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流産は必然に起こるものである


 
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記事:米澤智子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
7月中旬に流産をした。1月から不妊治療をはじめ、7回目の人工授精で身ごもった、夫との初めての子だった。妊娠8週目であったので、いわゆる「初期流産」である。
 
妊娠適齢期の女性でも、約4分の1は流産をするという。原因は、受精卵の遺伝子異常によるもので、現代医療でも食い止めることはできない。
 
妊娠は「35歳」が一つの境目だが、35歳から先、この流産率がぐんとあがることが「子どもができない」ことに繋がっている。原因は、卵子の老化など様々なことがあるらしい。
 
現在33歳の私は、この「流産をする確率」が上がっている途上であるといえる。
 
不妊治療の主治医には「初期流産はよくあることですので、深く考えないでください」と言われた。
 
しかし、1センチにも満たない我が子が、自分の腹の中で命が終わってしまったのだ。いくら「よくあること」と言われても、私は人生で初めて「我が子の死」に向き合うことになった。
 
流産をしたという現実に、私たちはどう向き合えばいいのだろうか。流産から1か月を経て、私は一つの結論を見つけた。
 
流産は「自分の人生に必要な、必然として起こるものである」ということだ。
 
流産は偶然性が高いものであることは事実だ。しかし、実際に経験した結果、私は「必然として起こったもの」という感触を持っている。
 
夫とは結婚して7年が経過している。2人だけの生活もやることをやり尽くした感があり、「そろそろ子どもがほしいね」と話していた。
 
しかし、私達夫婦はセックスレス。お互いにあまりセックスが好きではないため、セックスレスであることに不満も感じていない。だが、これでは自然妊娠はできないため、医療機関に助けてもらう必要がある。
 
したがってすぐに病院にいって妊活を始めたわけだが、調査の結果、どうやら私の卵巣は今まで積み重ねたストレス等で老化が進んでいることがわかった。卵子を育てる排卵誘発剤への反応も悪く、なかなか妊娠につながらない。
 
夫も、私の卵巣育成スケジュールに則った生活に、疑問に思っているのか、乗り気なのかイマイチよくわからない。私はホルモン剤によるホルモンバランスの激しい上下についていけず、感情的になることもあった。したがって、お互いに本当に子どもがほしいのか、深く話し合うこともなく、7月になった。
 
「この人工授精でできなければ、次は体外受精ですね」と主治医に言われ、これが最後の人工授精だと臨んでやっと妊娠できた子は、8週目で成長が止まってしまった。
 
その事実に、私より夫が大泣きしていた。これに私は驚いてしまった。
 
私は33歳という年齢と、同年代の多くが母になったという現実からの焦りから「子どもをそろそろ持ったほうがいいのかもしれない」という、今思えば「軽い」感情から妊活を始めた。しかし、夫は心から子どもがほしかったのだ。
 
この流産を機に、夫は何度いってもやめなかった煙草を一切やめた。私が病院や鍼灸に通うために家事の時間が取れないときは、積極的に家事をしてくれるようになった。治療で身体がだるいときは、何をしてほしいか聞いてくれるようになった。
 
もう夫を悲しませたくない。
 
私は、流産を機に「周りの同年代に子どもができたから」ではなく、「この夫との子どもがほしい」とまっすぐに思うようになった。
 
従って、それまで「医者に通っているのだからなんとかなるだろう」という受け身だった治療への姿勢を改めた。ヨガや運動を始めて体質改善に励むとともに、仕事もできる限り早く切り上げるようにしている。そのおかげか、最近は流産前よりはるかに体調がよい。
 
私たち二人は、結婚して一緒に住んではいるが、お互いに仕事に打ち込み、休みの日も好きなことをして過ごしている。家族というより「同居している仲の良い友達」に近かったのかもしれない。今回、流産を経たことで、初めてお互いに向き合う「家族」になれたような気がする。
 
流産経験者に向き合う、ある産婦人科医の著書にはこのように書いてあった。
 
赤ちゃんは、空の上でパパとママを見て、どこの子どもになろうかな、と選んでいる。「このパパとママの子どもになりたい」と思っても、パパとママに少々不安要素があるとすると、二人の関係を変えようと一瞬この世に降りてきて、また空の上に戻ってしまうらしい。
 
その後、パパとママの関係がよくなって安心したら、「この二人の子どもになりたい」と再びこの世に降りてきて、生まれるのだという。
 
おそらく、空に戻った我が子は「このパパとママ、本当に子どもがほしいと思っているのかな。ちゃんと二人で話し合ってほしいな」と思っていたのだろう。
 
「流産はよくあること」ではない。「偶然」でもない。流産を経て、私たち夫婦は変わった。流産は2人にとって必然であり、今必要なことだったのだ。
 
もし、今流産に向き合い悲しんでいる人がいたら、空に戻った我が子が笑顔になるように、流産を前向きにとらえてほしい。我が子は、夫婦に何かを伝えにやってきたのだ。意味のない死は一つもない。流産の意味を自分なりに理解できたとき、赤ちゃんはまたこの世に降りてくるかもしれない。
 
 
 
 
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2019-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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