メディアグランプリ

魔法は掌から


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【1月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《土曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:種山浩美(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
 
「あー、気持ちいい。眠ってしまいそう」
右手から左手に移るころには、すっかり力が抜け、リラックスした様子。目を瞑って気持ちよさそうにしている。
 
先日開催した、アロマトリートメント体験会の一コマ。
たまたま隣り合った初対面の方とペアを組んで、経験者の私が先にやらせてもらった。
 
病院の患者さんや高齢の方にも使えるようにオリジナルのブレンドで作られた精油を配合したスィートアーモンドオイルを少量だけ使う。
揮発したアロマで身体全体を包み、“労宮(ろうきゅう)”という掌の氣の出入口を互いに合わせて、氣を巡らす。
そしてゆっくりと手を滑らせながら、掌全体をトリートメントし、次に指、手の甲、指、腕と丁寧にトリートメントをおこなう。
いまこの時間、目の前にいる人を、まるで世界で一番大切な人のように丁寧に丁寧に。
 
 
8年前、麗澤大学の市民講座で「ホスピスボランティア講座」というのを見つけた。
特にホスピスに興味があったという訳ではなかったが、死を覚悟した人が残りの人生を後悔なく過ごす場所だと勝手な思い込みを持っており、ほのかな憧れのような感情を抱いていた。
対人恐怖症気味でそれまであまり深く人と関わるということをしてこなかった私が、その頃、あることがきっかけで強く人と関わりたいと思うようになっていた。
 
ボランティア活動は、アロマの香りに包まれながら患者さんにハンドタッチと傾聴を行う。
「これ、とても心地よさそう」
これならできるんじゃないかと感じた。
 
講座終了後は、病院でボランティアを行うことが前提であるため、市民講座ではあったが面接試験があった。
そして講座は月に1~2度だったが、仕事をしながら週末には墨田区から“柏”や“つくば”まで通った。
講座の度毎にレポートを提出し、テーマについてディスカッション、死に触れた経験や記憶の整理、死生観の構築、アロマオイルの効能や使用方法、手と足のトリートメントの練習、三ケ所での病院実習と目まぐるしい一年の後、ようやく松戸のクリニックに配属された。
 
病院での実際の活動は、実に様々だった。
 
「気持ちいい~」とウトウトされる方が圧倒的に多い。右手から初めて左手に移るころには寝息を立てている方が少なくない。
また、「いままでこんな話は誰にもしたことがないんだけど、なんだか話したくなった」と
打ち明け話をされる方。
話が止まらなくなって30分近くも引き留められることもあるし
「こんなに気持ちがいいんだったら、もっと前から受ければよかった」などど、嬉しい感想をいただいたこともあった。
 
しかし一方で、「こんなこと無料(タダ)でやってくれるなんて嘘だろ。胡散臭いからやめてくれ」と邪険にする人もいた。
「女の人の手を触るのは久しぶりだなぁ」と、ちょっと方向性が違うほうに喜んでもらうことも、まあまあある。
 
感覚的にではあるが、約7~8割の方に喜んでいただけているのではないだろうか。
この行為の、何が人を心地よくさせて心を開かせるのだろう。
 
 
アロマオイルの効能は、確実である。
この活動がきっかけで、メディカルアロマを学びに学校に通っていたことがある。
アロマオイルの高価なものは、たった3mlで一万円近くもするため、なかなか手が届かない。なので、クラフト作りの時には、恥ずかしながらここぞとばかりに高価なオイルを使ったり、香りを嗅ぎまくったりしていた。
 
ある日、授業を終え最寄り駅について電車から降りたが、どうしても眠気がとれなかった。電車で寝ていても、降りて歩き出せば眠気を引きずることなどそうそうない。しかしその時は、歩いて10分の距離がどうしても帰れなかった。眠すぎたのだ。
仕方がないので、ファミレスに寄り、飲み物だけ頼んで仮眠して帰った。
 
あとで気がついたのだが、クラフト作りの際に、副交感神経を高めるオイルを何種類か複合して使っていたため、身体が半強制的にリラックスモードに入ってしまったのだ。
このように、アロマの効果は、使い方次第ではかなりのリラックス効果をもたらす。
 
しかし、彼らの心を開かせうっとりと夢見心地にさせるのは、多分それだけではない。
私は、ハンドタッチの力が大きいのではないかと感じている。
 
事情があり、このボランティア活動を一時期休会していたことがあった。
昨年の暮れに復帰したのだが、現場でトリートメントを行うのが久しぶりで心もとなかったので、長年続けている現役の方のを受けさせてもらったことがある。
 
なんとも言えない優しいタッチ。
気持ちよさと心地よい時間。
そして何よりも感じたのは、
「私、すごく大切にしてもらっている」
「私は私でいいんだ」ということ。
 
何も言わず、ただ手をさするだけの行為で
人は、ここまですべてを受け入れられていると感じることができるのか! と、不覚にも泣きそうになった。
おそるべしハンドトリートメント!
 
 
 
先日のアロマトリートメント体験会。
今度は、ペアを組んだ相手の方に私がやってもらう番。
初めてで戸惑っているその方に、
「リラックスして、ゆっくりでいいんですよ」
「そうそう、すごく気持ちがいいですよ」
と声をかけながら、どんなふうでも大丈夫よと無言で伝える。
 
終了後、その方がお友達に
「なんだかポカポカ暖かくなってきたわ。手もジンジンしてるし。私、才能あるかも」と、嬉しそうに話されていた。
 
(うふふ。私の全肯定、うまくいったみたい)
 
そして、私の対人恐怖症……
いつの間にか消えている。
これもハンドトリートメントのマジックかしら。

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2018-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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