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顧問の先生

【山田真哉氏特別寄稿】原作者の僕が、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』コミック版の帯を見て、これは大コケするぞと思った話


2014年12月18日に『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』コミック版が発売されました。
企画が持ち上がったのは2014年4月。
原作である『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は163万部と山田真哉の著書の中で最もヒットした作品なので、その実績を使えれば売りやすいと思いました。

また出版界では、いまやビジネスコミックが数多くつくられ、『7つの習慣』『100円のコーラを1000円で売る方法』などのヒット作が次々と出ていることも、追い風だと思いました。

今回のコミック化においては、制作自体にはあまり口を出さないと宣言していました。
ストーリー構成担当も、漫画家さんも優秀なかたでしたので、お任せした方が良いと思ったからです。

そしてその年の10月、実際に仕上がった作品を見ると、絵も可愛いしストーリーも抜群に面白い。
原作はストーリーも何もない、普通のビジネス書なので、よくもまあ漫画としてここまで上手く仕上げたな、と感動しました。

ただ「あまり口を出さない」と言っていたくせに、表紙を考える時には、結構意見を言っちゃいました。

というのも、本というのは、「面白い本よりも、面白そうな本」のほうがまずは売れると思うからです。
本で一番目立つのは、タイトルと表紙。今回の本ではタイトルは変えられませんので、最もこだわるべきは表紙ということになります。
こだわった結果、面白そうな感じの表紙になったと思います。

さあ、次は帯です。
表紙が完成した後、しばらくして、帯の案が届きました。

『会計がわかれば 人生が変わる!』

面白そうな良いコピーだとうなりました。

「自分は帯なんか見て本を買っていない。だから帯なんてどんな文言でも関係ないのではないか」
と思う方もきっと結構いますよね。
でも、お客さんは見ていなくても、書店員さんは帯を見ています。
書店員さんは忙しいので、中身を全部読んでいる暇はありません。
ですから、帯から情報を読み取って、置くコーナーや見せ方を考える、ということもあるそうです。

お客さんには届かなくても書店員さんには届いている、――帯は本と書店をつなぐ大事なツールなのです。

書店での見せ方によって、徐々に世間での認知度が上がり、全国の書店やネット書店にも広がるわけですから、帯コピーというのはとても重要なのです。

この作品のストーリーは会計を知ることで、女の子とその家族の人生が変わる物語です。
『会計がわかれば 人生が変わる!』というコピーは、まさに作品にぴったりのコピーだったのです。

―――――

印刷直前の11月28日。最終の帯付き表紙データがメールで届きました。
すると、帯コピーが変更されていました。

『会計でわかる 儲かるしくみ!』

冗談だろ、と思いました。
「会計がわかれば儲かるしくみがわかるって、当たり前じゃん!」
「会計を勉強したのに、儲かるしくみがわからないほうが問題じゃん!」
と思わず声に出してツッコミを入れたほどです。

いやいや、「会計がわかれば、儲かるしくみがわかる」ということを知らない人も
世の中にはまだたくさんいるでしょう。
そうだとしても、

『J-POPでわかる 儲かるしくみ!』
『落語でわかる 儲かるしくみ!』

とかだったら、面白そうですが、

『会計でわかる 儲かるしくみ!』

じゃ、全然面白そうじゃない……。
儲かるしくみをどうせ勉強するのなら、もっと楽しく簡単に勉強したいのに、わざわざお堅い会計から勉強したいと思う人はあまりいないですよね。
それは、会計の本を10年以上も作り続けている経験から身に染みて感じていることです。

『会計でわかる 儲かるしくみ!』
の帯コピーの最大のデメリットは、この本が最初から会計コーナーに置かれてしまう点です。
「会計」「儲かるしくみ」という文言を読んだ書店員さんは、普通に考えて、会計コーナーに置くでしょう。

最終的にはどんなコピーでも会計コーナーに置かれると思うのですが、最初の数週間だけでも新刊コーナーに置いてもらうことがヒットの鉄則なのです。

最初から会計コーナーに置かれてしまうと、そもそも人の数が少ないコーナーなので
全く目立たなくなるのです。

実は、会計本は会計コーナーに置かれてしまうと、そこからヒットを目指すのはかなり困難です。

そのため、私の会計本の中で売れた本、

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』
『食い逃げされてもバイトは雇うな』
『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』

などには、共通してタイトルに「会計」という単語は使われていません。

そして、帯コピーには、堅くて難しそうな会計のイメージを変えてくれるようなコピーが使われていました。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』→ 数字大嫌い、暗記も苦手 でも会計は知っておきたい

『食い逃げされてもバイトは雇うな』→ 1時間で読めて一生効果が続く、数字&会計の入門書
書店員さんが「これは会計コーナーにだけ置いておくのはもったいないな」と思わせるようなメッセージが必要だと思うのです。
逆説的ですが、ただの「会計本」じゃないと思わせることこそが、会計本のヒットには欠かせないのです。

ジャンルのイメージを一変させるようなタイトルと帯コピーを考える――
これはお堅いジャンルを扱う著者にとっては、共通の目標であり、共通の悩みではないでしょうか。
さて、新刊本が多い12月という発売時期を考えると、本当に面白そうなタイトルや帯コピーでなければ、なかなか新刊コーナーには置いてはもらえません。

もしも『会計がわかれば 人生が変わる!』だったら、今流行の自己啓発系のビジネス書と並んで新刊コーナーに置かれたのかもしれないのになあ、と思ってしまうのです。実際のところは、もうわかりませんが。
帯コピーをなぜ変えてしまったのかは、いまのところ原因不明です。

―――――

さて、『さおだけ屋 コミック版』のメッセージは、天狼院書店の書店員さんにはどう伝わったのでしょうか?
そして、一体どのコーナーに置かれているのでしょうか?

ぜひ、天狼院書店に足をお運びいただき、その目でお確かめくださいませ。
(どこか置かれているとは思います)

 

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2014-12-24 | Posted in 顧問の先生

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