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メディアグランプリ

徒歩5歩で、自分探しの旅から抜け出す


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中川誠斗(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
自分がなかった。
 
小学生のとき、ローラースケートが流行った。ブーツ型の、足の裏にタイヤがついているアレだ。友だちが買ってすぐ、僕も親に買ってもらった。その後すぐに、今度はキックボードが流行りだした。スケートボードにハンドルがついているようなヤツ。それも友だちが遊んでいるのも見て、僕もまた親に言って買ってもらった。面倒な子供だったと思う。
 
その調子はずっと続いた。友人がカードゲームを始めたら僕も始める。友だちが地元のサッカー少年団に入ると聞けば、自分も参加した。
 
中学生になると、部活動が始まった。サッカー少年団は小学校と同時に卒業したが、中学校でもサッカーを続けようか迷った。中学校のサッカー部はとても厳しいと噂されていたのだ。この際、別のスポーツにしようとも考えたが、だからといって「何がやりたい」という意思はなかった。だから、クラスで仲良くなった友人に相談した。彼は陸上部に入りたいと言う。一緒になって、僕も陸上部に入った。
 
教育熱心な家庭に育ったこともあって、高校生になってからは勉強ばかりの日々になった。遊んだ覚えはあまりない。進学校だったから、みんなも勉学に励んでいた。
 
ここで勉強した科目の中で、特に「生物」が好きになった。細胞分裂の仕組みや神経のはたらき、アレルギーが起こる理由など、人体に関する興味関心に火がついた。なぜかと考えれば、当時は「昔から生き物が好きだったから」という以外に思いつく理由はなかったが、本当はその下に、もっと深いところに大きな理由が横たわっていたと知ったのは、それから10年以上経ってからだ。
 
友だちの持っているものが欲しい、友だちと同じ部活に入ろう。そうしているうちに、僕は、僕自身のことが知りたくなっていった。僕はいったいどういう人間なんだろうか。そのときからすでに、自分探しの旅は始まっていた。
 
受験を乗り切り、大学に進学した。勉強はしなくてはならないが、自分のやりたいことができるようになった。門限もない。お小遣いはアルバイトで稼げる。教育熱心な親もやっと落ち着いてきて、僕はようやく自分の羽を広げられる気がしていた。
 
ところが、やりたいことは何1つとしてなかった。急に、途方もなく広がる草原に放り出されたヒツジのようだった。僕の大学4年間は、単位取得のための最低限な勉強と月収3万円くらいのアルバイト以外には、暇つぶしの映画鑑賞とゲームだけで終わってしまった。やりたいことを見つけるんだと意気込んで、あえて部活やサークルには入らなかった。そうして過ぎ去った4年間は「特に何もなし」という、書いていると泣けてくる結果となった。
 
だが、しかし。こんな何の取り柄もない人間にも、生きていると転機がやってくることがある。それは社会人3年目の8月。ちょうどお盆休みも終わりに差し掛かり、「あぁ、今年のお盆休みもまたロクでもない日々を過ごしてしまったなぁ」と自己卑下していたときだった。
 
カメラを手にして街を歩き、気になったものをひたすら撮りたい。そう思うようになったきっかけはわからないが、いつしか街中で撮影に没頭する姿をイメージしていた。でもお金がかかる趣味だからと言って、カメラを買うのはずっと敬遠していたことをふと思い出したのだ。お盆休みの最終日、僕は急いで家電量販店へ駆け込んだ。高い買い物であることを自覚するために、20万円を新札で用意し、レジで現金払い。憧れのカメラを手に入れた。
 
それからの週末はとたんに楽しくなった。暇つぶしだった映画やゲームばかりの日々から一転し、外に出て気になったものを撮り歩くようになった。日陰に隠れて咲いている花、太陽がみせる不思議な影のかたち。近所であっても、こんなにも知らない景色が周りにあったことに驚き、感動した。週末を迎えるたびに、写真を撮ることがどんどん好きになっていった。
 
今は、カメラを手にしてからそろそろ3年になろうとしている。相変わらず近所を中心に撮り歩歩く日々だ。未だに驚きがあり、感動がある。だが写真撮影の楽しさは、何もそれだけではないと思うようになった。自分の発見そのものだと感じるようになったのだ。
 
たとえば、日陰に隠れていた花の存在に気がつき、それを撮る。その写真には当然花が写っているが、もう1つ「その花の存在に気づいた自分自身」も写っていると思うのだ。
 
レンズの向こう側は何でもいい。花でも空でも、交差点の人混みでも同じだ。その全てに「それを見つけた自分」がいる。いつも近所を1人で撮り歩いていたから、友だちが教えてくれたわけでもないし、誰かのマネをしたわけでもなかった。それを知ってから、僕は撮りながらこう思うようになった。
 
「自分はこんな景色にも気がつける人間なんだな」
 
「こんな風景に面白さを感じる人間だったのか」
 
自分探しの旅は、こうして自覚なしに終わっていた。しかも家の近所で。灯台もと暗しとは、こういうことなのかもしれない。
 
高校生のとき「生物」が好きだったもう一つの理由。それは、自分という存在を解き明かそうとする試みが、自分自身を知ろうとする気持ちと共鳴していたのだと思う。それは今、写真と撮ることによって満たされていた。
 
自分探しの旅が続いている人へ。もし旅に疲れてきているのなら、写真撮影に出かけてみよう。遠くへ行く必要はない。近所で十分だ。ひょっとしたら、家を出て徒歩5歩で終わってしまうかもしれない。被写体に気づいたあなたは「気がつけた自分自身」を探し当てたのだ。
 
写真を撮ることは、自分探しの旅をクリアする1つの方法なのだと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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