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メディアグランプリ

本音探しは金魚すくい


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:イマムラカナコ(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
「そうだね。言いづらかったんだね。」
私がそう言うと、受験生の娘は、少しホッとした顔をした。どうすれば、彼女の本音を聞きだすことができるのだろう。
受験生になって、目に見えぬプレッシャーと闘っていたのだろう。志望校を迷いなく目指していると思い込んでいた私に、自分の志望が変わったことを、なかなか言えずにいたらしいのだ。一度決めたことを覆すことに、きまりの悪さを感じていたのだろうか? まだまだ私がすくいきれていない本音がありそうだ。
 
本音を聞き出すことは難しい。
だって、本音を語ることは恥ずかしい。相手に自分の触れられたくないところをこわごわとさらけ出さなくてはならない。
 
前職で、私は相談業務に就くことがあった。
様々なバックグラウンドを持った、様々な人達。ジェネレーションギャップを感じることもあったし、あまりの環境の違いに、感覚がついていけないこともあった。いきなり怒りを露わにする人。泣き出す人。ただ不満をぶつけたい人。私が常識と思っていたことが、ことごとく覆されていく。私の方がおかしいのかと思ってしまうことも、しばしば。
 
私はカウンセラーでもないし、そのような専門的知識もない。相談者の悩みや不満を解決できる訳ではない。
だから、私にできることは、聞き役に徹することだけだった。ただ話し手が話しやすいように、安心してくれるように。そして相談者の話を肯定的に聞こうと努力しながら。また、その人がどう感じているか探りながら。
 
件数を重ねるうちに、どうアプローチしたらいいか、自分なりのスタンスが見えてきた。話している間に、ふとその人が鎧を外す瞬間がある。そのタイミングでようやく本音が見えてくる。話していくうちに、自分の気持ちを整理できる人も多い。方向性が決まったら、ようやくスタートライン。やっと本来の私の業務が始まる。
 
もちろん、うまくいくときばかりではなかった。本音を晒してしまったことに気づき、慌てて取り繕う人。本音を突かれて激怒する人。たまたま功を奏し、前向きな解決へ向かっていく人を見たときは、こちらが有難い気持ちになった。真剣に向き合わなければ、見透かされる。だから、話終わった時にはクタクタだった。
 
幼い頃から、私自身は人に相談するタイプではなかった。どちらかというと、自己完結。自分でいつの間にか決めているタイプ。私の母は、忙しい上にサバサバした性格もあって、私の話をじっくりと聞くよりは、バッサリ切ることが多かった。
そして決まって言う言葉は、そんなことで悩んでどうする。考えても仕方がない。
今思えば、それが母なりの精一杯のエールだったのだろう。でも、その頃の私は、話を聞いて欲しかっただけ。母に話すことで、自分の頭を整理したかったのかもしれない。けれど返ってくる言葉が想像できるから、あまり本音を言わなくなった。
 
本音を引き出すことは、まるで金魚をすくうことだ。
 
意外と金魚すくいは難しい。まずはリラックス。それからポイを沈めるタイミング、金魚をすくう角度、ポイを上げるタイミングを考えなければならない。どの金魚を狙うかでも成功率が変わってくる。
 
本音をすくうことも同じだ。
まずは話しやすい雰囲気づくり。それから傾聴すること、話の整理整頓、気持ちを話しても大丈夫と思える安心感を与えること。あくまでも口調は穏やかに。そう心がけると本音に触れる確率が上がる。
 
ところが、いざ自分の子どもとなると冷静ではいられない。客観的ではいられなくなるのだ。暑苦しいスイッチがとたんに入る。自分と同じ失敗をしないよう、聞かれもしないのに、ついついお節介なことを言ってしまう。子どもが話したいと思っていることよりも、自分が子どものためになると思うことを優先してしまうのだ。
そのせいで、子どもは思っていることを言えなくなる。私が言いそうなことが、想像できるからだ。
これでは、まずい。これでは、私の子供時代と変わらない。私は他人の話を聞く時のように、聞き役にならなければならなかったのに。
 
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、娘は随分と長い春休みを過ごした。家にいる時間が長かったこともあり、娘と私は一緒におやつを食べるのが日課になっていた。一緒に甘いものを食べることは、普通に話すよりもフランクに言える雰囲気づくりに一役買ったようだ。
 
少しずつ自分のことを語りながら、こんなこと言っていいのかなと躊躇する娘。
今こそ、唯一のスキルを発動する時だ。落ち着いて熱くならずに、辛抱強く。
 
そんなことが続いたあと、前よりも娘の本音を聞く機会が増えた。
親には言えないこともあるだろう。言いたくないだってあるだろう。
でも娘よ。もうすぐ親元を旅立つであろうあなたにとって、私はちょっとでも金魚すくいが上手くなりたいのだ。
幼い頃、私が母に聞いてもらいたかったように。迷ったとき、考えがまとまらないとき、話してみようと思ってくれるように。
少々暑苦しいが、私の気持ちは伝わっているらしい。少し落ち着いたら、彼女の選択について、もう少しありそうな本音をすくってみようと思う。
 
 
 
 
***

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2020-06-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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