった。
 
「くそー、くそー」
と一人でぶつぶつ言いながら
私は観客席に座り、あまりの悔しさに泣いてしまった。
恥ずかしいから誰にも見られないように。
 
私はスポーツ推薦で高校に入学することが出来た。
 
「県大会で優勝する」
これが目標で高校に入学した。
 
三年生が引退すると私も試合に出してもらえるようになってきた。
相変わらず地区大会は勝てるが県大会に出ると一回戦負けだ。
 
三年生が卒業すると転機が突然訪れた。
 
「来週から練習メニューを変える」
と先生が私達に言った。
 
今度はどんな練習になるだろうと緊張していた。
 
「来週から乱取の一時間だけ、みんなでやって、乱取の前後は全部、自分で好きなように練習を決めてよいことにする」
 
「えっ!!! 練習を自分で決めてよい!?」
私はびっくりした。しかし、最高に興奮してきた。
 
中学校から柔道を初めて練習の内容は全部、指導者が決めていた。しかし、来週から自分たちで決めてよいことになった。
 
もう一つ転機がある。
私は筋トレのバイブルを手にしたのだ。その名も
「ハイブリット肉体改造法」船木誠勝著。
 
それを読むと
「ええーーー 俺ってなにも筋トレ知らなかった。」と
ウエイトトレーニングにはまり
 
「筋トレのあとはプ、プ、プロテインを飲む!?」
「食事はブロッコリーと鶏肉のささみ!?」
家に帰ると
「お母さん。この本に書いてあるように、弁当は米と茹でたブロッコリーとササミにして」
昼の弁当も本の通り、変わってしまった。
 
練習は自分で決めたプログラムを実行出来るので
毎日、肉体的にはきつかったけど、楽しくて、楽しくて仕方がなかった。
 
自分の強み、弱点というのは自分自身が良くわかっている。
試合に勝つための仮説を立てて、試合で検証し、練習のプログラム更新していく。
 
試合はというと、相変わらず県大会で一回戦負けだ。
しかし、私には絶対、県大会で優勝出来るという根拠無き自信があった。
それはやはり、自分で考えた厳しい練習プログラムをこなしていたのと
私に勝った相手が、皆、県大会で優勝や入賞をしていたからだ。
 
時は過ぎていき、とうとう最後の県大会になってしまった。
 
試合前「絶対優勝する」と自分に言い聞かせた。
私は一回戦から調子が良かった。
一回戦、2回戦と勝ち上がり準決勝だ。
 
準決勝の相手は名門習志野高校の選手。
試合は中盤までなにもポイントがなかった。
相手が右、私が左、のいわゆるケンカ組手の状態。
私は相手の右腕に上から肘を差し込み、右腕を使えないようにしていた。
体が自然に動いた。
私は相手の股の中に入り左足を跳ね上げた。
 
「やぁぁぁーーーーーーーーー」
と体の芯から声をだした。
 
相手の体が宙に浮き
 
「技ありーーーー」という声が聞こえた。
 
試合が終わるまで攻め続けて準決勝も勝つことが出来た。
 
あと一試合。
試合会場の武道館には6面ほどあるが、決勝だけは
その一つの面だけを使い、軽い階級から順番に行われる。
 
66キロ級が終わり、私の階級73キロ級が始まろうとしてた。
 
「石毛選手!」
私の名前が呼ばれ、開始線の前に立った。
勝っても負けてもこれが高校生最後の柔道の試合だった。
 
礼をして、左足、右足と足を踏み出した。
 
「はじめっ!!」
 
私は相手の両袖を握った。
 
その瞬間、体を相手の下に潜り込ませ、左足の裏で相手の下腹部を蹴って、相手を後ろに巴投げで放り投げた。
「技ありーーー!!!」
技ありを取った瞬間、私は相手の腕を取って肘を伸ばしていた。相手は私の体を叩き、参ったをした。
 
「一本!それまで!」
 
決勝は短時間で終わってしまった。
 
念願の優勝である。
 
なにが一番うれしかったか?
 
優勝したということは、うれしい。
 
でも一番うれしかったのは先生が考えた練習プログラムではなくて
万年一回戦負けの自分が、勝つために仮説を立てて、試合で検証をし、自分自身で作り上げた練習で優勝という目標を達成出来たことがうれしかった。
 
万年一回戦負けを克服出来たのは、人に考えてもらったものではなくて、自分で「考えた」練習を実行したからに他ならない。
 
生徒に練習の内容を考えさせ、実行させてくれた高校時代の柔道部の恩師には、今でも感謝しています。

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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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