メディアグランプリ

男の育休は、人生の夏休みかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木伸貴喜(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
お盆明けのある朝。
鳥の鳴き声が聞こえ、ぼんやりと目が覚めてくる。
リビングからは、すでに起きているであろう6歳の長男がやっているスマホゲームの音が聞こえる。
隣の布団に目をうつすと、妻もすでに起きているようだ。0歳の次男に授乳をしているのかもしれない。
2歳の娘はというと、布団の端でお腹を出しながらぐーぐー寝ている。
「……今日は、いや今日も休みか」
 
ぼくはいま、育児休暇いわゆる育休を取得して、3か月になる。育休というと、その間はずっと休みのイメージがあるかもしれないが、ぼくの場合は、メインは育児だが週に2日ほど働くという、いうなれば半育休のような生活をしている。
職場では、「いいなぁ、羨ましい」と言われたり、「仕事が大変で逃げたか?」と言われたり、まわりは好き放題言っているようだ。なにしろ会社の中間管理職の男性で、はじめて育休を取ったモデルケースである。ぼくの友人にも育休を取った人はいない。だから同じ立場で、共感しあえる人が見つからない。
 
そもそもぼくが育休を取得したのには訳がある。
ぼくはもともと仕事が好きで、やりがいも感じていた。ある程度部下を持つようになってからは「リーダーたるもの、誰よりも部下のことを考え、働くものだ」という心構えで、常に先頭に立ち、誰よりも働いてきた。
 
一方で、一番大事なのは家庭だという気持ちもあった。子どもが1人、2人と生まれたときは、漠然と育休を取れたらいいなと思ってはいたが、取得するまでには至らなかった。育休を取っている先輩はいなかったし、取れる雰囲気ではないと思っていた。しかし3人目が生まれると、途端に状況は変わった。下の2人が年子なことも関係しているかもしれないが、急に育児の負担が大きくなり、ついには妻が体調をこわしてしまったのだ。
 
そのとき、自分の価値観が天秤にかけられた。仕事か、家庭か……。
「いま、何を大切にしたいのか」と、自分自身に問いかけると、驚くほどすぐに結論が出た。
「育休を取る」、ぼくは会社を辞めてもいいくらいの覚悟で直訴し、その結果育休を取ることができた。
 
育休は羨ましい、つまり仕事より育児や家事の方が楽だという人がいる。
そんな人にこそ体験してみてほしい。思ったよりも楽ではないよ、と言いたい。特に男性は育児や家事のように終わりがなく、誰からも認められないことをやり続けることに苦痛を感じるだろう。生物学的にみても、男性は獲物を取ってくることが役割で、より大きい獲物を捕まえられるほど家族を養えるし、社会に認められてきた。しかし育児や家事では、そういった目に見える成果はあまりなく、評価してくれる人もいないのだ。
 
では育休は男性にとって大変なだけなのか。
もちろんそんなことはない。妻や子供たちと一緒に過ごす日々や、子供たちの成長を間近で見られる日々は、ぼくにとって本当に幸せなことだ。
 
いまぼくは、仕事の出勤数と休日数の数が逆になってしまった。週休2日制ではなく、週休5日制になってしまったのだ。
それに伴い、自分の価値観もひっくり返ってしまった。
喜んで残業していた自分、いまの職場でずっと働いていくだろうと思っていた自分が、いまは遠い昔のことのように感じられる。
子供たちを寝かしつけたあと、一人でふとそんなことを考えてしまう自分がいる。
 
そしていま、自分の中である思いが浮かんだ。
育休を取っているこの毎日は、まるで人生の夏休みのようだと。
 
決められたカリキュラムは存在しない。
いままで当たり前だと思っていた人生のレールから一旦降り、立ち止まっている気分だ。
食べたかったもの、行きたかったところ、やりたかったこと、自分の心に従って行動してみることができる。
 
実は今日はこれから、子ども達を一時保育に預け、妻とランチに出かける。
「どんなことを話そう?」
かわいい子供たちのこと、家庭のこと、これからどう生きていくか。もちろん他愛もないことだって話そう。
 
自由研究のテーマは、まだ決まっていない。
次男が1歳になるまで、あと約半年間ある。ぼくは子どもの頃から夏休みの宿題を終わらせるのがギリギリになってしまうタイプなのだ。
 
でももう少し、考えたい。あれこれと考え、ときには立ち止まって悩んだり、ときにはいきなり何かを始めたりしてみたい。心のおもむくままに。
そう、この天狼院ライティングゼミをはじめたように。

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2018-09-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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