ふるさとグランプリ

最後の晩餐《ふるさとグランプリ》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:あやっぺ(ライティング・ゼミ)

 

「こんなおいしいもん、食べたことない!」

 

小さな手で抱えたどんぶり鉢から、一滴残らず出汁をすすり終えた後、私はいつも決まってこう言っていた。

私がまだ幼稚園の頃の話だ。

 

決して、世にも珍しい豪華なごちそうを食べたわけではない。

むしろ、ものすごく庶民的で、関西人なら一度は食べたことがあるであろう、麺類の定番。

そう、小さい頃の私の大好物は、「きつねうどん」だった。

 

いくら裕福ではない家庭だったとはいえ、両親や祖母は、私がよく通る大きな声で、まるで心の叫びのように言い放つのが、恥ずかしかったらしい。

 

「あんたなぁ、美味しいのはわかるけど、あんまり大きい声でそんなこと言わんといて。うちで何にも食べさしてへんみたいに思われて、恥ずかしいやんか!」

 

そう言って、よく注意された。

しかし、そこは子どもだ。

 

「だって、ホンマにおいしいんやから、ええやんか!」

 

と一向に言うことを聞かなかった。

うどん屋さんのお店の人は笑いながら、

 

「そんな言うてもろたら、おばちゃん嬉しいわぁ。ありがとう、また来てな!」

 

と私に声をかけてくれた。

 

大人になってからでも、両親からはこの話を嫌というほど聞かされた。

さすがに、成長につれて味覚も発達し、食べ物の好みも変化していったので、いつまでも「きつねうどん」が最高に美味しいグルメの座に君臨し続けてはいないが、麺類は今でも大好きだ。

 

きつねうどんの次にハマったのは、ナポリタンスパゲッティ。

とにかく、スパゲッティが大好きだった。

4つ下の弟が生まれた時、母が留守の間は同居していた父方の祖母が食事の用意をしてくれていたのだが、煮物系ばかりで、小さな子供が喜ぶようなメニューが食卓に並ぶことは無かった。

母が退院したその日、私は母に「スパゲッティが食べたい」とねだった。

まだ体調が万全ではなかった母は、「明日作ってあげる」と私に言った。

しかし、私は「明日じゃ嫌や! どうしても今日食べたいの!!」とわがままを言ったことを、40年近く経った今でもよく覚えている。

 

その後、一番好きな食べ物を訊かれた時の答えは、「ミートスパゲッティ」に変わり、20代の頃は、オムライスやピザと答えていた時期もあった。

 

大人になって、「最後の晩餐には何を食べたいか?」というような話をしたことが何度かあるが、食い意地が張っている私は、いつも答えを迷っていた。

昔は、【「最後の晩餐」→「もうすぐ死ぬ」→「胃腸が弱っている」→「食べやすいものがいい」→「梅干しのお粥」】という、連想ゲームのような理由から、本気で「梅干しのお粥」と答えていたこともある。

友人たちと話す中で、お粥はさすがに病人色が強すぎるだろうということで、「梅おにぎり」と答えるようになったが……。

 

それでも、「最後くらい、もっと他に食べたいものは無いのか?」と訊かれ、「オムライス」と答えていた時期も長かった。

オムライスは私にとって、小さい頃、誕生日や何か嬉しいことがあった時、母によく作ってもらったメニューで、幸せの記憶の象徴のような食べ物だというイメージが強い。

 

そして、今この歳になって、改めて「最後の晩餐は何を食べたいか?」と訊かれたら、私はこう答えると決めている、とっておきのメニューがある。

初秋の10日ほどの期間限定、しかもランチタイムである11時~14時の3時間でしか食べられない、知る人ぞ知る、あの夢のような幻の絶品ランチ。

京都・寺町三条、『直會撰(なおらいせん)』の松茸ご飯食べ放題ランチだ。

 

毎年、京都に丹波産の松茸が入荷したら、必ず地元新聞に写真入りで記事が載るのが、『とり市』。そして、その『とり市』がプロデュースしているお食事処が、『とり市』の向かいにある『直會撰』だ。

税別1000円で【松茸ご飯食べ放題・小鉢・赤だし・香の物】が堪能できるお値打ちランチだ。しかも、国産松茸しか使わないという信条でされているので、売れすぎると困る破格の出血大サービスランチなのだ。

 

昔は、松茸入荷の記事が出て数日内に、地元新聞に松茸ご飯食べ放題ランチの広告が載っていたのだが、あまりにも人気が高すぎて、近年では広告が出ることは無くなった。松茸の季節が訪れると、店頭で見かけた人だけが知ることができる形で、ひっそりと開催されている。

自然のものなので、その年の気候条件によって、松茸の入荷時期や入荷量はまちまちだ。

このランチの終了時期は、その年の入荷量によって変動する。

豊作の年は良いが、不作の年にうっかり時期を逃すと、次の年までありつけない。

 

私は、この松茸ご飯食べ放題ランチが本当に楽しみで楽しみで、9月に入るとそわそわし始める。例年は早くて9月中旬から、遅くて下旬から始まり10月初旬くらいまでは開催されていることが多い。

年に一度のお楽しみなので、毎年、開催期間中に都合がつく限り、2~3回は通っている。

 

こんなにも贅沢に、大きな松茸がごろごろ入った松茸ご飯を、私は他に知らない。

まさに、

 

「こんなおいしいもん、食べたことない!」

 

と、我を忘れて大声で叫びたくなる絶品だ。

悪いことは言わない。今からぜひ、手帳の9月のページに、【京都・寺町三条『直會撰』松茸ご飯食べ放題ランチ】と書き込んでおかれることを、強く強くお勧めする。

 

 

 

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