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膝の激痛から学ぶ、熟年離婚回避の方法。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:NMR(ライティング・ゼミ)

 

 

「まじかよ……あと15km以上あるのに……」

 

僕は河川敷のアスファルトの上で、右膝に走った激痛に耐えていた。

流れる汗は、運動によるものではなく明らかに脂汗だ。

 

しかめっ面で呆然と突っ立っている僕の横を、何人かのランナーが追い越していく。

そう、僕はフルマラソンに出場している最中に、膝の痛みに見舞われたのだった。

人生で3回目のフルマラソン。その30km地点のずいぶん手前にいた。

 

この痛みは以前にも経験がある。「ランナー膝」の症状だ。

走りはじめはなんともないのに、突然に膝の外側に走れなくなるほどの激痛が走る症状。

着地時に衝撃が蓄積していくことで起こるもので、その痛みはまさに飛び上がるほどだ。

練習の時にも何度か経験していたが、レース中にこれが出るのは初めてのことだった。

 

それでも、その場でしばらく休んでいると、少しは歩けるようになってきた。

着地のバランス加減によっては、なんとか前に進めそうだ。

単なる市民ランナーの僕ではあるが、リタイヤだけはしたくなかった。タイムはどうであれ、完走することだけが自分のささやかなプライドでもあった。

だましだまし歩いたり走ったりを繰り返し、時には休みながら、なんとか残り15kmを走り抜いた。

 

フルマラソンで発症した後は、練習中にも痛みが出るようになった。

走り始めはなんともないのだが、5kmも走ると膝に激痛。

この痛みが出るともうそれ以上は走れなくなり、そこで練習は終了。歩いて家に帰るしかない。

本当に痛くて痛くて、これからの人生、ずっと走れなくなってしまうのかと本気で悩んだ。

せっかく走るのが楽しくなってきたところだったのに。

 

「走ること」は基本的に同じ動作の繰り返しだ。

着地する、蹴り出す、着地する、蹴り出す。その着地がポイントになる。

仮に歩幅を1メートルとすると、10kmで1万回、フルマラソンでは4万回以上着地することになる。当然、着地時にはその回数分、からだに衝撃がかかる。

 

1回の着地で、ほんの少しでもバランスに無理があったとしたら、そのズレが数万回単位で蓄積されていく。短い距離であれば症状が出る前に走り終えることができるが、長距離になるとカバーしきれなくなる。そして、なんの前触れもなく突然に症状が現れる。これが今回の痛みの正体だ。

 

「あなたとはもうやっていけません。ずっと我慢していましたが離婚させていただきます」

 

まるでこれは、夫の知らず知らずの無神経な言動や態度が原因で起こるとされている、あの熟年離婚のようではないか。

知らないうちにズレが少しづつ蓄積され、いつの間にか限界に達している。そして、問題があるとすら思っていないところに、突然の宣告。青天の霹靂。いかに自分が何も考えていなかったのかを思い知ったときにはもう遅いのである。

 

思えば当時の僕は、自分の膝にかかる負担のことなんか、ほとんど何も考えずに走っていたように思う。練習もただひたすらに走ればよいと思っていた。まさに何も考えない言動を繰り返す夫のごとくだ。

 

ランナー膝は外見上はまったく分からない。腫れるわけでも血が出るわけでもない。症状が出る前になにかアピールをしてくれればいいのにな、と思うのは僕の傲慢だろう。

何も考えずに走っていれば、それなりに走れるようになるだろうという考えが甘かった。走ることはシンプルなだけに奥が深い。

 

ランナー膝が起こる原因のひとつが着地時のバランスの悪さだという。

フォームの悪さに自覚があった僕は、そこを改善することにした。

具体的には、足だけではなく、からだ全体で着地時の衝撃を吸収するような走り方に変えた。

この走り方をするためには、からだ全体に神経を使い、どの筋肉で着地しているのかを意識する必要がある。からだに対するセンサーを研ぎ澄ませるイメージだ。

そしてこの走り方に変えてから、一度もランナー膝は発症しなくなった。

 

夫婦関係も同じで、負担をかける度に繕うのではなく、はじめから負担をかけないのがうまくいく秘訣かもしれない。そのためには、何も考えずに生活するのではなく、自分の行動に対してセンサーを使っていく必要がある。もちろん、不調を感じた方がなんらかのアピールをすることも必要だろう。

いつも一緒にいるからこそ、大事なことだ。

 

妻がそんなことを思っているなんて知らなかった、と夫は言う。

膝がこんなことになっているなんて知らなかった、と僕は思う。

どちらもセンサーの欠如だ。

 

ジョギングを始めて6年ほどになるが、ランナー膝を経験してからまたひとつマラソンの奥深さに気づけた気がする。

そして、そこから学ぶことは意外なところで役に立つのかもしれない。

 

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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2016-11-12 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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