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カーテン難民が最後にたどり着くのは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 椿 (ライティング・ゼミ 特講)
 
 
「家の中が外と同じ気温じゃん。寒すぎるよ!」
遊びに来た友人は、ぶるぶると震えながら不満を口にしていた。
 
引っ越したばかりの築40年ほどの古い木造アパートにはまだカーテンをつけていない。
5畳のキッチンと6畳の居室があるそのアパートは、角部屋で大き目の窓が2つあることと、世田谷の住宅街にある割には家賃が格安だったことが決め手だった。
 
正直言ってカーテンはなくてもいいと思っていた。どちらの窓もすりガラスだったからだ。
おまけに道路側から一番奥に入った部屋で、窓の外は隣の敷地の庭に生い茂る木のおかげで人目に触れることもなかった。
 
でも寒い。寒すぎる……
カーテンが無いとこんなにも寒いのだということを初めて知った冬だった。
 
気温が10度を下回ると、窓に結露が発生した。
すると驚くほど洗濯物が乾かない。
仕方がないので、除湿器を買いに行った。
今思えば順番がおかしい。
 
除湿器をつけると洗濯物が早く乾くような気もしたが、いつまでたってもカラッと乾くことはなかったので、気のせいだったのかもしれない。
 
朝は地獄のように寒いアパートだった。
耐えきれなくなったので、布を買いに行った。窓からの冷気を遮断するためだ。
安いカーテンを買ってくればよいものを、なぜか手作りしようとしたのだ。
今思えばなぜそこまでカーテンを拒絶していたのか謎だ。
 
当時、インテリアにおかしなこだわりを持っていた私は、気に入った布が見つけられず、結局買わずに帰ってきた。
そこで、はっと思いだした。
 
「カーテンあるじゃん!」
 
それは数年前、イギリスに旅行した時にマーケットで買った1950~60年代くらいのヴィンテージの布だった。大好きな建築家「フランク・ロイド・ライト」の写真集に出てくるような幾何学模様のテキスタイル。
布として気に入って買ったが、カーテンであることはわかっていた。ヒダのない「フラットカーテン」というやつだ。
棚の目隠しなどで使ったことはあったが、本来のカーテンとしてやっと使えるではないか! そう思い早速かけてみた。
 
サイズが合わない……
窓の半分しか覆えていない。
今思えば、かけなくてもわかったことだった。
 
結局、幾何学模様のカーテンはあきらめ、無難な布を買ってきて頑張って手作りした。
それも、ひと窓で力つきてしまい、もうひと窓は安いカーテンを購入した。
カーテンがついている窓は急に「きちんと」して見えた。
そして、明らかに暖房の効きが良くなった。
 
カーテンは人目を憚るためにかけるものだと思っていたので、カーテンって重要なのだと初めて知った経験だった。
 
その後、実家に戻ることになり、カーテンを自分で選ぶという経験はしばらくなかった。
築40年以上の木造住宅で、風通しはいい。
実家にはすでに親が選んだポリエステルのカーテンがついている。厚地もレースもどちらもかなり痛んだ状態で、掛け替え時期をとっくに過ぎている。
 
ただでさえ、劣化して自然に切れ始めていたところへ、飼い猫が窓の外の鳥に興奮し、カーテンにジャンプしてぶら下がった。重みでカーテンレールはひしゃげ、レースのカーテンはズタズタに切れてしまった。
 
そこで再び「カーテンをどうするか」問題が発生する。
 
できればカーテンにお金をかけたくない。他に欲しいものがあるからだ。
カーテンより、素敵な椅子が欲しい。
カーテンより、便利な家電が欲しい。
カーテンより、おしゃれな洋服が欲しい。
そんな風に思っていた。カーテンが嫌いなわけではないが、カーテンより魅力的なものがたくさんあるからだ。
 
逆にいうと、素敵なカーテンを知らなかった。わりと最近までは。
 
でもリネンカーテンを知ってしまった。仕事で触れることが多いからだ。
化繊のカーテンも決して悪くないけれど、リネンの良さは別格だ。
猫にズタズタにされた大きな掃出し窓のカーテンを、リネンカーテンに変えることにした。
 
白いリネンのカーテンをかけてみると、部屋が見違えるほど素敵に見えるようになった。
ワンランクアップした感じだ。
均一ではない光の透け方、触り心地、質感、すべてが素敵だった。
 
特に、お天気の良い日の昼下がり、風をうけてリネンのカーテンが揺れる様子はなぜだかとても癒される光景だった。もともと好きだった自然素材の家具や絨毯ととても良く調和する。
「カーテンに癒される」なんて思いもよらなかったが、肌で感じる空間の心地良さは驚くほど変わった。
 
カーテンに無頓着だったくせに、「インテリアにはこだわりがある」などと思っていたことが今となっては恥ずかしい。カーテンのことを知らな過ぎて、カーテン難民だったのだ。
 
しかし、「カーテンのことが大好き」という人にはなかなか出会わない。(仕事にしている人は別として)
きっとみんな、カーテンのことがわからないからだ。
サイズを自分で測るのは少し面倒だし、ヒダの数とかフラットとか、選択肢がたくさんあってどれを選んだらいいのかわからない。人生、他に考えなきゃいけないことが山のようにあるのに。
 
でも、自分の五感を信じて物を選ぶという行為は大切だ。少しの面倒を乗り越えたとき、その結果の満足度、幸福感は想像以上に大きいからだ。空間の感じ方には素材が大きく影響することもわかる。カーテンは奥が深い。
 
リネンカーテンは私のようなカーテン難民が最後にたどり着く窓辺にぴったりなのかもしれない。
少しずつでいい、家中のカーテンをリネンに変えていこう、と思っている。
 
 
 
 
***
 
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2019-12-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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