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わけあって絶滅しそうです。

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大森瑞希(リーディング倶楽部)
 
 
その本に出会ったのは、私が絶滅しそうな夜だった。
明日になれば、また仕事に行かなければならない。
そう思うと、怖くて胃がきりきりと痛み始める。
手帳を開かなくても、山積みのやるべきことを諳んじることができる。
ここ最近ずっと、夜は寝られず、ろくに食事も取れておらず、心身ともに疲れ果てていた。
こんな時、今までの経験上、私を助けてくれたのはいつも本だった。
どんな悲しみも苦悩も、ひとたび物語の世界に入れば、浄化される。
現実世界を抜け出し、虚構の世界に没入することで、その瞬間だけは苦しみを感じずにすむことを幼い頃から知っていた私は、子供の頃から何かあれば本に逃げていた。
それくらいに、私の中で本は無敵の存在だった。
 
しかし、今は一行すら読むことが辛い。
読んでも頭に入らず、目が文字の上をなぞるだけである。
あんなに万能だと思っていた秘策も、もう役に立たない。
書くことへの情熱も消え失せた今となっては、自分の肉体が会社と家を往復するだけの機能しかない空っぽの機械のように思える。
 
家にひとりでいると、本当に絶滅しそうだったので街を歩いた。
買う気は全くなかったけれど、閉店間際の本屋に立ち寄った。
虚ろな目で店内をうろつき、何気なく平台を眺める。
その時である。
台に置かれた何冊もの本のうち、一冊だけが明るく光って見えた。
タイトルを見て、少しだけ破顔した。
久しぶりに笑った。
 
「わけあって絶滅しました。」〜世界一面白い 絶滅した生き物図鑑〜(今泉忠明監修/ダイヤモンド社)
タイトルから察するに、その本の中身は決して明るい内容ではなさそうなのに、茶目っ気ある言葉が妙にアンバランスだ。
表紙を彩る動物たちのイラストも可愛い。
「あぁ、地球ってせちがらい」と嘆くシカの絵に苦笑した。
絶滅したというのに、なんという軽いタッチなのか。
普段なら素通りしていただろう本を、その日は手に取り、気づけば買って帰っていた。
 
本書では60種ほどの動物たちが絶滅に至った経緯について、わかりやすく紹介されていた。
どれひとつとして、同じ理由で滅んだものはなく、それぞれが様々な理由でこの世から消えていた。
ほとんどの生き物は火山の噴火や隕石落下など理不尽な地球環境のせいで死に絶えてしまったものが多いようだ。
しかし、中には笑える理由もたくさんあった。
ドードーは「のろますぎて絶滅」、
大角鹿は「ツノに栄養を取られすぎて絶滅」、
ワライフクロウは「笑いすぎて絶滅」したそうだ。
なんでも、今までに地球に生まれた数え切れないほどの生き物のうち、99.9%は絶滅している。
地球に生まれた生き物は、いつかは絶滅する。
むしろ生き残ることの方が例外なのだ。
これらの動物が死に絶えた今となっては、絶滅の理由を笑い話のように語ることができるが、もちろんみんな必死に生きていたにちがいない。
大きく変化する地球環境と戦いながら、弱肉強食の世界に怯えながら、それでも何とか生き延びようとしていたはずである。
きっと絶滅してしまったものの中には、ボタンを掛け違えてしまったくらいの些細な出来事が、思いがけず大きなことに転じて、自らが滅びるきっかけとなってしまったものもあるのだと思う。
 
ふと、自分自身のことを考えてみる。
私が絶滅して、この本に載るならば、きっと「仕事が辛すぎて絶滅」というふうに紹介されるのかもしれない。
歴代の絶滅種の先輩たちと並ぶと、自分の絶滅理由がシリアスなのか、コミカルなのかはわからない。
しかし、一つ言えるのは、自分もヒトという種としてこの地球で懸命に生きる生き物であるということだ。
恐竜も、マンモスも、大角鹿も、ドードーもみんな一緒だ。
みんな必死に生きていた。
「仕事が辛すぎて絶滅」しそうな私も、明日隕石が落ちてくれば死んでしまう。
 
本のページをめくるたびに現れる、絶滅した生き物のイラスト。
その一つ一つが私に「生きてるだけで十分だよ。私たちなんてみーんな、死んじゃったんだからさ」と言ってくれている気がする。
心が弱っているからか、自分の都合の良いように解釈しすぎだろうか。
ともあれ、思いがけず、また本に助けられたことに気づいた。
 
本書は、わけあって絶滅してしまった動物たちをコミカルなタッチで、わかりやすく紹介してくれる。
読みやすく、すらすら読め、思わず「こんな理由で死んでしまうのか」と驚くようなエピソードが満載である。
そして、読み終わった後の余韻は読者によって感じ方が様々なように思う。
私のように、動物たちと自分を重ね合わせて考える人もいれば、
生物たちの耐えることの無い絶滅と進化の連続に、ロマンを感じる人もいるかもしれない。
 
今、心が疲れている人がいたとするならば、騙されたと思って手に取ってみて欲しい。
どん底でのたうち回る程、苦しい人がいたとするならば、自分自身を、地球規模で俯瞰してみて欲しい。
きっと、自分自身がかけがえのない存在に思えて、ほんのちょっとだけ、心が明るくなれるかもしれない。
もちろん、元気な人なら尚更楽しく読めるに違いない。
 
動物に何の興味もなかった私が、かつて絶滅した彼らに少しだけ救われた。
これが、本との運命の出会いというものなのかもしれない。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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