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アメリカ留学で、寿司嫌いを克服した話


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記事:鷹野サヤカ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
見渡す限り田んぼの富山県に住んでいた私は、子供の頃から海外にあこがれていた。
邦画よりは洋画が好きだった。浜崎あゆみよりはブリトニー・スピアーズが好きだった。米よりはパンが好きだった。こんな風に挙げていけばキリがないが、いわゆる海外かぶれだったのだ。日本から出て、海外で暮らしたい! とずっと思っていた。
そんな私が大学2年生になった頃の話だ。大学の掲示板に「アメリカへ短期語学留学に行きませんか?」という張り紙が出されていた。ケンタッキー州にある姉妹校に語学留学すれば、外部のエージェントを通して留学するよりもだいぶ安く済む。ミーハーだった私は、本当はニューヨークやロンドンがよかったけれど、お金を貯める時間の方が惜しかったし、「安く行けるならアメリカの田舎でもいいか」と思った。
とにかく留学は「自分を変えられる気がする」と本気で思っていた。
昔から、引っ込み思案で、コミュ障で、自分の意見が言えない私はアメリカに行けば180度変わるのではないかと思っていた。
だが、アメリカ留学してから10年経ってみて思うと「そんなに人間性は変わらない」と思っている。たしかに行った後、一瞬エネルギッシュにはなったけど、だいたい数年ほどで魔法は解けた。私はどこにでもいる、普通の会社員になってしまった。しかし、私が「アメリカ留学のおかげで変わった!」と思っている点が1つだけある。
それは「寿司が食べれるようになったこと」だ。
実家での18年間、魚が美味しいと言われる富山県に住んでいながら、私は刺身や寿司が苦手だった。生臭くてこんなもの食べれたものじゃないと本気で思っていた。
東京だと回らない寿司屋で出されるようなネタが、富山県では回転寿司でも普通に出されている。しかし当時の私には、いなり寿司か玉子ぐらいしか食べるものがなかったのだ。だからこそ私は「海外に行ったら、寿司なんて食べなくていいし幸せだろうなぁ」と思っていた。
ところが一転、ケンタッキー州に行った私は驚愕した。巨大ハンバーガー、ポテト、ピザ、青色ホイップクリームのケーキ……。ケンタッキー州に着いて初日に出された食事だ。どれもこれも大味で、胃もたれしてしまい食べれたものじゃなかった。だからよく「アメリカに留学して10kg太って帰ってきた」みたいな体験談があるが、私は真逆だった。アメリカの大学の食堂では、しなびたレタスとシリアルとコーヒーしか食べられるものがなかった。もともと38kgしかなかった体重が35kgまで落ちて、ガリガリに痩せてしまった。
そんな干からびた私を見て、「大丈夫?」とクラスメイトの台湾人の女の子が声をかけてくれた。彼女は2年前から留学しているので、車も持っているし大学周りの地理に詳しかった。
「ホームシックなの? 日本食が食べたいのかな?」と彼女は言った。
それでも海外かぶれだった私は、「なぜアメリカに来てまで日本食を食べなきゃならないのか……?」とも思った。
しかし彼女は「私のおすすめのレストランがあるの。大学の食堂よりは美味しいから! ちょっと痩せすぎでしょう!」と言うので、彼女に連れられて日本食レストランへ行くことにした。
そこは「Sushi」と書かれた看板があった。よりにもよって私が嫌いな寿司じゃないか。ただ、親切心で連れてきてくれた彼女に申し訳なくて、実は寿司が嫌いなことを言い出せずにいた。
しかし、それは杞憂だった。「Sushi」と「寿司」は別物であることを私は知らなかったのだ。その店では、白米の上に刺身をのせただけの普通の寿司は置いていなかった。どんなメニューでも、チーズやアボガドやキュウリ、玉子を巻いたりしてあるし、刺身も生臭さを消すために炙ったりと工夫してある。欧米人向けの味付けだったのだ。
そこで私は初めて、本当に泣けるぐらい、おいしい寿司をアメリカで食べた。日本発祥で、こんな美味しい食べ物があったなんて。
連れて来てくれた彼女にも感謝でいっぱいだった。
日本であんなに寿司が嫌いだったのに、調理の仕方だけでこんなに美味しくなるなんてビックリだ。友達もいないアメリカに来て、心細かった私を元気付けてくれたSushiは私のソウルフードになった。彼女が天使に見えた。
私は日本食レストランが気に入ったので何度も通った。体重は元に戻り、元気にアメリカでの生活を送ることができたのは彼女のおかげだ。
「日本の食べ物って、いいものだったんだ!」とアメリカに留学するまで全く気がつかなかった私。帰国したら、日本の食べ物や文化をちゃんと味わってみようと思った。
留学を終えて日本に帰国した後、家族が空港に出迎えにきてくれた。
お父さんから「何が食べたい?」と聞かれた時、私は迷わず「寿司!」と答えた。
私はアメリカでSushiを食べまくったおかげで、なぜかチーズの乗っていない普通の寿司も食べられるようになっていたのだ。
私は20歳になって、やっと家族で寿司を食べられるようになったのだ。
海外かぶれだった私が、ふるさとである富山県の海の幸ってありがたいなぁ……と、氷見の寒ブリを食べながらしみじみと思うようになったのは、アメリカ留学のおかげである。

 
 
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2018-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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