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【全国高校サッカー】わたしが間違っていた

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重冨さん サッカー

 

記事:重冨剛(ライティング・ゼミ)

 

今年の全国高校サッカーは、東福岡高校が優勝した。
翌朝の新聞には、真っ赤なユニホームの東福岡高校の選手たちが優勝トロフィーを掲げるカラー写真が大きく掲載されていた。
みんな笑っていた。サッカー少年らしい朗らかな笑顔だった。

東福岡高校には、少しだけ思い出がある。
それは、今から20数年前。わたしが受験して落ちた高校なのだ。

なぜ受験したのだろうかと、遠いむかしの記憶をたどってみた。

第一希望は別の公立高校だった。私立の東福岡高校に行きたかったわけではない。
東福岡高校は、第一希望の高校と偏差値が同じぐらいの高校だった。
担任の先生から、腕試しにとりあえず受験してみろと言われて受験した。
そんな軽い気持ちで受験したのだが、落ちた時はけっこう焦った。
ここに落ちるってことは、第一希望の高校もヤバいんじゃないかと思い、必死に勉強したことを覚えている。
結果は、無事に第一希望の公立高校に合格できた。
まあ、その公立高校だって自分の偏差値がその位だから受験した高校だった。
その高校にどうしても行きたかったのではなかった。

そんなことを思い出しながら、サッカー少年たちの写る紙面を眺めていた。

わたしの息子もサッカー少年だった。
今は大学一年生。東福岡高校の選手が高校三年生なら、息子より1つ年下になる。
去年の今ごろ、息子は大学受験の真っ最中。センター試験直前だった。
センター試験の結果次第で志望校を決めるという息子に、わたしは言った。

「志望校を偏差値で決めるな」
「自分がほんとうに行きたい大学に行きなさい」
「その大学で、何を学びたいのか、将来どんな職業に就きたいのか考えて大学を選びなさい」

息子は「うん」と、無表情にうなずいた。
子供は賢い。親の言うことに納得していなくても、聞き流す術を身につけている。
いちいち反論して、対立することは無益だと悟っている。
だから、息子はわたしの言葉に納得はしていないようだったが、反論せず自分の意見を言うでもなく、小さくうなずくだけだった。

あの時、わたしは親として当然のことを言ったつもりだった。
大学は偏差値で選ぶべきではない。
目的があるから大学に行くのだ。
目標とする大学に合格することが目的になってはならない。
なにを学びたいかで大学を選ぶべきだ。

そんなふうに考えていた。

でも、サッカー少年たちの笑顔を観ていて、何が違う気がしてきた。
このサッカー少年たちは、全国大会で優勝することを目標に毎日厳しい練習をしてきたのだろう。

なぜ、全国大会での優勝を目標にしたのか?
それが一番強いチームの証だからだろうか。

では、優勝する目的はなに?
目的という言葉の意味を辞書で調べると、
”行動のねらい。めあて”
と、書いてある。
なんのために優勝したのかってことになる。

優勝するという目標が目的だったのだ。

全国優勝することが目標だった。
そのことで、なにを得るのかは考えていないのではないか。
そんなこと考える必要もないのではないか。

スポーツで全国優勝を目指すという目標が、サッカー少年の目的。

目標の志望校に合格することが受験生の目的。

歌手になることを目標に路上で歌っている人は、歌手になることが目的。

全国優勝してなにをしたいかなんて、優勝してから考えればいい。
志望校に合格してなにを学びたいかなんて、入学してから考えればいい。
歌手になってなにをしたいかなんて、歌手になってから考えればいい。

わたしが間違っていた。

センター試験を前に、目標の大学目指して睡眠時間を削って勉強していた息子は、わたしの言葉をどう感じたのだろうか。
いまは、目標の大学に合格することだけに集中したかったのではないだろうか。
わたしは受験生だった頃の自分を忘れていたのだ。
あの時のわたしは志望校に合格することが目標だった。
高校で学びたいことなんて、なんにもなかった。
就職した時だって同じ。どんな仕事をするのかなんて、何となくしか理解していなかった。
それでも目標を達成すれば、そこから見える景色がある。
いや、目標を達成出来なくても、何かを目指して本気で行動すれば、見える景色はある。

この記事はWEB天狼院のアクセス数を競うレース「メディアグランプリ」に参戦している。
参戦するからには、もちろん一位を狙って書いている。
一位を目指して本気で書くことで、見える景色があるのではないかと思っているからだ。

今年のお正月、目標の大学に通う息子に聞いたことがある。

「将来、なりたい職業は決まったのか?」

わたしの問いに息子は笑って答えた。

「う〜ん、まだ決めてない」

朗らかな笑顔だった。

その時は、大学で専門分野を学んでいるのに、なりたい職業が決まっていないなんてと思ったが、それはそれでいいのではないかと思えてきた。

 

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2016-01-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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