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終電でスマホを落とした話


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記事:山田真美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
先日、終電でスマホを落としてしまった。
気が付いたのは自宅に着いてからだった。
 
スマホを落としたことで、大変な事件に巻き込まれるという映画があった。もともと私はスマホをよくどこかに置いて忘れるので、戒めのために観に行った。
それからしばらくは怖くて気を付けるようになっていた。
それでも注意力というのは期間限定で、このようにまた落としてしまうのだ。
 
スマホには本当に色々な情報が入っている。映画のような怖いことはそう起きないと思いたいが、ぜひ私を反面教師にして気をつけてほしい。
 
スマホを落としたその日、私は残業して疲れていた。
一刻も早く帰って、早くご飯を食べて、早くお風呂に入って、寝たい……そういったことしか考えていなかった。
終電がホームにつき、スマホをコートのポケットに入れた。――これが間違いだった。
 
乗り込んだすぐの席が空いていたので迷わず座った。
私の利用している電車には、可動式の席がある。朝の通勤ラッシュ時はカギがかけられ開かないようになっているのだが、それ以外の時間であれば座席を下ろして座ることができる。この日も、可動式の席に座った。
 
電車に乗る間は、読書をしていた。そのため、スマホはずっとポケットの中だった。
目的の駅につき、立ち上がった。その時、可動式の座席が元のように閉じようと動いた。その際、私のコートがひらっと持ち上がった。
 
そんなことが起きていたなんて考えることもなく、自宅へ帰った。
そして、ポケットに入れたはずのスマホがないことに気が付いた。
 
この時の心境は、なかなかの絶望感だ。
もしスマホを落としたことがある方ならわかるだろう。それまでは何ともなかったのに、失くしたと分かってから非常に怖くなる。
 
幸い、「iPhoneを探す」という機能をONにしていた。
すぐさま遠隔でロックをかけ、場所を確認した。
この機能は大変便利だ。スマホがどこにあるのか、ほぼリアルタイムで地図に位置情報が出る。
 
私のスマホは線路上を移動していた。
 
その時、「ああ、あの時電車で落としたのか……」と先ほどの出来事を思い返した。
 
その時点で追いかけるという選択肢もあった。
だがもう部屋着になってしまった。再び出かける気は全くない。
ただでさえ残業で疲れているのに、追いかけっこをする気になれなかった。
 
きっと、点検や掃除の時にでも見つけてもらえるだろう……と都合のいいように考え、諦めて寝ることにした。
 
次の日、起きてすぐマップを開いた。
なんと動いていた。
一晩を電車で過ごし、そのまま始発から移動していたのだ。
 
落としたところは可動式の席。おそらくその可動部分にはさまれた状態になっている。始発から昼頃までは、その座席は開かない。
朝のラッシュ時は、駅に電話をしてもつながらない。当然だ。忙しい時間に、椅子に挟まった私のスマホを気にできる人などいない。
場所は分かっていても、落としたものが動いていて、且つ閉じ込められているとなると、こんなにも面倒なのか……と朝からとても疲れを感じた。
 
意味があるかは分からないが、朝早く出かけて追いかけてみることにした。
そして、ついにスマホと同じ電車に乗り込んだ。とても近くにあることは間違いない。それでも座席は開かない。
 
もどかしさを感じながら、結局、駅員さんに捜索依頼をした。
具体的にどこにあるかを説明できたので、どの車両かすぐに判明した。――はじめから、こうすればよかったのだ。
 
そしてお昼に再度マップを開いてみた。
ある駅で位置情報が止まっていたのでサービスセンターに問い合わせてみると、やはり私のスマホと思われるものが届いていた。
お昼に座席に座ろうとした方が拾ってくれたのだろう。きっと開いた座席からスマホが出てきたらとても驚いただろう……もしかしたら足に落ちたりしたんじゃないか……申し訳ない思いと、拾っていただいた感謝の気持ちでいっぱいだった。
 
届けていただいた駅に取りに行くと、無傷の状態で私のスマホが返ってきた。本当にありがたい……
 
今回は、本当に幸いにも何事もなく返ってきた。心優しい方に拾っていただいたことも本当に幸運だった。
 
何かを落としてしまうことは、単純なエラーだと思う。そして、気を付けているつもりでも、何度もやってしまう。
居眠りをしてしまう方は分かるかもしれない。「眠い」という状態は、「寝てはいけない」という気持ちだけでは抗えず、手の甲をつねろうが、目薬をさそうが、眠ってしまうのだ。
落し物はそれに近い。「落とさないぞ」と思い、立ち去ったところは振り返って確認する癖をつけていても、意志とは反して定期的に落し物はしてしまう。
 
単純なエラーを回避するためには、いろいろな予防策を講じるしかない。
居眠りをしてしまうなら、事前に寝るしかない。それでも眠い場合には、目が覚める可能性のあるアクションをいくつか用意しておくしかない。
落とし物をしないためには、すべてのものを身体に付けてしまうのが一番確実だ。難しいものは、定位置を決めて毎回そこに戻すようにしたり、万が一落としてしまった場合にアラームが鳴るような機能を取り入れたりするしかない。
 
私は「落とし物をしない!」と再度心に誓い、あれからスマホはポケットには入れないようにしている。
度々今回のことを思い出して、エラー回避に努めたいと思う。
 
 
 
 
***
 
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2021-01-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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