メディアグランプリ

怠け者協奏曲


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記事:谷中田千恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
なにを隠そう、私は、筋金入りの怠け者である。
 
よく、夏休みの宿題を早めに終わらせる派と、ギリギリまで溜め込む派に分かれるが、私は、ギリギリまで溜め込み、そのままやらずに逃げおおせるというウルトラCをかます子供であった。
 
初日の登校日からしばらくは、提出をうるさくうながす先生も、10日も経つと新学期の忙しさから、夏休みの宿題のことなどすっかり忘れてしまう。
そうなれば、こちらの完全勝利である。
中学時代は3年間、この手を使い、夏休みの宿題に手をつけることは、一切なかった。
 
また、社会人となった今、休みの日に外出しないのは、当たり前のことである。12時ごろに起きだしては、パジャマのまま、インスタントラーメンを火にかける。
ソファに陣取り、ラーメンをすすりながら、一日中テレビをみる幸せはこの上ない。
 
ただし、勘違いしていただきたくないのだが、私は怠け者ではあるが、怠けている自分が好きなわけでは決してない。
 
怠けることは、常に罪悪感との戦いだ。
 
例えば、休日が、この上ない晴天だったりする。
怠け者の上に、貧乏性であるため、こんなにいい天気に何もしないなんて、もったいないと思ってしまう。
 
そうは思っても、せっかくの休みにゴロゴロすることをやめるわけではない。
パジャマ姿で、床に寝転び、浮かぶ雲を眺めたりしているのだが、夕方5時を回ると、突如とてつもない罪悪感におそわれる。
こんなにいい天気の一日を、なんて無駄にしてしまったのだろう。
少しでも、外出すれば、気持ちが良かったに違いない。
布団でも干したなら、今夜は、ふかふかの寝心地を味わえたはずだ。
後悔の悲しみで、サザエさんが、涙にかすんだことは数知れない。
 
試験前に、突如始まるONE PIECE全巻一気読みや、ダイエット中のスナック菓子祭りだって、罪悪感の嵐の中に起こるのだ。
 
しかし、よく考えると、怠けることに、罪悪感を持つのはなぜなのだろうか。
 
なんとなく、罪悪感の中には、もっと他にすべきことがあったのではないかという後悔がたっぷりと含まれている気がする。
 
では、「すべきこと」とはなんだったのだろう。
怠ける以外の、もっと有益な時間の過ごし方。
ちょっと想像してみよう。
 
晴れた休日は、朝5時にはベッドをでて、白湯を飲む。
胃腸が働き出した頃合いをみて、旬のフルーツをたくさん食べて、午前中は、ゆったりジョギングをして、公園まで足をのばす。
公園では、芝生に座り、しっかりと日光を浴び、自律神経を整えて、昼食までには、自宅に戻りシャワーを浴びる。
午後には、少し海辺まで足を伸ばそうと、車を準備する。
 
ここまで書いて、気持ちがゲンナリとしてくるを感じる。
 
だいたい、休日に、ゴロゴロするのは、休日以外の日に、懸命に働いているからである。
ゴロゴロすることによって、次の日も、いい力を発揮して仕事にのぞむことができるのだ。
海辺なんて出かけたら、夕方にはぐったりして、とてもじゃないけど、次の日、働く気力なんて起きやしない。
 
そうだそうだ、怠けるにも、きちんと理由があるのだ。
 
一日中、ダラダラ見続けたテレビは、私の貴重な情報源だ。
接客業であるので、ドラマの話題などは、お客様との心をほぐす架け橋になる。
バラエティ番組だって、会話のリズムをつかむのにはぴったりだ。
 
夏休みの宿題も、提出しないことがなんだというのだろう。
その分、ギリギリまで全力で遊び尽くした夏休みは、大人になった今、かけがえのない思い出で、たくさんの友人たちとの繋がりとなっている。
 
「怠け」は、その時々の、一番したいこと、つまり欲望だ。
 
ゴロゴロも、テレビも、全巻一気読みも、お菓子祭りも、その瞬間の私の正直な心の現れだ。
 
それに対する「罪悪感」は理性で、理屈だ。
 
周りの視線とか、常識とか、私が勝手に囚われたルールなのだ。
 
正直な、私の欲望である「怠け」は、必要な休息だったり、情報だったり、栄養だったり、その時に一番必要なことを、ちゃんと本能的に汲み取っている。
 
私は、自分の欲望を信じて、正直に生きていきたい。
漫画を読みたいときは、漫画を読み、ゴロゴロしたい時には、心ゆくまでゴロゴロしよう。
 
そうやって、自分の本当にしたいこと、それだけで人生を埋め尽くしていきたい。
 
怠け者には、怠け者の道がある。
そこを、とことん極めてみよう。
 
罪悪感など捨ててしまって、心ゆくまで、怠け尽くそう。
 
なにを隠そう、私は、筋金入りの怠け者である。
 
 
 
 
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2019-07-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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