プロフェッショナル・ゼミ

呼吸する人と街《プロフェッショナル・ゼミ》


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記事:相澤綾子(プロフェッショナル・ゼミ)
 
世の中には、色んなダイエット手法がある。
食事をりんごに置き換えるりんごダイエットというのもあった。毎日、朝食だけをりんごで置き換えたり、または、2、3日りんごだけで過ごすというものだ。りんごは好きだけれど、飽きてしまいそうだったので、チャレンジしたことはない。
中国製の海藻入りの石鹸で身体を洗うというものもあった。これは、友人がおみやげで会ってきてくれたから、しばらくそれで身体を洗っていたこともある。風呂場に置いておくと、カビが生えているみたいで気持ち悪いと家族には不評だった。
DVDを見ながら運動をして、筋肉をつけながらやせようというのもあった。これはトレーナーのトークがとても面白かったので、私もしばらく継続していた。我ながら身体が引き締まった気がしたけれど、妊娠を機にやめて、産後は復活しなかった。
痩せるためのお茶や、サプリメントなどもいろいろある。
こんな風に色んなダイエットが次々と出てくるのは、飽きてやめてしまったり、成功してもリバウンドしてしまうからなのだろう。そしてまた新しいものに目移りし、「これなら継続できるかな?」と考えて、やり始めるのだ。
 
最近話題になっているのは、糖質をカットするダイエットだろうか。
これは取り組みやすいのか、私の周りでも、成功者が続々と現れている。SNSで体重のグラフを公表したりして、モチベーションを上げている人もいる。グラフを見ると、見事に体重が下がっている。
けれども、そのグラフを見て、この人は、どこまで糖質カットを続けるのだろうかと考えてしまうこともある。余計なお世話と言われそうだが、気になってしまう。目標体重になったら? リバウンドが怖くて、その先もずっと?
ダイエットをする人は、今よりスリムになって、健康的で、美しくなりたい。健康的でかっこよくなりたい。そう考えている。理想の体型をイメージして、ひょっとしたら期限も決めているかもしれない。
そして実際に達成すると、気を抜いてしまうのか、リバウンドしてしまったという声もよくきく。本当はその先もずっと、その体型のままでいられることを目指したいのだと思う。
自分の身体の欲求に応えながら、生活しているだけで、いつも心地よい状態になっているとしたら、どんなにかいいだろう。努力しているわけではなく、結果として、身体のラインがキープされていたとしたらすばらしい。
みんな、いろんなダイエットに取り組む。でも本当は、様々なダイエット手法をチャレンジしてみたいというわけでもないだろう。呼吸するのと同じくらい、意識しないで生活するだけで、理想の身体が手に入ったら、そんなに嬉しいことはない。おいしい食べ物を身体に取り入れ、身体の中を血が巡り、不要なものはきちんと身体の外に出すことができる。眠い時にはすぐに眠れて疲れが取れる。そんな風になれたらすごく幸せだ。
 
人々の集まりも同じなんじゃないか。
誰と誰がメンバー、とがっちり決めるのではなくて、集まりたい人だけが自然に集まる。離れたい時は離れて、近寄りたい時は、いつでも受け入れてもらえる。ルールがあるわけではなくて、それぞれが心地よいと思える行動を起こす。それぞれの個性から生まれた行動の集まりが、グループの中で化学反応を起こして、新しいものを生み出す。その新しい魅力にひかれて、また新しい仲間が増える。離れたい人は、残念だけれど、気持ちよく送り出したい。そして、もし戻ってきたいと考えてくれたら、思い切り歓迎したい。
そんな自由な集まりを作りたいと思って、今職場で、友人と一緒に女子ランチ会を立ち上げている。月に1回、日にちとテーマを決めて集まり、テーマについて一人ずつ発言してもらって、情報共有する。テーマは希望者が設定する。各自弁当を持ってきて、食べながら他の人の話を聞く。それだけのシンプルな集まりだ。もちろんテーマを決めないで、それぞれの近況を報告する時もある。その他にも、読んで感動した本、元気になった本の貸し借りをすることもある。
女子と限定しているのは、私たちの職場は、女性が圧倒的に少数だからだ。職場にいる女性は自分だけ、という人も少なくない。だから女性だけに限定してみた。
10人以上集まったときもあれば、5人くらいになってしまう時もある。必ず来ているのは私と友人だけだけれど、予定さえあえば必ず出席してくれる人もいて嬉しい。
今月は、自分を元気づけてくれる言葉、というのがテーマだった。
それぞれが好きな言葉を紹介したり、自分を元気づけてくれる歌詞の歌を紹介した人もいた。なぜその言葉が好きなのか、理由やきっかけを聞いたり、どう感じたかを話し合う。他の人が好きな言葉も自分にしっくりくれば、自分の好きな言葉になる。私は、参加者の一人がいった「いつも味方だよ」という言葉がすごく素敵だと思った。いつも意識していて、ふとした時に誰かに言ってあげられたら嬉しい。
女子限定というルールはあるけれど、それ以外は自由だ。参加している人の誰かが何かを提案したら、どんどんやってみたい。まだ始めたばかりだから、どんな風になるのかは分からない。でもこのまま続けられたとしたら嬉しい。少なくとも、私はいつも参加すると元気をもらえるから、この場所を大切にしたい。
ただ長く続けるために、無理やりメンバーを集めたりするようなことはしたくない。自然に、結果として、長く続いたとしたら、それほどすばらしいことはないと思う。
 
そして、ひょっとしたら、街も同じなんじゃないかと思っている。
川沿いに田畑が作られ、海辺に港が作られ、自然とその周りに人が集まってきた。人が集まれば商業がさかんになり、さらに人を惹きつける。ほんの数百年前はそんな風だったはずだ。自然にできあがり、維持されることが一番すばらしい。
けれど今は違う。街をどんな風にしたいか計画が立てられる。限られた財源の中で、住む人の安全・安心や、利便性を維持していくためには、人が多くたくさん集まる機能を特定のエリアに集中させようという動きが、どこの自治体でも行われている。さらに今後、人口がどんどん減っていって、働ける世代、生産人口の占める割合がどんどん少なくいきつつある。
第2次ベビーブームのあとに来ると思われていた第3次ベビーブームが来なかった。それまでは、みんなぼんやりと、右肩上がりの成長が続いていくと考えていた。国も県も市も多分経済界も、ずっとそのつもりだった。でも全てが覆された。もうやり直しはできない。人口ピラミッドは既にピラミッドの形をしていない。一人の若者が一人の高齢者を支えなければいけない時代が、あと少しでやってくる。
税収が減り、行政が使える財源がどんどん限定されてきてしまう。投資的な取り組みがどんどんできなくなってしまう。ひょっとしたら、本当に行政でしかできないこと、やるべきことも難しくなってしまうかもしれない。ずっと使ってきた公民館がなくなったり、母校が閉校になったり、交通量の少ない道路が廃止されたり、信号機が故障したら撤去するようになるかもしれない。
市役所の職員として、そういう危機感を日々感じている。今後、どんな風になっていくのだろう。でも毎日できることは、経費節減、財源確保を考えること、そして、ダイエット手法みたいな施策をどう効果的に実現させるか、それしかない。
でも思うのだ。理想なのは、りんごダイエットやサプリや低糖質じゃなくて、本当の意味で健康になることなのだ。
 
私の市でも、特に人口減少が進んでいる地域がある。先日、その地域で、あゆ取り体験と流しそうめんのイベントをやるので、家族で参加してきた。イベントを主催したグループは、ほとんどが地域住民で、70代が大半を占めている。11時頃着いた時には、始まって1時間ほどしか経っていないのに、既に駐車場は満杯で、空くのを待たなければいけないほどだった。
車を停めてからも、あゆ取りコーナーには長蛇の列があった。とんできたトンボに相手してもらったりして時間を過ごした。1時間半くらい待って、ようやくあゆ取りに参加できた。子どもたちは冷たい流れに足を入れて、気持ちいいと叫んだ。エリアを区切ってあゆを網ですくうのだけれど、うまく成功するとおおはしゃぎだった。
その後の流しそうめんも楽しそうにしていて、普段家では考えられないくらいたくさんの量を食べた。何度も「大丈夫?」と訊いてしまったくらいだった。
捕まえた鮎は、塩焼きにしてくれた。ちょうどそうめんに満足した頃に、焼きあがったことを番号で知らせてくれた。主催団体の代表の方だった。多分70代後半だと思う。ひどく暑い日だったのに、元気そうで、笑顔がとても素敵だった。他の人もみんな顔を赤くしながらも、元気に動いていた。絶やすことのないように連続でそうめんを茹でている女性たちも、楽しそうだった。
たくさんの親子連れが集まって、笑い声があちこちで響いていて、それがみんな嬉しかったのではないか。私たちも元気をもらい、多分、地域のお父さん、お母さんたちも元気になったのだと思う。
そこには、風が流れて、新鮮な空気が運ばれてきていた。私たちはみんなその空気を吸い、今日は楽しかった、明日もまた頑張ろうと、自然に思うことができた。
地域の方たちは、ずっとこの地域を守って来てくれた。ひょっとしたら若い頃は、都会に出たいと思った時もあったかもしれない。でも親や先祖のために、地域を守ることで諦めたのかもしれない。仮にそうでなかったとしても、とにかく今、地域のために何かできることはないか、とみんな必死に取り組んでいる。
いつか今みたいなダイエット法じゃなくて、色んな課題を長期的に解決できるようなアイデアを見つけたい。ただそれは、簡単には見つからないだろうし、最後まで見つけることができる自信も正直なところない。
でも、私が今できることは、いつも味方、という気持ちを持つことだけだ。市民に「いつも味方だよ」なんて言えるほど、何かができているわけじゃない。本当の意味では、まだ何一つできていない。とりあえず決められたことをやっていくことしかできない。ただ、みんながどんな風に考えているのかを、必死に理解しながら、やるべきことを探っていきたい。
また月曜日から頑張りたい。
 
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