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プロフェッショナル・ゼミ

大企業で働き続けていると、かならず失業する? 《プロフェッショナル・ゼミ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ プロフェッショナル」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:佐藤 穂奈美(プロフェッショナルゼミ)

「あなた、このまま大企業で働いていると20年後、かならず失業しますよ」

もしも笑うセールスマンみたいなのがすすーっと歩いてきて、数年前、就活生の私にこんなことを言ってきたら「根拠もないことを言わないでよ!」、「大企業に入ったら絶対成長できるし失業なんてしない!」、「それに、とにかく、まずは大企業に入った方がつぶしが利くし、転職こそすれ失業なんてまさか……!」と躍起になって言い返していただろう。

それに。

あの頃の私はまさか自分に限ってそんなことはないとタカを括っていた。

根拠のない自信も時に推進力になるが、時と場合が間違ってるとただの「ハズカシイやつ」である。

私の家の近くは東京のとある有名な私立大学のすぐそばだ。
ちょっと記事でも書こうかな、とスタバに入った暁には、ナイキのいかついスニーカーにオシャレなスウェットのズボンを履き、被り物タイプのパーカーを着て、「NY」などと書いてあるキャップを後ろ向きに被ったすかした男とブリーチしないで限界まで明るくしたような茶髪の、しかし「ドイツ語入門」なんてのを片手に勉強してる女に出くわすのである。

「あー、今日のセミナーまじでよかったわー」

今日もまた、まさにそんなすかした男が勉強中の彼女に合流しに来たのか、キャップを外しつつどかっと椅子に腰をおろす。

「就活の〜?」

彼女はドイツ語の教科書に目を落としたままだ。

「そうそう! いや、マジでさ! めっちゃよかったんだって! 今日、クリエイティブのセミナー行って来たんだけどさ、マジでよかった。今日の話してた人がデザイナーの人だったんだけど、クリエイターが経営者になる難しさ? みたいなこと話してて、超勉強になったわ……。やっぱ絵が上手くても会社経営がうまいとは限んないし!」

!!!

クリエイティブの、セミナー?

経営者?

就活?

なにを目指してるんだ若者よ!

そもそもクリエイティブのセミナーってなんや!!!

ツッコミどころが多すぎる……。

多すぎる、多すぎるんだけど、どうしても私は彼を笑えなかった。
就活が終わった直後の学生時代だったら、速攻で友達にLINEして「めっちゃ面白いやついた〜!」とか言ってたかもしれない。

でも、社会人になった今、大学3、4年の頃の自分を振り返ると、ほとんど私は彼そのものだったのじゃないかと思うのだ。

「自分が成長できる環境って大事だよね」とか
「ファーストステップは大企業に越したことはない」とか
「人脈は〜」とか
今考えると恐ろしすぎることを言っていたのではないか。

そして、そもそもその頃の私が言っていた「働く」は、もう完全に妄想でしかない。
実際に働いたことのない私はぺらぺらの知識と経験という裏打ちのないぺらぺらの言葉で、なんだか「ぽい」ことをベラベラと喋りまくっていたような気がする。

あの頃のぺらぺらぶりを思い返すと、家に引きこもり、厳重に積み重ねた布団に潜って、もう二度と知り合いに会いたくないような気持ちになる。

しかしながら、私のようなぺらぺら人でも、なにやら必死に駆け回っていたら拾ってくれた殊勝な会社があった。
その会社はまちづくりの会社であった。大企業ではないが、それなりにたくさんの人が所属していた。
私は中学生の頃から、なぜかは分からないがまちづくりに興味があった。
大学も結局6年間まちづくりの研究に費やし、会社もまちづくりの会社に入ったのである。

だから、内定をもらった時には、
ああ〜! よかった!
なんだかんだ自分の好きなことをできる会社に入ったし、この会社なら親も喜ぶ!
めでたしめでたし! と思っていた。

働くまでは。

私のぺらぺら仮面が次第に剥がれ落ちてくるのはこの後である。

あれっ、思ってたのと違うぞ?

あれっ、私、なんのためにこんな遅くまで働いているんだっけ?

私の心が疑問でいっぱいになっていくのはあっという間だった。

暮らし方を考えたいと思ってこの会社に入ったのに、流しの洗い物の山を見るたびに憂鬱になった。

住みよいまちを作りたいと思って入ったのに、毎日満員電車でぎゅうぎゅうに押しつぶされて職場に向かうのが不思議だった。

しわくちゃのシャツに手を通すたび、シャツもくたびれてるな、と切なくなった。

生き生きと暮らせる街を作りたかったのにな。
やりたい仕事、できてるはずなのにな。
何が違うんだろう。

そんなある日、ビール片手に適当にテレビのチャンネルを回していると京都大学総長の山極寿一さんと探検家の関野吉晴さんが対談をしていた。

その時山極先生が言っていた言葉に、私は自分の中に突風が吹き抜けていったような気持ちになったのだ。

チンパンジーってかなり人に近いって言いますけど、自分がとった食べ物を家族や仲間に分け与えるようなことはしないんですよ。

ー その場で食べる?

そう、その場で食べちゃう。
けど僕らの祖先は違った。
きっと子どもが生まれたんでしょう。もしかすると、メスのことをとても大事に思うオスがいたのかもしれない。
ある時、そのオスは、なぜか自分が狩りでとった獲物を持って帰ろうと思った。

ー 持って帰ったらメスや子どもたちにすごく喜ばれますよね。

その通り。彼はものすごく喜ばれた。そして、それを「うれしい」と思ったんです。その場で自分の空腹を満たす喜びより、他の誰かに認められ喜ばれる幸せが勝った。これが、まさに共感力の始まりみたいなもので、僕は霊長類と人間を分ける最大の違いが「共感力」だと思うんです。

「共感力」

ああ、そうか。

そういうところから、人の暮らしは始まったんだ。

これだ、私がずっと街に惹かれていた理由は。

まち。
たくさんの人がいるところ。
たくさんの人が嬉しいことがあったり、悲しいことがあったりするところ。
たくさんの人の気まぐれや、なんかこうだったらちょっと楽しいかもという思いつきが詰まっているところ。

街を散歩している時にふと見かけたなんでこんなところにあるんだろう? というような少し錆びかけた、でもまだ動いている洗濯機がある。なんでこんなに入り組んでしまったんだろう? と思うくらいみんなが好き勝手作ってしまったとしか思えない狭い道もある。そういうものに、人の暮らしの・人の心の残像を見て私は街に惹かれていたんだな。
そっか、私は人の生き方、暮らし方、そしてヒトに興味があったんだ。

学生の私はまだ自分が興味のあることを、社会で働くということにおいてどんなふうに置き換えられるのか、あまり想像ができなかった。
自分に一体何ができるのかも分からなかった。
だから、自分の知っている知識の中で一番自分の興味に近そうなものを選んだ。
自分の「好き」から逆算するのではなく、すでにわかりやすく目の前にある選択肢から選び取った。
そして、すでにある会社に入る、ということは、ある意味会社に甘えてもいたのだ。この会社に入れば、この会社に育ててもらえる。
今は何もできないけれど、この会社で頑張っていればいつか自分も仕事が超できる、超すごい大人になれる、と。

だけど、そんなんじゃ全然ダメだ。
今ここで、私はたまたま自分が何に興味があるのかに気がついたけれども、会社に育ててもらおうなんて頭が働いてる時点で、自分のやりたいことを叶えていけるような大人になんかなれっこない。
企業自体は悪くない。大きな企業で働いている人も悪くない。
自分の受け身の姿勢が何より問題だと気が付いたのだ。
それに、たとえ自分が思惑通り、大企業特有の新人をゆっくり育てていこうという機運に乗ったとしても、こんなに機会を待ってばかりの自分では、私が何かできるようになる前に私はクビになっているんじゃないかと思うのだ。

だって、これからは、AI(人工知能)の時代なのだ。
私程度の能力なぞ、AIに簡単に取って代わられるだろう。

すでに私たちは日々、意識しないところで人工知能の端くれに触っているのだ。
Googleの検索機能だってそう。Amazonのオススメ商品だってそう。
Amazonのサジェスト機能なんかはまだまだで、私が「ノルウェーの森」を買ったとしたら「この商品をお買い求めのお客様にはこちらの商品がおすすめです」と再びノルウェーの森を勧めてくるような愛らしさがあるが、ポケベルからスマホへの成長を生で見てきた世代からすると、AIが爆発的に成長する時代もそう遠くはないと直感している。

アフィリエイトで稼いでいる友人が言っていた
「ヒット数を上げるために、どんなワードが引っかかるのか日々、分析して、試して。でも、これって、検索エンジン、つまりはAIに人間が媚び始めてるってことなんだよね」
という言葉がすでにその可能性を示しているんじゃないかと思うのだ。

だから、私の焦燥はますます強くなる。

生きていく力を身につけるにはどうしたらいいだろう……。
これからの時代を生き抜くためには、何を大切にしたらいいんだろう。

人工知能が汎用AIと呼ばれる自己学習できる状態まで開発が進むのが2045年だと言われている。
もっとも、そうそうAIには負けないだろうと言われていたチェスや囲碁なんかも予想よりずっと早く人間は負けてしまっているし、汎用AIが生まれる日はもっと早くくるかもしれない。
いまは2017年、あと20数年でそんな未来が来るとしたら……。

AIが自分で学習するようになっていったら人間がこなす事務処理作業なんてほとんど奪われてしまうだろう。
大量失業するのは、まさに私が所属しているような中間のホワイトカラー層だと言われている。
弁護士、司法書士なんて士業もそうだ。
これまでの膨大な世界中の判例をAIに読み込ませて、状況等が合致する事件や訴訟にはAIが最適解を出していく。技術の進歩によって今までにない問題が生じたときにだけ、弁護士や司法界の超絶エリートが考える、みたいなこともあるかもしれない。
もっともっと未来になったら、例えば25才、体重50キロ、身長160センチ、女性などの条件を入力すれば、同条件の成人女性に必要な栄養や睡眠時間等を全て把握して、酸素カプセル的なところで常に私たちは眠ったまま最適な健康状態に保たれる。全ての日常生活は脳内で行われる、子孫を残すということさえ、時期が来たら最適な遺伝子同士をAIが選定して人工授精させる、みたいな未来が来てしまうかもしれない。そして、世界は二分され、根源的な人間の感性や営みを訴え、地下に潜ってセックスするアングラ集団が生まれるかもしれない。「私たちは生きることを恐れない! 肉体の感覚なくして生きているとは言えない!」みたいな。

若干妄想してしまったが、少なくとも2045年付近にAIの精度が飛躍的に上昇していくのでは? そのせいで大量失業が生まれるのでは? ということは様々なところで言われているのは事実だ。

いつかファストフード店では人間の店員など一人もいなくなり、全部ボタン一つで頼むようになるのだろう。
人間が給仕するのは銀座の「超」高級店だけ。
農作物も今でさえ、肥料をドローンでやっているところもあるくらいなのだ。かなりの部分が機械化されるだろう。

そんな未来に私ができること。

例えば、今まで当たり前だったけど、これからは当たり前じゃなくなるものを売るのはどうだろう?

「人間が作った野菜、あります!」

「人間が作った料理、あります!」

なんてやったら売れるのではないか?

私の家は親戚に農家が多い。
実家も兼業農家で米を作って売っている。ばあちゃんが作っている野菜もある。

私はあまりメロンが好きではないのだけれど、それはメロン農家のおじさんから売り物にならなかったメロンをもらって食べ過ぎたせいだ。メロンは甘過ぎて舌がビリビリする。だから、私はメロン本体よりもメロンを間引くときに生まれる子供メロンの漬物が大好きだった。ふわっとジューシーで塩でつけると瓜に似ている味がするが、瓜やキュウリより断然美味しい。
そんな農家なら当たり前の、けれども普通の人は食べなそうなオマケを加えつつ、「孫が食べるから」とジジババが最低限しか農薬を使わず育てた米と野菜をプレゼント的に送るサービスはどうだろう。月に1度、ハコが届く。その箱には「この箱の中身だけでこんな料理が作れます!」という管理栄養士の妹にただ働きをさせて作ったレシピブックを添えて、スーパーで買うよりほんの少し高いくらいの値段で売る。六本木や麻布十番にオーガニックや無添加を謳うやたら高い八百屋がたくさんあるのを見る限り、高くても美味しくていいものを買いたい層というのはいるはずだ。レシピブックのメニューも日本の四季の暮らし方、みたいなストーリーを一貫して、一つずつ綴じていくことと本になる。農家版ディアゴスティーニの完成だ。
月に一度、ママたちは献立を考えることから解放され、贈り物的に届く野菜に少しワクワクする。もしかしたら、いつかおばあちゃんに美味しかったよ! なんて手紙が届くかもしれない。そしたら、家の外で認められたことがないばあちゃんにも今までとは違った楽しみができるかもしれない。
そして、そうだ、HPを作ろう。この野菜たちがどんな人の手で、どんな風に作られて来たのか、そんなことを日々届けよう。毎日、SNSで成長を見守っていたトマトがある日手元に届いたら、ついに! とまるで自分が育てて来たような気持ちになるのではないか。消費者と生産者がどんどん近付いていったら、最後にはうちで顧客限定の気まぐれゲストハウスをやってもいいかもしれない。SNSで繋がっていた人が、三次元で出会えるのだ。最後は、自家製の果実酒片手に近所の海で映画祭をやろう。なにより自分がそういうことがしたいのだ。こういうことを考えてると本当にワクワクする。私は東京暮らしが8年以上経っても農作業が好きで田植えに実家に帰るし、浜辺に寝っ転がってビールを飲みながら本を読むのも、そういう自分の「すきだ!」と思っているものを人に勧めて喜んでもらうこともだいすきだ。

人の温もりや、人の手間がかからない時代だからこそ、人の暮らしを伝える、住まい方を届ける。

無機質な比重も増える将来だからこそ、五感をフルに使うサービスを届ける。

そんなことができないだろうか?

山極先生はこんなことも言っていた。

かつて人間がジャングルから厳しいサバンナに出た頃、当然乳幼児の死亡率は高かった。だから女性は離乳してすぐ次の子供を産めるようになった。女性が赤ん坊の世話で大変な時、少し大きくなった子供の世話をするのが男の役目になった。男性は子供っぽいというけれど、子供と同じ世界に入り込んで一緒に遊べるように「共感」を身につけていったんです。

人の暮らしの一番根っこにあるのは、誰かと共感して生きていく、ということだ。
そして、私はその「共感」は絶対に肌触りのある、命のあるものに触れた時の方が大きいと信じている。
そして、ちょっとの遊び心がその共感力を強くする。

暮らし方をシェアする、そんなサービスを作る、それが今のところの私の目標だ。

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参考
「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」 井上智洋、文春新書、2016年
SWITCHインタビュー 達人達(たち) 京都大学総長 山極壽一・探検家 関野吉晴

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