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「惜しい!」がベスト


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:中村夏子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「〇〇ちゃん、惜しい!」
「たくさんできてるよ、〇〇ちゃん。ここだけ惜しいね!」
 
私の算数教室での指導の風景である。
正解できなかった箇所に対して、決して「違う」と言ってはいけない。
 
なぜか?
それは、大人でもそうなのだが、面と向かって否定されて、気分のいい人などいないはずである。よもや相手は小学生。この世に生まれて、まだ10年いくかいかないかの存在である。
 
その子どもなりに、小さなで手で一生懸命解いた答えである。その努力過程に対しても「違う」はきつい一言になる。
 
「違う」と頭から否定されれば、「もう勉強なんて嫌い」「やりたくない」となるのは、間違いない。一番やってはならないのは、算数嫌いになって、他の教科の勉強も嫌いになって、そのまま中学に上がるパターンだ。嫌いな上に、難しくなり、ついにはやる気はなくなってしまう。
 
算数でいえば、簡単な方程式は小学6年生のカリキュラムに下りてきているとはいえ、中学1年生の「算数」ではなく、「数学」というのは子どもにとってハードルが高いものである。そこに、算数嫌いのマインドがあっては、習熟も厳しくなる。
 
子どもにとって学校に行くことが仕事であるならば、放課後の算数教室は残業である。
私の教室に時間どおりにやって来ること自体が、既にハナマルをつけるほどの偉さ、なのである。
 
しかし、間違いをなおしていくのが勉強というもの。なんと言って、傷つけず、間違いをなおさせるか。
 
その魔法の言葉が「惜しい!」である。
 
「惜しい!」といって説明すると、子どもの口から「あ、そういうことか~」という言葉がこぼれる。子どもなりに、腑に落ちた瞬間である。
その表情は、少し嬉しそうにさえ見える。これが学ぶ楽しさ、というものではないだろうか。
 
「否定されない」ということは「ここは安心で安全な場所だ」と子どもたちは感じ取ってくれる。そうすると、
「今日の給食、ジャイケンに勝って、おかわりしたんやで」
「ママがな~、こんなこと言ってた」
など私に雑談を始める。
 
算数教室に、初めて来た日からすぐにはこうならない。子どもたちが皮膚感覚で、この教室、そしてこの先生は「安心安全」と感じてくれないと、この雑談はできないのである。
 
話の内容はさておき、雑談は、子どもが発する「ここなら落ち次いで勉強できるよ」という大きなサインなのである。ここを見落としてはいけない。このサインが出始めてから、その子の苦手な分野のプリントを少し増やす。間違えた問題に、×はつけない。空白にしておく。できたところには赤で大きくマル。子どもは×が嫌いだ。「違う」という否定を記号で書いてあるからだ。
 
さらに、実のところ雑談は、大切な情報も得られる。
それは、その子が、どれだけ言葉のシャワーを浴びできたかという語彙力、話したい出来事を文章にまとめ上げる力、ご家庭での人間関係、人の話を聞く力、など、結構重要だ。算数を勉強することには関係なさそうだが、人の話を聞いて、まとめる力が弱い子は、文章問題が苦手だ。話を聞く力の先に、文章を読む力があるからだ。そういう子には、やたらにたくさんの文章問題をさせるのではなく、基本的な問題にしぼって、ゆっくり、しっかり解かせる。
 
算数では、計算過程、考え方、などつまづきがちなところは、たくさんある。要は、それを、「違う」と否定するのではなく、間違えたことを「受け止める」ことなのである。
 
この子は、このパターンの計算が、どうも苦手なのだ、ということであり、別の子は、この単位について理解が不十分なのだと、受け止めることである。決して否定することではないのだ。間違いを「指摘」したり「叱責」するのではなく、間違いを「受け止める」、その後正しいやり方を話す。
 
苦手分野がすぐにできるようになることを望む親御さんもいらっしゃる。結果を急がないこと、子どもを急がせないことが、大切である。小学校は6年間もある。簡単にすぐできることなら、小学校に6年の月日は必要ないはず。急がせて嫌いになられたら元も子もないのだ。
 
否定せず、受け止めて、少しずつ進む。それが一番だと感じている。
 
これはすべて大人同士のコミニケーションでも同じである。いや、大人も同じ、ではなくて、子どもも立派な一人の人格なのである。
 
「今日は頑張ったな~」と言いながら、1時間の算数の勉強を終え、子供たちは帰り支度を始める。ささやかながら、充実感を胸に家路についてくれる。
 
理想としてよく言われることだが、「楽しく学びながら基本的な学力を身につける」とは、とても抽象的だ。
日々の授業では、楽しく雑談しながら「あ~、そういうことか」が聞こえることなのではないだろうか。
 
 
 
 
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2019-11-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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