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メディアグランプリ

跳ね返すのではなく、受け入れる人生を


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:戸田タマス(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「お前、老けたなぁ……」
 
朝、起きてきた私を見て、夫が開口一番に言った。
 
朝っぱらから何を失礼な、と言い返しながらふと鏡を見ると、
ぼさぼさの頭で顔色の悪い女がボーっと映っている。
 
う、確かに老けたかも……。
そう思いながら、久しぶりにまじまじ鏡を見ていたら、
 
「あれ……? これってもしかして、シミ︎!?」
 
 
ショック!
いつのまにか、小指の爪くらいのシミが、目尻と頬骨の間の肌にできている。
さらによく見ると、もっと小さいシミもいくつか散らばっている。
 
「うわ、どうしよう……。とうとうできちゃった……」
 
 
私は中学生の時からずっとテニスをしている。
しかし黒くなりにくい肌質なのか、日焼けをしても赤くなるだけだったので、それほど真っ黒になることはなく、しかも夏が過ぎればすぐに元通りになっていた。
 
調べてみると、どうやら赤くなる人の方がシミができやすいらしい。
 
正直に言って、
私は黒くならないから大丈夫、と、UVケアはそれほどきちんとやってこなかった。
そのツケが今、シミとなって現れたのだ。なんというアホなことをしてしまったのだろう。
 
 
気になりだすとどうにも止まらない。
会う人全てが私のシミを見てくるように感じ始めた。
すぐにファンデーションやコンシーラーも買い足した。美白効果のある化粧水に変え、サプリメントも買ってみた。
 
そんな折、職場の同僚の方が、レーザー治療でシミを取ったというではないか。
保護テープのようなものを頬に貼ったその人は、
満面の笑みで私にレーザー治療を勧めてきた。
 
「レーザーほんとおすすめ! 痛みも一瞬だし、ペロンと取れて手っ取り早いの! それくらいの大きさのシミならお金もかからないわよ。サプリだのなんだの色々買ってる方がよっぽど高くつくから! 私、今度目尻のシワも取りに行こうと思ってるの」
 
私は、フンフンそうなのかと目を輝かせて聞いていた。
しかし、次の言葉を聞いた時、
私は、何とも言いがたい違和感を感じた。
 
「シミだらけの汚い顔で過ごすより、綺麗な顔の方がいいもんね!」
 
 
 
汚い、顔?
 
思い起こせば、ネットでシミを消す方法を検索したときにも、「汚い」というワードが普通に出てきていた。
さらに、「お肌」にかけているのだろう、「汚肌(おはだ)」という、そこまで言っちゃうの? と悲しくなってしまうようなワードまであった。
 
 
シミのある私の顔って、世間一般的にいうと、「汚い」のだろうか?
 
確かに、シミを何とか消せないか、とは思っている。
でも、「汚い」という感覚とは、何だか違う気がした。
レーザー治療は魅力的だけど、やっぱりちょっと怖いかも……。
うっすらとしたモヤモヤを抱えたまま、とりあえず化粧で隠す、という微妙な抵抗をしてしのいでいたある日、
 
イベントで、あるモデルの方に会う機会があった。
 
 
その方には、近くで見ると顔にたくさんの小さいシミとそばかすがあった。
よく見ると肩にもたくさんのシミが散らばっている。
 
話を聞いてみると、
とても海が好きで、お子さんを連れてよく海水浴に行くという。
確かに、秋だというのにこんがり焼けた肌をしていた。
 
司会進行の方も気になったようで、日焼けについて話題を振ったとき、
その方はきっぱりとこう言った。
 
 
「皮膚ばっかり気にしていても、仕方ないじゃないですか。
そのうちもっとシミだらけになると思いますけど、しゃーないです。
人生の一部ということで受け入れます!」
 
 
モデルをしている方が、ここまで言い切るのはかなり珍しいことだと思う。
しかし、スパッと竹を割ったような言葉の中に、気持ちの良い人生観が見えた。
私より若いのに、彼女はこんな風に強く、それでいて柔らかく生きている。
とても魅力的で、あっという間にファンになったのだった。
 
 
 
そして、私のモヤモヤが晴れた瞬間だった。
 
 
人生の、一部。
 
 
シミがあろうがあるまいが、
ましてや消そうが消すまいが、問題はそこではない。
その人が、自分の人生を胸を張って生きるためには、どうしたいか。
それが大事なのだ。
 
 
そういえば、
私は昔から、品の良い洋服や真珠のネックレスなどを付けて着飾っておられる、白髪のご婦人を見るのが好きだったり、100歳近い祖父の、コーンフレークのようなシミがたくさんある手を触るのも好きだった。
だからこそ、シミを「汚い」と表現することに違和感があったのかも知れない。
 
 
「老い」は誰しも必ずやってくるもの。
それを跳ね返すのではなく、「人生の一部」として受け入れる。
そんなふうに、柔らかく生きていける女性でありたいと思う。
 
私の顔にできたシミも、
学生時代にテニスを頑張ったという「人生の一部」なのだと思えば、
少なくとも今は、一緒に生きていくのも悪くない気がした。
 
 
 
先日、
母親から、大きな顔のアップ画像が送られてきた。
そこには、
 
「シワ取りをしましたー!」
 
と、嬉しそうなコメントがあった。
四半世紀ぶりに、同窓会に行くらしい。
 
正直、どこのシワが取れたのか分からなかったのだけど、
母が自信をもって同窓会に行ければ、それでいい。
 
 
若く見えるよ……? それとも、綺麗になったね、の方がいいかな……?
 
 
もしいつか、シワやシミを消したいと思う日が来たら、母親にオススメの店を聞くのもいいかも。
そう思いながら、私は、母親に返信する言葉を考える。

 
 
***

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2018-11-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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