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メディアグランプリ

食事は心の体温計


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:Kurosawa Arisa(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
カウンター席に腰かけ、注文をしてから15分。
 
「お待たせいたしました」
 
白い湯気を立ち昇らせながら目の前に置かれたのは、全てが真っ白なチーズリゾット。具は白いマッシュルーム、白いアスパラガス、白いカリフラワー、白いささみ、と白いものばかりで、色がついているのは上に散らされた黒コショウだけです。
上京して初めて来た渋谷の街から道玄坂を登ってやってきた私は少し疲れていて、いただきますも言わずにスプーンを右手に持ちました。見るからに熱そうなリゾットを少しスプーンのせて、息をふーっと吹きかけます。湯気が消えたのを確認してから口の中にいれました。
 
その時、私は何も期待していませんでした。お店に、ではありません。食事そのものに、何も期待していませんでした。
そのお店に入ったのも、お腹が空いた時に丁度見つけたお店に、手ごろな価格の、腹持ちの良さそうなメニューがあったという、ただそれだけでした。
 
そんな何も期待をしていなかった私を裏切って、鼻と口の感覚が騒ぎ出します。マッシュルームやガーリックが混ざり合った良い香りが鼻を抜け、噛めば米が程よくぷちぷちと身を崩します。そして、生クリームとチーズをベースにした濃厚な味が舌を優しく包みました。
 
美味しい!!! という感動で、私の頭の中はいっぱいになりました。そのあとは、思い返すと恥ずかしくなるくらい、夢中になってリゾットを食べていました。その場で感想を言った訳ではありませんでしたが、リゾットを作ったシェフが小さく頷きながら満足そうにこっちを見ていたので、きっとはたから見てもわかるくらい美味しそうに食べていたんだと思います。
 
これが、私が人生で初めて心から美味しいと思って食べた食事でした。24歳の時でした。
 
それまでの食事に対しての気持ちは、“まずいよりは味がいい方がいいけれど、栄養を取れたらそれでいい”といった感じで無関心でした。
別に味が感じられない訳ではありません。ただ、それまで心から美味しいと思って何かを食べたことがなかったので、関心を持つきっかけがありませんでした。
 
ではなぜ、私はそれまで心から美味しいと感じることがなかったのでしょうか。
 
単純に、心に余裕がなかったからだと思っています。
就職を機に実家を出て上京した私は、それまでと比べてとても自由でした。詳細に説明しても痛々しいだけなので省きますが、理不尽な理由で他人に振り回されることのない生活は、少なくとも私の心からマイナスなものを取り除く効果があったので、私は心から美味しいと感じることができるようになったのだと思います。
 
それから私は、ごはんが美味しいと感じられるのは幸せなことなんだな、と思うようになりました。
心から美味しいと感じることができるということは、美味しさを感じられるだけの心の余裕があるということです。それは、とても幸せなことだと思います。
 
そうしてご飯を食べるのが大好き! になった私には好物がたくさんできました。モチモチのチーズナンや、ホワイトソースとトマトソースとパスタがたっぷり入ったラザニア、水だけで割ったウイスキーなどなど。美食にこだわるというよりは、様々なところで食べて自分好みの味を探したり、知らない料理を食べたり、時には自分で作って研究してみたりと、料理を味わうこと自体に楽しみを見つけるようになりました。
ただ、最初に美味しさを感じたのがチーズリゾットだったからか、チーズやホワイトソースがたっぷり入ったもの特に好むようになり、お蔭で毎日ひやひやしながら体重計に乗っては贅肉と格闘する毎日です……。
 
あれから4年たった今でも毎日食事を楽しんでいる私ですが、それでもたまに、食事をした時に美味しさがよくわからない、となってしまう時があります。
そういう時は大抵、会社の仕事で行き詰った時や、人間関係に悩んでいる時など、何かの悩みごとに対して無意識にとても気持ちを割いている時に起こっていました。最初は深く考えて居ませんでしたが、対処しないでいたら実際に身体を壊してしまいました。
それからは「いつもだったらもっと美味しいのにな」とか「食欲はあるのに美味しくないな」と思える段階で心に余裕がなくなっているんだと判断して、その日は早めに休んだり、趣味に打ちこんで気分転換をするようにしています。
 
日に3度の食事は私にとって楽しみになるだけでなく、心のバロメーターです。
 
皆さんももし、いつもの好物に物足りなさを感じることがあったら、頑張り過ぎていないか、心の余裕度をチェックしてみてください。
 
 
 
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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