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ライティング・ゼミ事件簿 ~親孝行それとも失望?!~


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:富田裕子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
はー、まただ。しおれてしまった。
 
私はいつもイライラしていた。自分の書いた文章に。
私の心の中にある「伝えたい思い」は、文章という見える形になった途端、ぷすっとしぼみ、色あせる。
「文章うまいね」などと言われた日には、ますますイライラがつのる。
ちがうんです。私が伝えたいのは、こんなしおれた花じゃない。心の中にあるのは、もっとみずみずしく、鮮やかな花なのに。
 
今、普段の生活で、まとまった文章を書くという機会はほとんどない。
クライアントとのメールのやりとり、コンサルの資料作り。どれも簡潔明瞭にまとめることが求められている。図やグラフも入れて視覚でとらえられるようにし、文章はできるだけ短く。
友人などとのやりとりも、ほとんどメールやラインだ。
 
ただ、本当に自分の気持ちを伝えたいときには、手書きで手紙を書く。年に1,2回だが。
お礼状、お悔やみの手紙、勉強会の講師の依頼など。
それが書き上げてみると、実につまらない。淡々とあっさりしすぎている。
なんだこれ。私の気持ち、全然表現できていない。
いつも自分の文章に失望する。
 
そんなとき、Twitterに「ライティング・ゼミ」の広告が。
これって書けるようになるの?
自分が思う通りに、表現できるようになるの?
2時間迷って、えいっと申し込んだ。
自分のイライラをなんとかしたい。ゼミに申し込んだ目的は、それが全てだった。
 
三浦店主の講義は、まさに「目からうろこ」の連続だ。
そうか、プロってこんなことを考えながら、文章を作っているのか。
だが、頭ではわかっても、自分がそれを使いこなすのはとても難しい。
毎週試行錯誤し、苦しみながら、2000字の課題をなんとか書き上げ投稿する。
 
3回目の投稿が、初めてWEB天狼院に掲載された。
自分の書いた文章が、第三者に認められたのは、正直うれしかった。
スタッフのコメントに「ご自身でも拡散してみてくださいね」と書いてある。
え、拡散? だれに?
 
私には、自分の文章をたくさんの人に読んでもらいたいといった欲求がなかった。
ブログもやらない。フェイスブックもなりすまし被害に遭ったので、以降友達申請も一切お断りしている。当然投稿もしない。
自分のイライラ解消が目的で入った「ライティング・ゼミ」なので、ゼミのことを友人や職場の同僚にも話していなかった。
 
なので、初掲載については、家族と妹弟、両親というごく近しい人にだけ伝えることにした。
親にはメールに、URLを貼り付けて送った。
その夜、無事にアクセスできたようで、親から電話が入った。
電話の向こうで、両親はとても喜んでくれている。父はほろ酔いだったような。
ほんのちょっとだけ、親孝行、できたかな。
 
だが、異変は2回目の掲載時に起きる。
掲載について、何度も自慢メールを送られるのはイヤかなと思い、妹弟には知らせず、家族と親だけに「拡散」した。
ところが、真っ先にラインが来たのは、妹からだった。「見たよ~ 良く書けてたね」
母が私からのメールを見て、すぐ妹に電話したらしい。
なんなんだ。この拡散スピードは。
 
数日後、実家に立ち寄った私に、母が言った。
「そうそう、明日お祝いを持って行こうと思ってたんよ」
「え、お祝いって何?」
「あんたの文章が2回も載ったやん。ほんとによかったね。あんたは努力してえらいね」
両親は最大限のほめっぷりだ。
 
いかん、親、なんか勘違いしてる!
 
「あれって、一定レベル以上の文章は、だれでも掲載されるの。毎回何十人も載ってるんだから。私なんか全然大したことなくって、ほんとにうまい人ばっかりなんよ。毎週載っている人もいるんだから」
「ふ~ん。でも、まあいいやん。お祝いなんだから」
「いや、お祝じゃないって。お祝いは何か賞を取ったときにして」
「賞って何?」
「ええっと、芥川賞とか、直木賞とか……ノーベル文学賞とか」
「……まあ、その時はその時でお祝いするから」と母。
「昔、あんた本を出したいって言ってたよね。そのうち文章書いてくれって、依頼とか来るんじゃない?」
だから、そんなレベルじゃないんです。発展途上なんです。
親の妄想を打ち消すのに必死だ。
 
「そういえば、この前Hくんの子どもさんが東京のお土産を持ってきてくれてね」
Hくんは近所の幼なじみで、現在は東京で経済誌の記者をしている。
「お礼にちょっとしたものと、あんたの文章をプリントアウトしたものを持たせたとよ」
 
ひぃ~~、やめてー! 私は絶叫した。
 
自分が想定していない人から文章を読まれるということに、私は慣れていない。しかも、相手はプロだ。もう失神しそう。
(確かに、今はゼミのスタッフの方や何十人もの仲間たちが、私の文章を読んでくれているが、通信受講なので、その実感はないのだ)
掲載は大したことではないこと、他人には勝手に拡散しないことを、親に念押しした。
 
さらに、次の日。
ピンポ~ン。「お祝持ってきたよ~」
母が差し出したのは、なんと祝儀袋!
マジか。お祝いってケーキじゃなかったのか。
私は一体、何を受賞したんだ?
 
 
WEBに文章を載せるというのは、その気になればだれでもできる時代だ。
だが、後期高齢者の親には、びっくりするくらいすごいことに思えたのだろう。
子どものころは、絵画コンクールで入賞したとか、志望校に合格したとか、定期的に親を喜ばせるようなことがあった。
ところが大人になり、私自身が何か賞を取るといったことはなくなり、喜びの対象は孫へと移る。
だからWEB天狼院への掲載は、久しぶりにちょっとした親孝行になるかなと思った。
だが親の喜びはちょっとどころではなく、その妄想は膨らむ一方。これでは、妄想通りにならない娘に、かえって失望するのでは?
 
まあいい。娘がやる気を出して何チャラ賞を受賞する日まで、親には長生きしてもらおう。
当面は初めての熱烈なファンのために、コツコツ「ライティング・ゼミ」で修行に励むことにする。
自信を持って、私の文章を、多くの人に読んでもらえるようになるために。
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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http://tenro-in.com/zemi/54525

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2018-08-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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