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「熊本ですたい」

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:タムラユキコ(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
私は、東京生まれ。それも、渋谷で生まれたそうだ。東京、渋谷生まれなんて自分でもカッコ良すぎて、逆に人には言えない。そう、今の私は、どこを輪切りにしても、熊本県人だ。小学校5年生の時、父の転勤で熊本に来た。思い出すと最初の頃は、言葉がわからない(同じ日本なのに)、そしてなにより私を苦しめたのは
「東京から来た気取った子!!」という、わけのわからないレッテルだった。気取ったつもりなんて微塵もないのに、喋り方が標準語だったので、熊本の語尾を下げる独特な音での会話ができなかったのだった。きっと、私の喋り方は、テレビの中のお蝶夫人のように感じ取られていたのだろう。
そうこうしながらも、中学、高校と熊本での生活を味わい、すっかり語尾も下げ下げが馴染み、その頃には私が東京生まれなんてことは、自己紹介の要素にも無くなっていた。
高校を卒業とともに、進学でまた、東京に戻ってきたのだが、渋谷のスクランブル交差点に来ては「今日は何かのお祭りがあるとだろうね」と友達に話し、それが毎日なので、「さすが、東京は毎日どっかでお祭りがあるんだ」としばらくは、
関心しているような田舎者になっていた。
 
東京で大学を卒業し、就職し、今度は少し、都会人の自分に成り掛けた頃、不思議な感覚がずっと私の心を縛っていった。
「このまま東京で生きていていいのだろうか」と。
東京の生活が辛いとか、嫌だとかそういうものではなかった。ただただ、故郷が懐かしくなるのだ。そして、大学の時の恩師が言った
「魚はそれぞれその性質にあった水にしか生きれないものだ」という言葉が日増しに私の中で大きく重くなっていっていた。丁度、そのころ付き合っていた彼も
結婚を口にするようになっていて、私は自分の人生をみつめざるえなかった。
このまま、東京にいれば、きっと彼と結婚して、子供を東京で育てる私だ。通勤電車の中でバギーを押しているお母さんがよく目につく。公園で遊んでる親子が毎日居る。
「私にできるのだろうか。私は、そうしたいのだろうか……」
急に母の顔が浮かぶ。急に緑だらけの空き地を思い出す。急にジャブジャブ裸足で入った江津湖を感じる。
「帰ろう。故郷に」と抵抗なく私は決断したのだった。
それから、もう28年が経つ。息子と娘はそれぞれ思いっきりこの熊本で育てた。
私を戻したこの熊本の力ってなんだろう?と考えることがある。九州の真ん中で、ブランド力で言えば福岡に完敗。でも、隠れた凄さがたくさんあるのだ。
まず、何と言っても「水」阿蘇でろ過された熊本の水は、豊富で水道水ですら美味しいと飲める。次は野菜。熊本は1年中、すべての野菜が摂れるのだ。畜産にいたっても、牛・豚・鳥 どれも最高級ランクの品質。水の恵みでお酒も米も素晴らしい。ここまででも、人間が生きるために欠かせないものが最高であるというだけで、熊本ってありがたいと思えるのだが、さらに、自然の雄大さは格別なものだ。
もちろん、山の阿蘇。日本最古の神社の1つといわれる阿蘇神社も最近ではパワースポットとしても人気のようだ。
そして、海の天草。天草にかかる5つの橋。天草5橋から見る景色は1日の時間の流れとともに、それぞれ美しく変化し、日本人が海と繋がっているという素晴らしさを必ず味わうことだろう。
「熊本って何がある?」とよく東京おの友達から聞かれるが、逆に
「熊本って何知ってる?」と聞くと、だいたい「からし蓮根、馬刺し、水前寺清子」と言われる。しかし実際は、からし蓮根もなかなか食べないし、馬刺しもわざわざ買いに行く程度だし、森高千里もいるし なのだ。
私が熊本の良さを言うなら、「能ある鷹は爪を隠す」県だと言いたい。
人間が生きる上での当たり前の物や事が、実は最高級レベルだということだ。なのに、それをうまくPRできない県民性である。これを含めて熊本県なのだ。
私はこんな自然豊かな贅沢な県を故郷とできた。何も無いといえば何も無い。
退屈といえば退屈しかない。
でも、それぞれの地域が個性を持っていていいのだと思う。
あの忘れられない熊本地震から早、4年目に入る。まだまだ、傷跡が残る熊本ではあるが、確実に復興へと進んでいる。あの経験が、当たり前の恵みだったことすべてに感謝する機会となった。そして、熊本を愛する自分を感じた。
 
地震を経験後、進学で上京した娘は、東京の友達に出身を聞かれる度に
「熊本ですたい!!」
と言っているそうだ。カラコンして、背伸びしたファッションに身を包んで
田舎者からの脱却に精を出している彼女が そこだけは熊本弁なんだと
少し嬉しい気がする。
 
 
 
 
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2019-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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