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メディアグランプリ

ドーピングしたことないでしょ? 意外といいよ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:なかむら(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
こんなこと書いてよいのだろうか。不安でたまらない。
けど、きっと役に立つ人がいると信じて、勇気を出して書いてみる。
 
実は、私、今、ドーピングをしている。
悩みに悩んだ結果、良くないことだとわかっていながら、ドーピングに手を出してしまったのだ。
 
振り返れば、約3ヶ月前。
私のパフォーマンスは、めちゃくちゃ低かった。身体がまったく思い通りに動かず、キレも悪かった。
なぜ、このような状態に陥ってしまったのか。これといった明確な原因はわからなかったが、とにかく調子が悪かった。結果が出なかった。
さらに、結果が出ないという事実を気にしすぎて、ますます悩みが増えていった。
「昔は、できていたのになんで今はこんなことすらできないんだ……」
「今までは、こんなこと何も気にせずにできていたのに……」
悩みは尽きることなく、パフォーマンスだけがどんどん下がっていった。
絵にかいたような負の連鎖だった。私は、もがき苦しみ、迷子になっていた。
 
もちろん、家に帰っても、この悩みが消えることはない。
しかし、私の最大のサポーターである妻に対しては、弱音を吐けてしまう。
「はー、もう俺はダメかもしれない。もう立ち直れないかもしれない」
 
妻は、見るに見かねて、アドバイスをくれた。
「そこまで言うなら、最後にやれるだけのことはやってみたら?」
最初にドーピングをすすめてきたのは妻だった。
 
私は、正直乗り気ではなかった。
しかし、その日のうちに、行動に移した。一刻も早く、この苦しみから抜け出したかったからだ。
ドーピングをしてくれる場所を必死で探した。
スマートフォンを片手に、ドーピングしてくれそうなところを片っ端から検索して、電話をかけていった。
 
緊張を胸に、右手のスマートフォンの発信音が鳴る。
プルルルル。プルルルル。
 
ガチャ。
 
「はい、もしもし」
「あ、もしもし。急で申し訳ないのですが、今日の午後、時間空いていますか?」
「初めての方ですか?」
「はい。初めてです」
「申し訳ありませんが、初めての方は、完全予約制とさせていただいています。今だと、3ヶ月先まで予約がうまっていまして……」
 
勇気をふりしぼって踏み出した一歩は、いきなりつまずいた。
 
すぐに、別のところに電話をかける。
「はい、もしもし」
「あ、急で申し訳ないのですが、今日の午後、時間空いていますか?」
「すみませんが、今日の午後は空いておりません……」
 
そのあとも、4,5本の電話をしたが、なかなか都合のよいところがない。
緊張から焦りに変わる。どこでもいいから、出てくれ。最後の願いを込めて、電話をかけた。
 
「今日でしたら、このあと、15時からなら1枠だけ空いています」
 
やった! 
身支度もそこそこに、すぐに家を出た。幸い、家の近くだったので、自転車で向かった。ようやく見つけたかすかな希望と、これから自分がドーピングに手を染める罪悪感が入り混じった不思議な気持ちだった。
 
20分ほど自転車を走らせると、目的地に着いた。よくある雑居ビルのはずが、見上げるとずいぶんと大きく高く見えた。
私は意を決してビルに足を踏み入れた。
やはり、ドーピングは世間的には良くないものなのだろう。それは、人目を避けるような場所にあった。ビルの最上階。そして、一番奥の部屋だった。
 
扉を開けると受付の女性以外に、人はいない。当然、客は、私以外誰もいない。部屋の中も薄暗い。
 
「先ほど電話をしたものですが」
「お待ちしていました。では、保険証をお願いします」
簡単な初診前の手続きと、問診票を記入していると、声がかかり、診察室へ向かった。
 
私は、すべてを話した。今の悩み、苦しみから解放されたい一心で、初めて会う目の前の男性にすべてを正直に話した。
 
 
「ストレスですね。あなたのような症状で、心療内科に来られる方が最近増えてきているんですよ。その90%以上の方の原因が、ストレスですね。大丈夫です。うつ病とかではありません。本当のうつ病にかかれば、突然号泣したり、物忘れが激しかったり、感情の起伏がもっと激しいですから。安心してください。ストレスに効く薬を出しておきますから、1日3回、飲んでみてください」
 
良かった。自分は、大丈夫なのだ。
そう安心するとともに、具体的な解決方法も手に入れた。
 
心療内科でもらう薬を飲むのは初めてだった。不安も大きかった。しかし、飲まないという選択肢はなかった。どうしても現状から抜け出したかったから。
 
早速、その日の夜から飲んでみた。
翌朝の調子はどうだろうか、そんなことを期待しながら、その日は早めに布団に入った。
 
 
翌朝。どうだろう。
さっそく調子が全然違った。明らかにいつもより気分が良いのが分かった。
「なんだ、こんな簡単なことでよかったのか」
悩み苦しんでいた過去の自分がバカらしく思えるくらいだ。
 
妻と私の間では、この薬を飲むことをドーピングと言っている。
心身の調子を強制的に上げてくれる薬で、ちょっとした罪悪感がよぎり、後ろめたさを感じるため、そう呼んでいる。
 
もちろん、違法性のあるドーピングなんかではない。飲んでいる薬は、れっきとした処方薬で、処方箋があれば、誰でも手に入れられる合法の薬だ。
 
今では、過去の自分たちをからかう意味で、妻と2人でドーピングについて盛り上がる。
「今日もドーピングしたから調子がよかったわー」
「私も、疲れたときはドーピングしようかしら」
 
 
毎日毎日、ストレスと戦っているあなた。
勇気を持って、ドーピングをしてみることをお勧めする。
本当に、想像以上に健康になれる。意外と良いよ。

 
 
***

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2018-09-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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