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ソーシャルワーカーは人生のスマートフォン


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:中島大樹(ライティング・ゼミ5月開講通信限定コース)
 
 
「ソーシャルワーカー? ナニソレ?」
ソーシャルワーカーと名乗った彼女はニコニコしながらこちらを見つめていた。
 
「ソーシャルワーカーは例えるならスマートフォンなんですよ!」
と人差し指を立てながら前のめりで説明してくる彼女。
 
なるほど。よくわからん。
でもこれだけはわかる。
彼女はぼくの手助けをしてくれる存在であるということ。
 
大学を卒業し、晴れて4月から新社会人としてある大手企業の営業職として入社したのだが、仕事についていけず上司にはいつも怒られてばかり。
おまけに残業も当たり前で終電で帰宅するなんてこともザラにあった。
 
終電で帰宅した日には夕食を食べる気力も湧かず、帰ったらそのままベッドへダイブ。
朝には重たい瞼を何とかこじ開けてシャワーを浴びて出社。
何のために自宅へ帰っているのかもよくわからない状態の日々が続いていた。
 
入社して半年が過ぎたころ、突然朝ベッドから身体を起こすことができなくなった。
何とか電話をすることはできたので、最初は体調不良を理由に休ませてもらっていたが、それが何日も続くこともあり有給休暇もなくなってしまい、いよいよ誤魔化せなくなってきた。
 
「いやーそれが何故かベッドから身体が起こせないんですよねー」なんて言って納得してくれるような会社ではない。
 
友人に相談した時には「それってストレスなんじゃない? 一回病院に行った方がいいよ」と言われていた。
 
こういう場合は心療内科になるのか?
なんだか行きにくい。
 
しかし、そうも言ってられなくなってきたので、最後の有給休暇の日に病院に行くことにした。
 
「うつ病ですね」
「診断書出すので明日から仕事休んでください」
 
病院の先生は当たり前のようにそう言い放った。
 
病院をあとにしたぼくはこんな紙切れ一枚で休ませてくれるんだろうか?
というかなんて話をすればいいんだろう?
と逡巡していたところに会社からの電話が鳴った。
 
出るかどうか少し悩んだものの後から電話をすることを考えると憂鬱になり、電話に出た。
「お前明日から出社できるのか?」
開口一番上司はそう言った。
 
正直にぼくは「うつ病だったんです」と言った。
 
少しの沈黙のあとに
「それはお前、他の社員だってしんどいんだぞ?」
「お前だけじゃない」
「それはお前の根性が足りないだけじゃないのか?」
 
そう矢継ぎ早に言われ、どう返答していいのか困っていると最後に
「で、どうなんだ明日出社できるのか?」
と聞いてきた。
 
ぼくは「無理です」と反射的に言っていた。
 
「じゃあもう辞めた方がいいんじゃないか」
そう言われて、自分でもそうかもしれないと思ってしまった。
 
退職の手続きは全て郵送で行われた。
不幸中の幸いか会社には一度も行くことはなかった。
 
しかし一人暮らしで貯金もたくさんあるわけではないので、このままでいいわけはない。
実家には心配をかけたくないので、早く次の仕事を探さなければと思った。
 
病院の先生は焦らず治療に専念した方が良いと言っていたが
「仕事をしないと生活できません」と伝えた。
 
「病気や障害のために働けなくなった人をサポートしてくれるサービスもあるから」
「まずは紹介するから相談支援事業所に相談してみなさい」
 
「相談支援事業所?」
 
よくわからないなと思いながら先生に言われた場所に相談に行ってみることにした。
 
つむぎ相談支援事業所と書かれた看板の建物に入ると大きな受付カウンターが目に入った。
近づいていくと、ぼくの存在に気づいてカウンターの奥から明るい雰囲気をまとった女性が近づいてきた。
 
「あの、心療内科の先生に紹介されて……」と名前を伝えると
「先生から聞いていますよーお座りください」と着席を促してきた。
 
うつ病に なって仕事を失ったこと
貯金も少なく生活に困っていること
今後自分が働いていけるのか不安なこと
 
ソーシャルワーカーと名乗った彼女は時折相槌をしながら静かに聞いてくれた。
 
「まずお仕事に関しては就労移行支援事業所という就職をサポートしてくれたり訓練してくれる場所があるので、そこに一緒に見学に行ってみましょうか」
「え、一緒に行ってくれるんですか?」
「もちろんですよー!」
彼女は笑顔で言った。
 
「それとお金に関してはハローワークで申請すると失業手当がもらえるので、それで生活していきながら病気の治療と就職の準備を進めていきましょう」
そう言われて、すごく安心した。
 
「じゃあ来週の月曜日駅で待ち合わせて見学に行ってみましょうね」
「あ、はい、ありがとうございます」
 
「あの~結局ソーシャルワーカーって何なんですか?」
「あ、気になります~?」
と言いながらこちらの返事を待たずして彼女は話しはじめた。
 
「ソーシャルワーカーは例えば病気とか障害のある人や虐待を受けている人とか貧困に陥った人、生きていくうえで何かしらの困難を抱えている人をサポートしてくれる人なんですよー」
「日本ではまだまだ知名度が低いですけど、福祉施設はもちろん、病院とか学校にも配置されている身近な存在なんですよ!」
 
「でもぼくは今までソーシャルワーカーに出会ったことないんですけど」
 
「ほんとにそうですか~? 多分気づいていないだけですよー病院とかだと白衣着ていたりしますし」
「ソーシャルワーカーって普段目立たないんですけど、困った時には目の前に現れて、こっちだよーって教えてくれたり、こうすればいいよーって教えてくれたりするんです。それってスマートフォンみたいじゃないですか?」
 
その時は彼女の説明を聞いてもあまりピンときていなかったが、その後紹介された就労移行支援事業所というところへ行くことになり、それに付随する手続きもほとんど彼女がこなしてくれた。
失業手当ももらうことが出来て一先ずの生活の不安はなくなった。しかも治療費も無料に出来る制度があるということで、それらの手続きもしてくれた。
 
その後、うつ病の症状は落ち着き、就労移行支援事業所に通いながら就職活動をして、1年後に無事再就職をすることが出来た。
しかも就職先は福祉職だ。
 
今まで働ければ何でもいいと思っていて、これを仕事にしたいと思ったことがなかった。
でも、就労移行支援事業所に通っていくうちに、何よりソーシャルワーカーと名乗る彼女に出会ったことで、何のために働くのか? を考えた。
 
今なら彼女がソーシャルワーカーはスマートフォンだと言った意味がわかる。
ソーシャルワーカーは人生で壁にぶつかった時に
どうしていこうか?
こういう方法もあるよ!
こっちの道もあるよ!
と一緒に考えてくれたり、様々な道を指し示してくれる存在だ。
 
ソーシャルワーカーは人生のスマートフォンだ。
 
あなたにも今は見えていないかもしれないけど困った時にはきっと助けになってくれる。
 
そんなソーシャルワーカーという存在にぼくは惹かれてしまったんだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-06-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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