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主人公でなくなった僕が選んだ第2章


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:フジタシン(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
タカタンタン、タンタンタタタタン♪
 
午前11時にセットされたiPhone6のアラームが、部屋に鳴り響く。
 
もうこんな時間か。それにしても頭痛が酷い。
 
枕もとに置かれたバファリンを、飲みかけのペットボトルの水と共に流し込む。
 
昨日は何をしたんだっけか。
 
「華金だ!」
と叫びながら会社を飛び出し、居酒屋で浴びるようにビールを飲み、六本木のクラブに移動した。知らない人たちとテキーラを乾杯したところあたりから記憶はない。
 
嗚呼、頭が痛い。
シャワーを浴びて、Tシャツとジーパンを履く。
 
朝ごはんを探しに行こう。
 
1Kのアパートの部屋から出て、牛丼を食べに松屋へと向かう。
食券を買うときになってもう一度考え直し、結局カレーを注文した。
 
バファリンが効いてきた。
今日から3連休。何しよう。
 
このまま本屋に行って、カフェで勉強しようかな。
明日は同僚とキャンプに行くんだった。買出ししないとな……。
 
土曜日になると、この朝の出来事を思い出す。
あの頃は、自分のペースで思い通りに生きていれば良かった。
 
今は郊外に2LDKのマンションを借り、妻と生後間もない娘と住んでいる。
 
平日も土日も関係なく、朝は6時半に起きる。娘にミルクを飲ませる時間だ。
夜中のギャン泣き娘と格闘してくれた妻を起こさないよう、娘をベッドからそっと抱え上げる。
 
リビングでミルクを飲ませながら考える。
今日から3連休。
アカチャンホンポで子供服を選ぼう。オムツも足りなくなってきた。
そういえば冷凍食品も買い込まないと……。
 
「子どもができたら、自分が主人公である人生の物語が崩れ去ってしまう」
 
こういう話よく耳にする。
子どもが産まれたら、時間と労力の全てを子どもに注がねばならない人生に変わる。自分のペースで好きなことをする生活では無くなるということだ。
 
結婚だってそうだ。
「結婚は人生の墓場」と言われるではないか。
健やかなる時も病める時も、六本木でオールして泥酔した翌朝に松屋に行ってカレーを食べることは、許されないことだ。
 
結婚したら。子供ができたら。
自分で決めたこととはいえ、自分中心の物語がそこでパタっと終わってしまって、主人公ではない脇役としての人生を選ばなければならないのだろうか。
 
しかし、僕は諦めたくなかった。
 
そこで3か月の育児休業を会社にお願いすることにした。これまでの自分の物語が終わるなら、別の物語をきちんと作るべきだと思ったからだ。
 
仕事をしていると、「結婚したから」、「子どもが産まれたから」と言って、生活のスタイルをガラっと見直すのは実はとても難しい。
 
特に男性の場合、会社に出生届を出したところで「おめでとう」の一言で、仕事内容は変わらないし、働き盛りの年代であれば、立ち止まって考える余裕も与えられない。
 
その流れに身を任せていると、仕事の都合でなかなか子育てには慣れず、妻からは反感を買う。家庭に居場所がなくなるとストレスがたまり、外へ飲みに行ってしまい、さらに家族の反感を買う。よくあるバッドストーリーだ。
 
子どもがいる生活という新しい物語を、決して子どもに滅私奉公するだけの人生でも、家庭に居場所を失うような人生でもないようにしたい。そのために家族のことを真剣に考える時間が必要だと思った。
 
休業して、毎日家事や育児をしていると気づくことがめちゃくちゃある。
 
まず、妻の性格や考え方のことである。
共働きで、お互い仕事があり忙しい生活をしていると、実は分かっているようで深くまで知らないことが多いことに気づかされた。
部屋を散らかすときは、心に余裕がないときだ。甘いものを食べながら話を聞いてあげると良い。
頭をリセットしたいときは、急に携帯ゲームにはまる。こういう時は放っておいたほうが良い。
こんな小さな発見は、今後の夫婦生活にいい影響を与えそうである。
お互いが住みやすいように生活をして、やりがいのある仕事をする。時には贅沢もしたい。どちらかの自己実現のために、どちらかがずっと我慢することはないような生活を探すことができるはずだ。
 
彼女も外に出て仕事をすることが好きだから、2人とも職場復帰したら家事や育児の役割も半分ずつだ。
 
当然、育児に関する発見も多い。
世の中には「寝かしつけ〇〇メソッド」とか「泣き止ませるための〇〇法」など、調べれば確立された育児法は山ほどあるのだが、我が娘に100%ハマった方法は見つけられなかった。生まれたばかりでも性格や成長度合いは画一的ではないのだ。
方法論よりも、娘と真剣に向き合って信頼関係を築くことが大事だと思った。ミルクやオムツといった育児の作業は、誰でもできる。しかし、赤ちゃんの信頼を得られているかどうかで、効率は大きく変わる。
例えば、抱っこして寝かしつけることは、信頼関係があればどんな方法でもすぐ寝てくれる。
 
今のところ、僕は妻と同レベルの信頼を得ていると確信している。
今後もできる限り「ママじゃないと嫌だ!」と言われないようにしなければ、共働き生活は難しくなりそうだ。
これからも娘とは継続的に触れ合い、信頼関係を築いていかなくてはなるまい。
 
たしかに、夜通し飲み明かすような遊びや、仕事に没頭して毎日のように終電を逃すような生活も、難しくなる。
これが、「自分が主人公である物語」であるならば、終わってしまったのだと思う。
 
それならば、これからは「〇〇ちゃんのパパ」と呼ばれ、子どもの“脇役”として見える世界も楽しもうではないか。同時に、妻と協力して家庭を築きつつ、ビジネスパーソンとして社会に貢献する自分も楽しめるようになればいい。これが明るい物語の第2章である。
 
こうして、妻と娘と3人で作る物語の出だしは順調だ。
3か月の休業に理解をいただいた会社や上司には感謝しかない。
 
「昔は、育児は女手一つでできたものだ。男性も育休だなんて甘えている」
 
こういう意見があることも知っている。
しかし、世の中は変わったのだ。
夫婦がそろって休業して家にいることは、家族全員それぞれが主人公のまま物語を進めるためにとても大切な時間になると僕は心から思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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