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卒園式に想う 先生の愛情 親の愛情


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:渡辺まほ (ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「僕ね、沢山の幼稚園で歌を教えているんです」
「ええ」
「3学期は卒園式がありますからね、子供たちに式中で歌うお別れの歌を教えてるんですよ。でね、幼稚園によっては、式中に泣いてはいけないっていう指導をする園もあるんです」
「え? それはなぜですか?」
 
3月14日。
娘の通う幼稚園で卒園式が執り行われた。
娘は年少組。私は幼稚園の父母会役員をやっている。
今年は新型コロナウイルスの影響で卒園式の式次第が縮小され、例年なら式に参列する在園児、役員、双方とも参列しなかった。
しかし、園長先生の計らいで、式の後に実施される園の職員と父母会役員の慰労会は、料理がオードブルから弁当に変わったものの、開催された。
 
私の隣には、外部から子供たちに定期的に音楽を教えてに来てくれている斎藤先生が座られていた。
保育参観にて、先生の子供たちへの音楽指導を拝見したことがある。
187㎝もある高身長を活かして、保育室に入るところから、扉の欄干におでこをぶつけるというパフォーマンスをして、子供たちも見ていた親も大笑い!
自分がボケては子供たちの心を鷲掴みにする、楽しい先生だ。
 
「泣いちゃうと声が出なくなっちゃうでしょ? だから感情を抑えなさいっていう指導をする園もあるんですよ。こちらの園ではないですけどね」
「それは子供にとっても酷ではないですか?」
「そうなんです。女の子なんて泣いちゃうんですよ。でも、泣いちゃいけないって言われているから、一生懸命泣くのをこらえて歌ってるんです。でね、その顔見て、胸が締めつけられて僕もダーって涙が出ちゃって。子供たちそれをちゃんと見ていて、あとから『先生泣くなっていったのに、泣いてるー』って言われちゃうんです。『ごめんね』って言ってます」
 
ただでさえ、一生懸命な姿に心を打たれるのに、涙を流すまいと必死にこらえて歌っている子供の姿。
想像するだけでこちらも泣けてくる。
 
「僕、結婚はしてますけど、子供がいないんです。だから卒園式で親御さんたちが泣いていらっしゃるのを見ると『あーいいなあ、羨ましいな』って思うんですよ。大勢の子供たちに教えていて、それぞれ想いはありますよ。でも、自分の子供だと全然違うものなんだろうなって思うんです」
 
毎日、沢山の子供たちに触れている先生からしても「自分の子供への気持ち」というものは想像ではカバーできないものなのだろう。
 
思えば子どもを産む前の私もそうだった。
 
私は母と仲がいい。
独身の頃は、仕事で長期休みが取れそうなときは母を誘って旅行に行っていた。
桜の季節に弘前城に行ったり、一緒に上海旅行に行ったり。
気兼ねしなくてよい相手で、一緒にいて楽だった。
結婚してからも、夕食で作りたいもののレシピが思い出せなかったり、子育てのことで悩みがあると電話して相談をする。
そんな母が私を思う気持ちというのは、私が母を思う気持ちと一緒だと感じていた。
暖かいお風呂のように、さらっと包む優しい愛情。
母親の、子にたいする情とはそういうものだと思っていた。
 
しかし、いざ自分が妊娠してみると、どうもそういうものではないらしいということに気づいた。
自分が食べた物が、体の中で消化され栄養となる。
栄養が血液にのって、胎児に届けられる。
その栄養をもとに胎児がすくすくと育っていく。
すごく小さかった卵から、細胞分裂をしていって、顔や体、手足がだんだんとはっきりしてくる。
妊娠20週を過ぎれば動くようになり、自分のおなかを蹴ったりする。
こういった時間を10か月も過ごすと、実際には初めから別の個体なのだが、自分の血肉を分けて子供を創っている錯覚に陥るのだ。
 
そして産んだ後、私が子供に対して抱いた愛情は、ハチミツのようだった。
スプーンですくうと、とろーっとまとわりつくハチミツ。
あのように、自分から離れていく子供に対して、自分の体を慈しむかのように粘着質な愛情が生まれた。
それは、子供に対して期待や干渉という形でのしかかる。
想像していたように、さらっとしていたものではなかったのだ。
 
だからこそ、子供には親以外の大人の愛情が必要だ。
親の愛情は時に重すぎることがある。
それに耐えられない子もいるだろう。
そういう時に、さらっと温かく見守ってくれる幼稚園や学校の先生、親戚、近所の大人、習いごとの先生が子供たちを救ってくれるはずだ。
 
だから、斎藤先生にはこう答えた。
「そうですね、確かに違うと思います。我が子がすくすく育ってくれたっていうのは親にとっては自分のことのように嬉しいんです」
「でもね、先生。親は、子供に対する見方が厳しくなってしまいます。いたずらにしてもね、ほかのお子さんがやっていたら可愛いわねっておおらかに思えることも、自分の子供だと『どうしてあんなことするの!』ってなってしまって、そうもいかないんですよ。だからね、先生たちのように、ほどよい距離で大らかに見守ってくれる方たちが子供たちには必要なんです。親とは違う立場で子供の声を聞いていただいて、今後とも暖かい気持ちで見守ってください、どうぞよろしくお願いします」
 
斎藤先生は、ふっと微笑んでくれた。
 
娘の卒園式は2年後。
娘は、先生方は、私は、どんな卒園式を迎えるだろう?
 
外には季節外れの雪が舞っていた。
 
 
 
 
***
 
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2020-03-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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