fbpx
メディアグランプリ

母のこと、笑えなくなった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:ほさか 梨恵(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
昔、私の母はSMAPの木村拓哉が大好きだった。
テレビ番組でSMAPが出ると、テレビの前に釘付けになり、
「きゃ~~~! キムタク、カッコイイ!」
とよくはしゃいでいた。
ライブに行ったりするほどではなかったので、いわゆる「ミーハー」なファン。
そんな母を横目に見て、私はよく
「お母さん、そんなにキャーキャー言って、超ウケる」
と笑っていた。
あの当時、キムタクはまだ20代か30代の前半だったはず。
母は50歳を超えた、正真正銘のおばさんだ。
天地がひっくり返っても、キムタクと付き合えるはずはないのに、よくまぁそんなにはしゃげるものだと私は思っていた。
 
きっと今の若者にはあまりピンとこないかもしれないけれど、あの当時のSMAPは本当に国民的アイドルだった。
年齢性別問わず魅了していたと言っても過言ではない。
とはいえ、正真正銘のおばさんが自分の子どもくらいの若い男にキャーキャー騒ぐ姿には、正直言って引いてしまう。
母じゃなくても、たまにテレビ番組で追っかけの人たちを見ていると
 
私は大人になっても、そんなキャーキャー言わない。
だって、恥ずかしい姿、他の人に見せたくないしね。
若かりし頃の私は、素直に思っていた。
 
思っていた。そう、過去形だ。
今の私は、あの頃の母と大して変わらない。
違う所と言えば、多少その時の母よりは若いということと、3次元ではなく、2次元にキャーキャー言っていることだ。
母はSMAPの木村拓哉。
私は名探偵コナンの安室透。
 
言い訳するとしたら、今年の4月までは別に安室透のファンでもなければ、名探偵コナン自体も見ていなかった。
たまたま、そうたまたま晩御飯の時に名探偵コナンを見ていたのが、運の尽きだったのだ。
 
その回は、完全オリジナルストーリーで、名探偵コナンには珍しく死人が出ない回だった。
IoT家電にまつわる日常のハプニングをコナンと安室透が解決していくという話。
話の内容自体は、「さすがご長寿番組」といった感じで安定感のある内容だった。
そこで別の番組に切り替えていれば、こんなことにはなっていなかったはずだ。
 
次回予告の後、ゴールデンウィークに始まる映画の宣伝が始まったのだ。
そして最後にコナンが言い放ったのだ。
「今回の話と映画の関係は、ゼロじゃない!」
 
なんだってー!
今回の話がどうこの映画に繋がるんだよ!?
 
えぇ。白状します。
がっちり掴まれました、このハート。
ここまで来たらすべてはコナンの推理通りです。
公開直後に夫と二人で近くの映画館に見に行ってしまいました。
コナンの映画なんか、20年ぶりのはず。
子ども向け映画でしょ……と思っていたら、見に来ている人の8割が大人。
そして、映画が終わった後、私は安室透という一人の男に夢中になってしまいました。
本名は降谷零、公安警察の中でもトップクラスの実力を持つ、褐色金髪の細マッチョ。
黒の組織に潜入し、情報屋バーボンとしても活躍しながら、安室透として私立探偵、喫茶店のアルバイトをするというトリプルフェイス。
もし、あの映画があと30分長かったら、間違いなく鼻血が出るくらい、いい男!
 
その後から、私は夫からも飽きられるくらい寝ても覚めても「安室カッコイイ!!!」「降谷ヤバい!!!」を連呼するようになってしまいました。
Facebookの投稿も、安室透。
Amazonの購入履歴も、安室透。
Twitterのタイムラインも安室透一色。
気づきました。
……母より質が悪いじゃないか。
 
ふと冷静になり、なぜここまで私は安室透にキャーキャー言っているのだろうと分析することにした。
まず安室透は強い。パンチ一つで犯人を気絶させるくらいの実力の持ち主だ。
次に、とても働き者だ。トリプルフェイスをそれぞれ完璧にこなすということは、相当仕事が出来る男なはず。
公安でもトップクラスなのだから、間違いない。
しかもさりげない気遣い屋。相手が気づかないレベルでさりげなく優しさを発揮している。謙遜の姿勢も素晴らしい。
車はマニュアルのスポーツカー。ドライビングテクニックは超人レベル。
私もマニュアル車に乗っているので、よく分かるがやっぱりマニュアル車をカッコよく運転できる人は、それだけでカッコよさ3割増しだ。
そして、自分の彼女はこの国だと断言するくらいまっすぐな気質。
 
書いていて、気づいてしまった。
安室透は、夫とまるで正反対ということに。
 
私は夫という日常から現実逃避していたのか……
もしかして、母が木村拓哉に騒いでいたのも、父という現実から逃避していたのか……
確かに父とキムタクはまったく正反対。
カッコよくもなければ、サーフィンもしない。
趣味はパチンコ、日曜はごろ寝がデフォルト。
 
世の奥様方が夫以外の男性にキャーキャー言うのはこういうことなのか!
結婚3年目にして、私は悟った。
そして、心の中で母に謝った。
「あの時、笑ってごめん。私もお母さんと同じだったわ!」

 
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】
天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。



2018-05-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事