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これからの道


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記事:さわみ(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
私は、これからどんな人生を歩んでいこう……
40歳の誕生日、一人でボンヤリとそんなことを考えていた。
今がちょうど人生の折り返しだとしたら、きっとこの先は今までとはまったく違う人生になるに違いない。
私は、そんな残りの人生を、どんな風に生きていこう。
 
子どもは二人。
何となく、当たり前にずっと思っていた。
一人目の子どもを妊娠した時、自然分娩で出産したいと考えた。
でも、結局頑張り切れずに、吸引分娩になってしまった。
生まれてきた赤ちゃんを抱っこしたときに、一番に思ったこと。
「次の子の時は、ちゃんと自然分娩で産めるように頑張ろう」
 
娘が成長し、そろそろ二人目が欲しいと思い始めた。
周りのママ友にも、二人目を授かる人が増えてきた。
早く私も。そんな思いが強くなってくる。
でも、私はいつまでたっても子どもは一人。
 
上手におしゃべりするようになった娘が「妹が欲しい」と言うようになった。
周りのママ達と「一緒に、二人目頑張ろうね」と、挨拶のように言っていた。
その頃はまだ、「子どもは二人」を当たり前だと思っていた。
 
子どもが、もうすぐ小学校に入学する頃、私は37歳になってしまっていた。
35歳を過ぎた頃から「当たり前」が「目標」になっていた。
周りのママ達は、みんな二人目を連れているようになっていた。
でも、私の子どもはまだ一人。
お腹の大きいお母さんや赤ちゃんが、辛くて見れなくなってきていた。
 
「子どもは二人」
いつの間にか、それが呪文のようになり、生活の全てになっていった。
毎日、毎日、何をしている時でも、そのことばかりを考えていた。
仕事を決める理由も、辞める理由も、全て二人目のことが最優先。
仕事よりも、家族よりも、自分よりも。
まだ存在しない二人目の子どもが、私の一番大切なことになっていた。
 
子どもが二人いる人を見ると、気持ちがざわついた。
妊婦さんや赤ちゃんばかりが目に付いた。
他の人と比較しては、自己嫌悪に陥った。
私は、あの人よりも劣っている。ダメな人間だ。
子どもが二人いる人を見ると、何もかもが自分よりも素晴らしく、羨ましく思えた。
どうして、私だけ……
毎日、そんなことを考えるようになっていた。
 
こんな気持ちで過ごす毎日は、きっと良い毎日では無い。
でも、自分の気持ちをどうすることもできない。
私は、ある日決心をした。
この気持ちに、区切りを付ける日を決めよう。
そうしないと、きっと私はダメになってしまう。
そして、心の中でタイムリミットを決めた。
 
40歳の誕生日。
自分で決めた、タイムリミットの日。
私の子どもは、娘が一人。
「子どもは二人」は、叶わなかった。
叶わないまま、この日が来てしまった。
 
当たり前だと思っていたこと。
人生の目標だったこと。
毎日の生活の全てだったこと。
それを失って、前に進むことなんてできるのだろうか?
一体、私はこれからの人生を、何のために生きればいいのだろうか?
 
新しい一歩を踏み出すために、今までの自分を振り返ってみる。
娘が生まれてからの約10年間。
いつも「二人目」にとらわれて、そのこと以外何も見えなくなってしまっていた。
楽しいことも、嬉しいことも、沢山あったはずなのに、それが全部消えてしまうぐらい、ただただ「必死」な自分の姿ばかりが浮かんでくる。
 
 
「これからの人生は、還元していく人生にしたい」
振り返り終わった時に、自然に頭に浮かんだ思い。
 
もう、十分。自分の事ばかりを考えて生きる人生は、もう十分過ぎるぐらいやり尽くした。
これからは、今まで周りから沢山もらってきたこと、そして自分が経験してきたこと、それら全てを還元していく人生を送りたい。
今まで自分の方にばかり向いていた気持ちを、もっと周りに広げながら生きていきたい。
少しでも、誰かの役に立つことができるような、そんな人生を送っていきたい。
 
「還元していく人生」
実は、それが一体どんな人生なのか、自分でもよくわからない。
でも、今はまだ、少しずつスタートを切り始めたばかり。
これから考えながら、ゆっくりと進んで行こうと思う。
自分が心地良い、しっかりと周りのことが見えるペースで。
 
 
人生は、自分が思い描いたようにはならないかもしれない。
でも、自分で描きながら進むことはできる。
 
私は、あの30歳からの10年間を、経験できて良かったとは決して思わない。
できることなら「当たり前」に、もう一人子どもが欲しかった。
でも、経験したことを、無かったことにしたいとも、思わない。
あの経験があるからこそ、今の自分があるのだから。
 
今まで描いてきた道を、失敗だからと塗りつぶしてしまうのではなく、これからの新しい色を足して進んで行きたいと思う。
 
 
私の家族は3人。
子どもは、娘が一人。
『自分』のために何ができるか?よりも、『誰か』のために何ができるか? を考えて過ごす毎日。
今まで気づくことのなかった、充実した楽しい毎日。
 
人生に新しく描き始めたこの道を、私はとても気に入っている。

 
 
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2018-12-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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