メディアグランプリ

散らかった心に花束を


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:イシザキマキ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「一輪でもいいからお花が部屋にあるといいですよ」
「綺麗なものがあったら部屋も整うしね」
 
2年ぐらい前、遅い晩御飯を食べているときに、たまたま隣り合わせたご近所の花屋のおねえさんに言われたことば。家の中が散らかっているのがばれたかな? と、ドキッとした。
 
そのころ休みなく働き、家にいる滞在時間は短くお世辞にも部屋にいつだれが来ても大丈夫とは言えなかった。同じように心も乱れに乱れていたように思う。でも、綺麗に整っている部屋に憧れがあった。そして、なぜかお花は男性から貰いたいと謎の憧れがあったものの1度も叶わず、もういい自分で買おう! とお花屋さんに行くようになった。
 
京都の街中のお花屋さんの、
「一輪でもいいから花を生けることを習慣にしてください」
という言葉を素直に間に受けることにした。実は3000円ぐらいは買わなきゃいけないんじゃないかなーという気持ちもありながら、それを継続できるほどブルジョワではないので、素直にお花一輪と何か緑のものを買うのを習慣にした。
 
でも、花を買う習慣がついて部屋は整ったのかといえば全く整わなかった。水をマメに変えることはなく、花を長生きさせることは出来なくて。花を選ぶ楽しさはあるものの、長生きさせられない劣等感も生まれてきて残念な結果となった。
 
残念な結果になったけれども花を買う習慣はつづいた。それは日頃触れ合う人たちにお花を生けることを大切にしている2人がいたからだと思う。
 
大きなお寺の御曹司ながら、中堅のホテルのメインダイニングの総支配人。彼は100席が満席でオープン15分前、テーブルセッティングが終わっていなくてスタッフが殺気立っていても、卓上花を整え水を変えることを怠らなかった。京都のある老舗旅館の女将は、まず仕事をするうえで最初に覚えたことは季節の草花を選び生けることだと、たおやかに話してくださった。
 
2人とも謙虚で挨拶など基本的なことを大切にされている事が伝わってくる人。花が空間にあると、なんだかいいのはわかる。けれど、彼らが大切にしているのはその行動とそれによって生まれる心のように思えた。私にはそれがよく分からず、ただただ忙しい日々、部屋の花はこまめに面倒みられることなく早々と枯れていった。
 
それでも、季節季節の花を選ぶは楽しくなってきて、最近は野に咲く花を買うようになった。
70代のスミレさんというオーナーが週末に野山に花を取りに行き販売している。実は京都の料亭御用達らしい。お店に行き、ぱっと直感で気にいった花の名前をスミレさんに教えてもらう。この花とバランスがいいのはどれかと相談する。最初はお花の基本を全く知らない私にあきれていたようだったけれども、最近はしょうがなしに私の花選びに笑顔で付き合ってくれるようになった。水揚げの仕方や花に高低差をつけ空間を面白くすることもそれとなく教えてくださる。
 
スミレさんの花を定期的に買うようになってから半年ぐらい。1週間で枯らしていた花を2週間ぐらい持たせられるようになった。気がついたら朝、花の水を変えるようになり、周りの空間が自然に整うようになってきた。そしてなかなか捨てられなかった家の中の古いモノを徐々に捨て始めている自分がいる。
 
これは、花を部屋に飾る事きっかけを作ってくれた花屋さんが教えてくれた、花を生ける意味に近づけたのではないか。支配人や女将が、どんなに額や鼻の下にじっとり汗をかいても毎日花を選び生けている心にすこし近づけたのかもしれない。
 
ただ綺麗なものを飾るのではない。綺麗なものを生かしたいと整える気持ちが大事なのだと思う。スミレさんの花は、スミレさんが苦労して摘み取ってきてくれた命と知っているからより一層大切にする気持ちが芽生える。そして、綺麗な花に恥ずかしくない空間を作りたいと思えるようになった。
 
心が整うと空間も整うのだと思う。
 
綺麗な花を保つためには、日々の努力、行いの丁寧な部分も大事なのだと教えられている気がする。まだまだ私の部屋が常にスッキリ綺麗になるには時間がかかりそうだけれども、少しずつ近づいている気がする。部屋が整えばそして心もスッキリきれいに
整い素直に向かうべき方向に進める気がする。
 
散らかりに散らかった心と部屋の持ち主の方に、お花を飾ってみることをお勧めします!
 
 
 
 
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2019-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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