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大統領は大人のサードプレイス


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:須黒亮吉(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「すいません! レモンサワー下さい」
 
「ハイ、レモン」
 
JR上野駅。不忍口の改札を出る。目の前の横断歩道を渡ってアメ横へ。商店街を御徒町駅方面へ3分の1ほど歩いた所。ガード下をくぐる最初の横道にその店が有る。
居酒屋「大統領」
200%昭和のセンスで付けられた店名。創業昭和25年。年季が入りまくった居酒屋だ。店の開店は朝の10時。売りはもつ焼きと煮込み。もつ焼き1本90円。名物の馬肉の煮込みはあっさりしていて食べやすい。
 
さて、冒頭で頼んだレモンサワー。この「大統領」では、注文してから何秒で出て来るか?
 
……
 
カウンターに座って注文すると、なんと【15秒】で目の前に置かれる。僅かテレビCM1本分。早いにも程がある。なんでこんなに早く出て来るかって? そのカラクリは後ほどお伝えしよう。
 
店はいつ行っても活気がある。たいがい満席。近所の(あるいは東京中の)あらゆる飲兵衛が、この店のカウンターに集うようだ。正にここは、おとなの社交場。かく言う私も、ここに昼間から集う飲兵衛の一人だ。無性に行きたくなる。そんな不思議な魅力がこの店にはある。
 
サードプレイスという考え方がある。レイ・オルデンバーグというアメリカの社会学者が最初に唱えた。自宅(第1の場所・ファーストプレイス)でも、学校・職場(第2の場所・セカンドプレイス)でもない第3の場所。とびきり居心地の良い、リラックス出来て自分らしく居られる場所を、【第3の場所・サードプレイス】と呼ぶ。
 
ファーストプレイスである自宅は生活の基礎になる。寝て、起きて、食べて、風呂にも入る。家族が居れば、自然と義務や責任が生まれる。セカンドプレスは学校や職場。学業や仕事をするところ。自宅以外で長時間過ごす場所を指す。生活の糧を得るために必要だ。第1の場所と第2の場所を往復するだけの日常。そこに潤滑油の役割をするのが第3の場所・サードプレイスということだ。ゆとりや活気、コミュニティがそこにはある。
 
スターバックスコーヒーの店舗は、このサードプレイスの考え方を取り入れて出店されていることで有名だ。スターバックスの会長兼CEOだったハワード・シュルツがイタリア・ミラノを訪問した際立ち寄ったエスプレッソバーにヒントを得た。薄くて不味いコーヒーしか無かったアメリカに、薫り高いエスプレッソを持ち込んだ。新しいコーヒー文化と普段着でくつろげる社交と安らぎの場所を提供しよう出店されたのだ。シアトルで生まれたスターバックスコーヒーは、本場アメリカではなんと1万4,608店舗。日本国内でも1,581もの店舗数を誇る。2位のドトールコーヒーの1,094店に対して約1.5倍もの店舗数で、今や国内№1コーヒーチェーンとなった。
 
では、日本で絶大な人気を誇るスターバックスが、その成り立ちの通り、我々日本人の【サードプレイス】に成りうるのか!? 半分“YES” 半分“NO” だ。オルデンバーグが提唱したサードプレイスには、いくつかの定義がある。中立性やアクセスの良さ、利用しやすさや常連の存在などが挙げられている。この点、スターバックスの店舗はぴったりと当てはまる。しかしその定義の中に、「自然発生的に会話を含んだコミュニケーションが生まれる」というものがある。コミュニティの発生だ。だが、現在日本のスターバックス店内では、自然と見知らぬ第三者と話をする雰囲気は生まれ難いと言える。隣の席に座った利用客に突然話しかけようものなら、たちまち怪訝そうな顔をされるのがオチだ。どうも【日本型のサードプレイス】には、自己没入型・マイプレイス型と呼ぶべき側面があるように感じる。自分だけで、自由な時間をゆったりとくつろげる場所としての存在。日常生活で疲弊している我々には必要な場所なのだろう。そう考えると、スターバックスのみならず、マンガ喫茶や一人カラオケ、帰宅中のマイカーの中なども、日本型サードプレイスになりうるのかも知れない。(ちなみに政治家の先生のサードプレイスは、愛人宅だ)
 
話はオシャレなスタバのテラス席から、店先からすすけたビニールカーテンがぶら下がった、アメ横「大統領」に戻る。まずは先ほどの【レモンサワー15秒】の謎から解明しよう。速さのポイントは、予め焼酎をグラスに定量注いでおく事と、割り物は客自身で混ぜさせる所にある。客からオーダーが入ると①手元の伝票に注文を書き込む②焼酎が入っているグラスに氷を入れる③水冷の冷蔵庫から瓶入りレモン炭酸水(下町新小岩のソーダメーカー、野中食品工業製)を取り出す④栓抜きで瓶の蓋を開ける⑤客に提供する。しめて15秒。客はその提供の速さに感動しながら、自らシュワシュワとソーダをジョッキに注ぐ。客と店とのコール&レスポンス。客のリズムを崩さず、飲みの更なるペースアップにもつながるのだ。
 
さて、おかわりが来たところでサードプレイスの話に戻りたい。私はこの「大統領」の様な昼のみ居酒屋こそが、日本の成人のサードプレイスの一つとなっていると考えている。ここにはスターバックスの店舗には無い、賑わいとコミュニケーションがある。ノートPC、本や携帯電話、ワイヤレスイヤホンから流れる音楽に個々人で没入する、静かでお洒落なスターバックスの店舗。対してここでは周囲の客の会話や、壁掛けTVの音声、カウンター内から聞こえるスタッフの話し声など雑多な声が飛び交っている。程よくアルコールが回ってくると、人は饒舌になる。袖すりあうも多生の縁。隣の客や店員の会話に、少なからず合いの手を入れたくなるものだ。こうして、子供の進学の話や嫁の愚痴、ひいきの野球チームの話などが、見ず知らずのお隣さんと始まるわけだ。「私たち明るいうちから飲んじゃってすみませんね」客同士の変な連帯感も、このコミュニケーションが生まれる一旦かもしれない。おかげで私の携帯電話には、後から見ても思い出せない、知らないオヤジのLINE登録やら、変な記念写真やらが増える一方だ。
 
自分に元気がなくなると、アメ横に足が向く。私のサードプレイス、居酒屋「大統領」みなさんも疲れた時には元気を注入しに行ってみて欲しい。カウンターで隣り合ったらぜひ一緒に乾杯を! 「大統領」は本店より支店の方が広くておすすめ。多少の入店待ちはご勘弁を。すぐにでも飲み始めたい?! ここは昼飲みの聖地。そんな飲兵衛は「大統領」目の前の「たきおか」か「カドクラ」へまずはどうぞ。
 
 
 
 
***
 
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2020-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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