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メディアグランプリ

大好きだったバンドの最後の「カレー」を食べたとき、わたしは夢を諦めないと誓った。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:たけしま まりは(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「シャカ~ラビッツ!」パパン パパン パン!
「シャカ~ラビッツ!」パパン パパン パン!
 
2017年11月4日、新木場のライブ会場でファンお決まりのアンコールと拍手が鳴り響く。
わたしは声をあげながら、こみあげるものを抑えることができなかった。
ああ、これが最後なんだ。
わたしの10代を色鮮やかにしてくれた存在が、青春が、いま無くなろうとしている。
この日は、1999年の結成以来18年間走り続けたバンド・SHAKALABBITS(シャカラビッツ)の活動休止ライブだった。
 
シャカラビッツは女性ボーカルのUKI(ウキ)、ギターのTAKE-C(タケシ)、ベースのYOSUKE(ヨースケ)、ドラムのMAH(マー)からなる4人組バンドで、UKIのカラフルなファッションと伸びのある歌声、ほか3人の超絶技巧で繰り出されるリズミカルなメロディが人気で、2002年にメジャーデビューしてから爆発的に売れたバンドだ。
 
当時わたしは中学生で、深夜の音楽番組でシャカラビッツを知り、UKIのファッションセンスに憧れてファンになった。
UKIは今でいうきゃりーぱみゅぱみゅ、ぺこ&りゅうちぇるのようなカラフルなファッションセンスの持ち主で、10代前半の「おしゃれしたいけど、誰を真似すれば良いかわからない」時期のわたしにとって、タイミングよく降臨したカリスマだった。
 
わたしの10代はシャカラビッツと共にあった。UKIのファッションを真似し、シャカラビッツのアルバムをひたすら聴き、曲に酔いしれた。18歳でドラムを始めたきっかけもシャカラビッツだった。ドラムを始めるとMAHのドラムがどれほど「超絶技巧」なのかが分かり、さらにシャカラビッツにのめり込んだ。
 
わたしにとってシャカラビッツは、カレーのような存在だった。
曲作りを担当するUKIとMAHがカレールーで、超絶技巧で彩りを加えるTAKE-CとYOSUKEがカレーの具。ファンであるわたしたちはライスで、好きな時にカレーをかけて楽しむ。シャカラビッツのオリジナルメンバーはUKIとMAHの2人で、メンバー(具)の入れ替えが何度かあったのだが、それでも「シャカラビッツらしさ」が変わらなかったのはカレールーの2人が変わらなかったからだろう。
10代の食べ盛りのわたしは「シャカラビカレー」にハマり、むさぼるように聴き続けた。
 
しかし、カレーを毎日食べると飽きるように、わたしはだんだんシャカラビッツ以外のものを聴くようになった。ドラムをはじめたことでいろんなバンドの曲を聴くようになったことがきっかけだが、シャカラビッツを聴きすぎてマンネリを感じたのも事実だった。
作り手の気持ちなど考えず、カレーに飽きたら別のごはんを食べ、またカレーが食べたくなって「やっぱりこの味!」と噛み締めてまた飽きて、を何度も繰り返した。
 
それからライブにも行かなくなり、あっという間に10年経ってしまった。
「昔ハマったあのカレー屋さん、今月いっぱいで閉店するんだって!」
と言われたら、誰でも「もう一度行こうかな」と思うのではないだろうか。
10年ぶりのライブは、ラストライブになってしまった。
久しぶりのシャカラビッツは、やっぱりすごく美味しかった。
UKIの変わらぬ歌声とパワフルさに脱帽し、3人の超絶技巧を生で聴いて鳥肌が立ち、身体に染み込んだ歌詞を口ずさみ、音にノッて、踊った。
 
この日はラストライブということもあり、メンバー全員が今後についてコメントした。
TAKE-CとYOSUKEは別の仕事で再スタートすると言い、UKIとMAHは音楽を作り続けると言った。シャカラビッツの休止理由は、メンバーの方向性の違いだった。
解散ではなく活動休止と言ったのは、UKIとMAHが「音楽を辞めない」と宣言した気持ちのあらわれかもしれない。わたしは彼らのコメントを聴きながら、作り手として第一線に立ち続けた彼らの苦悩を想像した。
 
シャカラビッツは音楽を自由に作るために自社レーベルを立ち上げたバンドだ。
音楽に対する熱い思いがなければ独立なんて簡単にできるものではない。
もう音楽を作れないと言って脱退したメンバーもいる。そして今回の活動休止の理由も同じようなものかもしれない。
それでも、音楽をやめないと宣言したUKIとMAHの熱い想いは、どれほどのものだったのか……。
 
長いアンコールののち、彼らは再び登場し、ラストアルバムの一曲を披露した。
18年間シャカラビッツはいろんな曲を作り続けていたのだが、この曲にはファンへの感謝の気持ちと「自由に生きていいんだよ」というメッセージが強く込められていた。
 
いま思えば、はっきりと歌詞にしてこなかっただけで、シャカラビッツは音楽やファッション、バンドの世界観を通して18年間ずっと「自由であれ」と表現し続けていた。
そうだ。わたしは「自由」を全力で生きる彼らに強烈に惹かれたんだ。
 
UKIは最後のMCで「シャカラビッツに悔いはない!」と言い切った。
その言葉に、鳥肌が立った。心の底からそう思っていることが伝わった。
そしてわたしも彼らのようにやりたいことを全力でやり切りたい、と心から思った。
 
わたしはこのとき、数年前から心に秘めていたある夢を諦めずにがんばろう、と決意した。
書くことを、仕事にしたい。
食べていけるようになるまで、どのくらいかかるかはわからない。
そもそも自分に向いているのかもわからない。
もしかしたら、書くことが嫌になってしまうかもしれない。
決して楽な道のりではないことは分かっている。
けれど、諦めたくない。わたしも彼らのように全力で、自由に生きてみたい。
 
自由であれ。
シャカラビッツはわたしに大事なことを気づかせてくれた。
それが、よりによってシャカラビッツの最後の日だなんて。
失うものの大きさに今更ながら気づき、わたしは涙が止まらなかった。
 
彼らは最後まで泣かなかった。プロとして、最高の味を提供し続けてライブは終わった。

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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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