死を意識することで出来た恩返し
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記事:にへい(ライティング・ゼミ平日コース)
「心筋梗塞で亡くなってしまったんだって……」
あれは2年前のお正月。2017年だったか。実家に帰った際にばあちゃんの友達が亡くなった話を聞いた。その人はまだ50歳程度だったそうだ。
亡くなるのには早すぎる。
そして「死」というのは、
突然やってくるということを意識させられた。
「そういえば、ばあちゃんって何歳になるんだっけ?」
と僕はお雑煮を食べながらばあちゃん聞いてみた。
「そうね、今年で76歳かしらね」と答えた。
「76歳かー。76歳に見えないくらい、ピンピンしているから当分は大丈夫そうだね笑」
冗談交じりに僕は答えた。
「もう70歳後半になるんだ……」
と僕は口には出さなかったが、内心、驚いていた。
僕の家は、母子家庭である。母と父が結婚し、僕が生まれてすぐに離婚をした。
それから、母は僕を養うために、水商売を始めた。
夜は仕事で、昼間は寝る、という生活をしていた。
そうすると中々、僕を育てる時間が無かったので、
実家に住み、僕の面倒を見てくれたのは、じいちゃんとばあちゃんであった。
自分で言うのもあれだが、じいちゃん、ばあちゃん子であったと思う。
じいちゃん、ばあちゃんも自分の子供のように育ててくれた。
ばあちゃんにはよく怒られ、じいちゃんとキャッチボールしたり、釣りをしたことをよく覚えている。
僕が物心ついた時のじいちゃん、ばあちゃんは、50歳後半くらいだっただろうか。
そう考えると、じいちゃん、ばあちゃんも年をとったなと、思う。
「人はいつ、亡くなるかわからない」
そんな出来事が身近に合ったものだから、縁起でもないが、
じいちゃん、ばあちゃんの死を少し意識するようにもなった。
それが2年前である2017年のお正月だった。
その1年後である2018年に僕は、1年の目標の中に「じいちゃん、ばあちゃんを旅行に連れて行く」を入れた。
「孝行のしたい時分に親はなし」
ということわざがある。親孝行がしたいと思ったときには、もうすでに親がこの世にはいなくなっている。だからこそ、生きているうちに孝行をしなさいよ。という意味のことわざ。亡くなってしまう前に、なにか、じいちゃん、ばあちゃんにしてあげたいと思ったから、2018年の目標の一個にした。
しかし、旅行に連れて行くためには、お金を貯めなければならない。
僕は2018年1月から、転職をして別の会社に勤めた。
前の会社よりも、成績を上げれば歩合で給料がもらえるので、お金を稼いで、
そのお金を貯め、旅行の費用にしようと思った。
転職をして、はじめは仕事がうまく行かなく、非常に苦労をした。
初めての業界。
業界用語もわからない。
話についていくだけで精一杯。
中々成果がでない。
毎日、がむしゃらに働き、転職して4ヶ月経った頃から軌道に乗り始め、
成果も出るようになった。
そこから、毎月安定して目標を達成できるようになった。
ある程度、お金にも余裕が持てるようになったので、2018年10月頃には旅館を予約し、2019年1月初旬にじいちゃん、ばあちゃんを旅行に連れて行くことができた。
じいちゃん、ばあちゃんにあまり負担をかけないために、
遠出はせずに地元茨城県内の旅館にすることにした。
ラムサール条約という湿地の保存に関する国際条約にも制定されている「涸沼」という自然豊かな場所の近くにある旅館にした。
そこの旅館の温泉は「美人の湯」と言われ、入ると肌がスベスベになり、肩こりや腰痛にも良い。さらに、ご飯は茨城の大洗海岸で採れた、新鮮な海鮮料理が堪能できる。じいちゃん、ばあちゃんは海鮮料理が好きなので、この旅館だったら喜んでもらえるだろうと思った。
当日、旅館に到着し、温泉を楽しみ、夜ご飯をみんなで食べている時に、じいちゃんが一言。
「りょうへい、連れてきてくれてありがとね」
僕は少し、照れながら
「沢山、ご飯食べて、楽しんでねー」と答えた。
じいちゃん、ばあちゃんも喜んでくれて、良かったと思った。
じいちゃん、ばあちゃんには本当にお世話になった。
ばあちゃんには、毎日、毎日、ご飯を作ってもらい、
僕が野球をやっていたので、汚れたユニフォームも洗ってもらった。
じいちゃんには、車で送り迎えや授業参観に来てもらったり。
思い返せば、様々な思い出が出てくる。
少しでも恩返しができればいい。
大きな事はできないけど、少しでも喜んでもらえればいい。
喜んでもらえて、本当に、良かった。
すると、ばあちゃんからまた、一言。
「次は、りょうへいの結婚式まで生きていたいね」
うむ、それは難題で少し時間がかかりそうだ笑。
ただ、それがじいちゃん、ばあちゃんの生きる目的になり、
少しでも長生きしてくれたら、いい。
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